社会デザイン研究

ローカルスーパー生き残りの鍵は生産者の想いを届ける仕組みにあり

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2017.03.14

酒井 洋和=ライター

高齢化や核家族化が進む今の日本において、ローカルスーパーは大きな転換期にある。特に消費増税後は、スーパー同士の合併や業績不振の総合スーパー(GMS)店舗の大量閉店など、生き残りを懸けた戦略が各企業で取られ、売り上げも二極化の様相を見せている。そんななか、多様化する食のニーズに応え、成長を続ける企業がある。消費者の協同組合として日本最大級を誇る「生活協同組合 コープみらい」だ。安全安心な食を提供するための売り場づくりのこだわりとそのための仕組みづくりの舞台裏とは――。

お客さまが求めているのは買い物をして楽しいと思える空間

消費者一人ひとりが持つ暮らしの願いを協同し、助け合いながら実現していく消費者の組織として作られた生活協同組合「コープ」。さまざまな形で展開されている生活協同組合のなかで、千葉県と埼玉県、東京都にある生活協同組合が2013年3月に合併し、組合員数約337万世帯を誇る日本最大級の消費者の協同組合となったのが生活協同組合 コープみらいだ。現在はビジョン2025「食卓を笑顔に、地域を豊かに、誰からも頼られる生協へ。」の実現に向け、宅配やスーパーマーケット運営、ホームサービス、共済・保険、福祉・介護に至るさまざまな事業、地域の課題への取り組みなどを展開しながら、組合員の暮らしを豊かにする活動を行っている。

コープ府中寿町店 店長 本間 伸裕氏

そんなコープみらいでは、茨城・栃木・群馬・長野・新潟の各県のコープとコープネットグループを形成しており、現在グループ全体では1都6県のエリア全体で155か所の店舗を展開している。その店舗の中で、従来店舗の機能拡張や建て替えではなく新店として府中エリアに開設されたのが“コープ府中寿町店”である。「組合組織率の高いところに出店し、売り場規模を広げていくのが一般的な店舗事業の展開パターンだが、組織率のそれほど高くない府中エリアで組合組織の基盤を強化していくためにオープンしたのがこの店舗です」と語るのはコープ府中寿町店 店長の本間 伸裕氏だ。この府中という商圏は、新宿や川崎、埼玉への通勤アクセスに便利な立地から、特に若い夫婦などの子育て世帯が多い特徴を持っているという。

そんな同店舗を訪れる顧客が求めているのが、価格の安さはもちろん、そのおいしさや買い物をして楽しいと思える空間だと本間氏は分析する。「オープンキッチンでは食材の調理で発生する音やにおいで刺激するなど、五感に響くような売り場になるよう工夫しています」。

また、核家族化が進んでいる中では手軽においしいものを食べたいという即食のニーズもあり、多様化するニーズに対応できる品ぞろえを意識する必要があるという。そのニーズに応えるためには、徹底した温度管理のもとで鮮度を維持する仕組みが求められる。「生協はもともと野菜や肉、魚などの生鮮品の品揃えが大きな特徴の1つ。新鮮で鮮度のいい、品質の高いものが常に求められているのです」と語る。そこで重要になってくるのが、温度管理を含めた品質を保つための仕組みであり、生産者から消費者まで鮮度を落とさず新鮮な食材を届けるコールドチェーンの考え方だ。

品温管理を徹底するための仕掛けづくり

コールドチェーンにおいては何よりも鮮度管理が重要になるが、店舗責任者として本間氏が普段から心掛けているのは、商品別の品温管理だという。「同じ冷蔵でも、例えば生鮮品であれば0℃に近い商品管理が必要ですし、日配品と呼ばれる冷蔵品は10℃以下での管理が必要です。鮮魚品を冷蔵だからと言って8℃で管理するとドリップが増え、色の鮮度劣化も激しくなる。だからこそ詳細な品温管理が重要になってきます」。そこで本間氏は、冷蔵ケース内の温度を常にチェックしながら、こまめな温度調整を行っている。それを支えているのが、パナソニック産機システムズが提供するCO2冷媒を使ったノンフロン冷凍機システムであり、ショーケース内の温度把握が可能な遠隔監視の仕組みだ。

同社が利用する遠隔監視の仕組みは、店内に設置されたショーケース内の温度が可視化できるようになっている。「異常値が検出されれば過去にさかのぼって傾向が確認できますし、温度の状況によって廃棄かどうかの判断もデータをもとに的確に行うことができます。過去の情報が蓄えられているため、保守のタイミングでメンテナンスに来た人と情報を共有し、温度設定の調整がスムーズにできるのが大きな魅力」と本間氏は評価する。この仕組みのおかげで、例えば精肉のパック内にできる結露のような曇りを解消する際に、急激な温度差が生まれないよう温度調節すれば解決するという仮説を持つことができたという。

また実際に商品を冷やすための冷凍機システムおよび商品を陳列するショーケースの選択についても、生協として社会的責任を全うし、エコ活動に貢献する環境配慮型店舗を作っていくことを意識した結果だと本間氏。「フロン類の冷媒が規制されるなか、お客様からは安全安心の実現が求められます。だからこそ、我々として環境負荷の少ないCO2冷媒を採用しました」。

他にも、採用したパナソニック産機システムズの冷凍機システム自体は省スペース設計が特徴となっており、スペースの有効活用にも貢献しているという。「省スペースであれば、売り場の面積や通路の確保、職員の福利厚生スペースの拡張などいろんなことに有効利用できる」と本間氏は評価する。他にも、冷媒にフロンを使った場合は法律上の点検作業が3ヵ月毎に必要だが、CO2冷媒であればその作業も発生しない。日々の運用についてメリットもあると本間氏。

なお、保守の面でも他社の対応とは一味違うとパナソニック産機システムズに対する評価も高い。「いつ電話しても同じ方にご対応いただけており、過去の知見も蓄積したうえで共有できています。単なるメンテナンスをするだけでなく、情報交換の中で自社に適したアドバイスも頂けるのはとても助かっている」と本間氏。

店舗は生産者と消費者をつなげる最後の砦

このように鮮度管理に本間氏がこだわるのは、バイヤー時代に感じた“生産者の想いを顧客につないでいきたい”という願いがあるからだ。「生産者であれ我々販売者であれ、誰も鮮度劣化したおいしくないものを販売してうれしいと感じる人はいません。農家の方やメーカーの方など生産者の方の想いをつなげるためにはコールドチェーンのような仕組みが必要で、最後の砦としてお客様につなげていけるのが我々スーパーなのです」と本間氏は力説する。

さらに、本来メーカーなどが設定している消費期限は、流通過程でのリスクをある程度想定して設定されているが、家庭に届くまでの温度管理が徹底できれば、消費期限も長く設定できるようになる。「温度管理が徹底できれば、商品廃棄率も改善できるはず。そんな想いで温度を見ているからこそ、品質管理は徹底していきたいと考えているのです」と説明する。

今後については、コールドチェーンのさらなる強化を図っていくのはもちろん、CO2排出ゼロや資源循環型店舗を作っていきたいと本間氏。手段は別にしてエネルギーの自給自足を行うことで、同じスーパーという業態でも生協の取り組みは違うということが多くの方に認知してもらえるようにしていきたいという。「ごみゼロ化に向けてさまざまな資源を再利用していくという環境型の店舗づくりが、社会に貢献する店舗を作るという我々生協の役割になるはず」と本間氏は将来について語った。