“ミライ”への階段

スマートデバイスと映像表現の進化が生み出すミライの“体験”(前編)

2016.11.21

近藤 寿成=スプール

エンターテインメントの世界が様変わりしつつある。変化をもたらすのは、スマートフォンなどデバイスの発達と、映像技術の進歩。これにより、新たな手段と表現が可能になり、消費者に新しいエンターテインメントを提供できるようになる。代表例はプロジェクションマッピングやドームシアターを使ったライブ体験や、ゲーム機などによるVR(仮想現実)。非日常空間への扉だ。

2015年にアメリカで公開されたインディーズ映画「タンジェリン」は、全編を3台のiPhone 5sで撮影した画期的な作品だ。映画の制作に、アナモフィックレンズと呼ばれる特殊なレンズを取り付けたiPhone 5sで、横長のシネマスコープ映像を撮影し、映画としたためである。超低予算でも映画を制作できるメリットは非常に大きい。

「リアルな空気感」を演出できるのもiPhoneを使うメリットとなっているようだ。今年を代表する大ヒット映画「シン・ゴジラ」もそのひとつだ。シン・ゴジラでは当然、業務用のシネマカメラが基本として用いられているが、そのほかの撮影機材としてiPhoneやアクションカメラの「GoPro」なども利用されている。各シーンの印象やイメージにあった映像を撮るために、多彩なカメラを駆使して撮影したわけだ。撮影機材の多様性が、映像の新たな表現を生み出しているといえる。

「空間映像」で新しい体験を演出

テレビや映画といった既存の映像が進化するのとは別に、最先端の技術を駆使した新しい映像表現も生まれている。例えば、「ドームシアター」「プロジェクションマッピング」「VR(バーチャルリアリティ)」などである。

ドームシアターは、プラネタリウムのような半球形のドーム内で多彩な映像を楽しめる特機映像施設。通常のプラネタリウムと大きく違うのは、その映像を360度の3D(3次元)で楽しめるという点にある。

プロジェクションマッピングは、建物などの立体物に映像を映し出す技術のこと。東京ディズニーランドをはじめとしたテーマパークで楽しめるほか、東京駅や大阪城などでも過去に実施されている。

VRは、ヘッドマウントディスプレイなどを利用して疑似的な世界をリアルに知覚できる技術。最近では、「PlayStation VR(PS VR)」や「Oculus Rift」といった手頃なハードウエアが登場し、家庭でも体感できるようになってきた。

この3つは、テレビや映画といった「平面映像」と違い、広視野で今までにない世界観を表現できる点が大きな特徴である。映像に包まれるような感覚や別世界にいるような感覚を観客に与えることができることから、「空間映像」などとも呼ばれる。国立天文台の「4D2Uドームシアター」や科学技術館の「シンラドーム」、可搬型ドームシステム「Domeworks」などの企画を手掛けた経験を持つオリハルコンテクノロジーズの高幣俊之氏は、「空間映像の表現はまだまだ開拓されていない。だから、制作者にとっても驚きと発見に満ちている」と語る。