AI・IoT時代のデータ活用羅針盤 ビッグデータ・コンパス2018

人事戦略に「驚きの一手」」を!

少子高齢化の進展や専門人材の不足など、今ほど人材の重要さを痛感させられる時代はない。しかも定員の充足だけでなく、組織と従業員との信頼関係が構築され企業の成長につながるエンゲージメントが高まる人材戦略が求められる。デジタル・ディスラプション(デジタル時代の創造的破壊)を勝ち抜くためには、人材を最適配置し、最大限に力を発揮してもらわねばならない。
今、デジタル時代の人材戦略を実現するキーワードとして 「HR-Tech」 が注目を集めているが、AI(人工知能) ツールの単純活用では抜本的な改革にはつながらないと KPMGコンサルティング Advanced Innovative Technologyディレクターの山本直人氏は指摘する。業務の本質に切り込み、プロセスを根底から変革することが必要だ。従来比で8割以上の業務効率化も可能とされる、取り組みの全貌にせまる。

一般的な HR-Tech では人事業務の本質的な課題の解決は難しい

いかに重要な経営資源である人材を確保しその能力を開花させ、変化の時代を勝ち抜いていくか。経営戦略と人材マネジメントを連動させることで競争優位を目指す、戦略的な人事への転換が求められている。またデジタル時代の人材戦略では経験と勘に頼らず、データに基づいた客観的な基準をもとにPDCAサイクルをまわし、組織としての判断精度を向上させることが必要だ。
今、データに基づく人材戦略を実現するキーワードとして人事( Human Resources )とテクノロジーを組み合わせた HR-Tech が注目を集めている。だが、人事業務の課題解決や高度化の観点では大きな効果の創出に至っていないケースが多いのではないだろうか。
「 AIを活用する意義は、AIツールによる単純な作業代替ではなく、抜本的な改革の推進による圧倒的な効果の創出を狙うことです。まず企業が抱える課題を明らかにし、その本質に AI を適用し人事業務改革を推進することが大切なのです」と KPMGコンサルティング 山本直人氏は話す。
「たとえば技術職新入社員の配置先を検討する場合、人事担当者は手作業で履歴書や自己 PR、論文などの膨大な文章から新入社員の特徴を把握し配置先を検討するため、多くの手間と時間を要しています。また部署で必要とされる専門性も多様化、複雑化しており、新入社員個々の専門性を活かした適切な配置は非常に難易度の高い作業となっています」
人材を一定のルールに基づいて分類し、あらかじめ人が設定した指標によって評価を行う一般的な HR-Tech の手法では、人と組織の最適なマッチングを実現するという人事業務の本質的な課題の解決は難しい。加えて AI 活用においては、途中経過や分析内容などのブラックボックス化が課題となる。
「なぜこの人がここの部署に配置されたのか。分析結果に対し合理的な説明ができない仕組みでは、データに基づく人材戦略や判断精度向上の実現は困難です」と山本氏は強調する。

AI の人事業務適用において、人が定めたルールを踏襲している限り、劇的な効果を得ることは難しい。

納得感を得るためにAIによる分析結果の根拠を示すことが重要

KPMGコンサルティングでは、こうした企業課題を解決すべく、2017年12月、AI を活用した人事業務の高度化支援サービスの提供を開始した。同社の取り組みは、一般的な HR-Tech とは一線を画す。まず AI 活用においては、一定のルールを設定した分類や評価を行わないという。
「入社志望者のエントリーシートの志望動機には、どういう仕事をやりたいか、将来何になりたいか、その人の夢や思いが語られています。しかし、人事担当者が志望者の熱い思いのすべてを読み切るのは時間的、量的な制約もあって非常に難しい。そこで AI の自然言語処理を活用して自己PRなどのテキストから抽出した志望者の特徴と、職務記述書などから抽出した各部署の特徴を突合することで、データに基づく最適なマッチングを行います。人と組織の特徴に着目した最適配置により生産性向上とともに働く喜びの追求を実現できることから、有望人材の確保にもつながります」
そして業務で AI を活用するためには、分析結果に対する納得感が重要になると山本氏は指摘する。
「人事担当者が AIによる分析結果に不信感を抱いたときに、その疑問を払拭できる根拠を示すことが大切です。私たちのソリューションでは、最適配置に関するレコメンドとともに、志望者や各部署から抽出した特徴や、その親和性などの詳細がわかるデータを示すことができます」
最終的に判断するのは配属担当者だが、これまで人事部と各部署で多くの時間をかけて議論を重ねて作成してきた配属案に関して、AI の活用により劇的なスピードアップと効率化が図れる。
「従来の AI 活用の多くは定型の業務プロセスを代替することで、10%、20%の効率化を図っていくといったアプローチでした。私たちが目指すのは、まずお客様の課題を明確にし、人事業務において人が多くの検討時間を費やして行っていた本質的な作業を AI が代替することで、そのプロセスの時間をゼロに近づけ、その結果 100%、200% の効率化を目指すものなのです」

KPMGコンサルティング の提供する AI を用いた人事業務の高度化支援サービスは、これまでとは“段違い”の革新を企業にもたらす。

従来比で将来的に8割以上の業務効率化が可能と試算

現在 KPMGコンサルティングでは、トヨタ自動車 パワートレーンカンパニーの協力を得て、人事業務効率化の実証実験に取り組んでいる。きっかけとなったのは、パワートレーンカンパニーにおいて車両電動化時代における組織のあるべき姿といった大きなテーマに KPMGコンサルティングが支援業務を提供したことにある。
パワートレーンカンパニーは、エンジンやトランスミッションの開発促進に加え、車両電動化の推進に向けてハイブリッド技術開発の加速に取り組むトヨタ自動車の社内カンパニーだ。KPMGコンサルティングは、電動化時代の組織のあるべき姿を実現するための課題を抽出し検討した結果、人の配置に AI を活用することで業務が効率化、高度化し、企業の競争力強化に寄与できるという点にたどり着いた。

KPMGコンサルティングが トヨタ自動車 パワートレーンカンパニーと共に取り組んだ人事業務効率化の実証実験の全体像。超高精度なレコメンドにより、圧倒的な効果が現れた。

この実証実験では人事業務の高度化の面で効果が明確にあらわれたという。
「AI がはじき出した人材配置レコメンドはパワートレーンカンパニー様のご担当者の方から高い評価をいただきました。レコメンドの精度向上ではどのデータを分析に利用するかはとても重要です。様々なデータを入れ替えることで真に意味を持ったデータを見つけることができました。またマッチングに関してレコメンドの根拠を示すことで『なるほど』といった、新たな気づきを得ることができます。特に、今まで活用できていなかった人事データの細部まで AI が読み込み分析することで、『驚きの一手』とでもいうべき、これまでは把握できなかったその人の価値と最適配置を導き出すことを可能にします」
効率化の観点では、業務改革に AI を活用するメリットの大きさを実感したと山本氏は話す。
「パワートレーンカンパニー様での実証実験の結果を踏まえて、KPMGコンサルティングでは従来比で2018年度以降では4割程度、将来的には8割以上の業務効率化が可能であると試算しています。人材業務への定着に向けてお客様と一緒に AI のエンジンを育てていくことが非常に重要です」

実証実験の結果、2018年度で40%、将来的には80%程度まで効率化が可能という試算が得られている。

ビッグデータ分析を支えるクラウド基盤に Microsoft Azure を採用

人事業務の高度化支援サービスは今後、オンプレミスと Microsoft Azure を利用したクラウドサービスの両方で提供される。
「人事情報を社内にとどめたいお客様と、クラウドを前提にしたシステム導入を進めるお客様と、その両方のニーズに応えるためです。クラウドでは、膨大な量のデータを迅速に、コスト効率よく処理できる Microsoft Azure の各種機能を利用しサービスを提供していきます」
Microsoft Azure の採用理由について山本氏はこう説明する。「ビッグデータ分析に必要なパフォーマンスを実現する基盤を自社で購入し運用するというのは、本来業務とは異なるところで膨大なコストと人的リソースがかかるため現実的ではありません。また、AI の精度向上で必要となるトライ&エラーのための検証環境の構築も迅速かつ容易に行えることも魅力です。さらに管理や展開、ログ管理などの使いやすさに加え、お客様のシステムとの連携も柔軟に対応することが可能です。Microsoft Azure は単発のサービスではなく、データの収集からAIによる分析、分析結果の可視化まで一貫した流れを作ることができ、IoT や AI といったサービスがシームレスに利用できる点も高く評価しています」

多くの企業から AI による人事業務改革を要望する声が続々と

製造業や金融業を中心に「同様の実証実験を行いたい」との問い合わせが増えているという。「私たちのソリューションは、業種を問わず専門性を重視した採用のニーズに非常に適しています。今後、人材資源の最大活用の観点から新入社員だけでなく既存社員の最適配置や評価などへの適用に向けて開発を進めてく予定です」と山本氏。最後に自然言語処理の活用シーン拡大についても言及した。
「ビッグデータ活用では自社には分析できるデータがないとお話をされるお客様も多いのですが、社内の個人の PC 内で眠っている Word や Excel などのテキストデータこそ、企業の競争力を生み出す宝の山なのです。自然言語処理により個人の“知”を抽出し、全社共有の知恵に変えることで日本企業の復活に寄与していきたいと思います」
KPMGコンサルティングと日本マイクロソフトの連携による AI を活用した人事業務改革は、企業の戦略的人事を実現し、さらなる成長への道を拓いていくだろう。


山本 直人(やまもと・なおと)
KPMGコンサルティング株式会社
Advanced Innovative Technology
ディレクター
大手コンサルティングファームにおいて、中央省庁および大手製造、小売り、流通業などで大規模基幹システム開発、ECプラットフォーム開発等でアーキテクトを務める。オープンソースソフトウェアの啓蒙普及のための分散処理技術のコンソーシアムにも参加し、社外セミナーでの登壇、記事の執筆等を行っている。
KPMGコンサルティングにおいて、先端技術を活用してビジネス変革を推進するAdvanced Innovative Technologyチームに所属し、提案活動やエンゲージメントのリード、最新テクノロジーを用いた世の中にないサービスの研究を進めている。

関連リンク

セミナー情報:6月21日開催・企業価値を支える社員の「人間力」を最大化するための AI 活用塾

https://www.microsoftevents.com/profile/3972939

日本マイクロソフトの AI ×ビッグデータ活用ソリューション

https://azure.microsoft.com/ja-jp/solutions/big-data/

KPMGコンサルティング の AIを活用した人事業務の効率化・高度化

https://home.kpmg.com/jp/ja/home/insights/2018/03/hr-tech-20180315.html

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  • 一般的な HR-Tech では人事業務の本質的な課題の解決は難しい
  • 納得感を得るためにAIによる分析結果の根拠を示すことが重要
  • 従来比で将来的に8割以上の業務効率化が可能と試算
  • ビッグデータ分析を支えるクラウド基盤に Microsoft Azure を採用
  • 多くの企業から AI による人事業務改革を要望する声が続々と

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