“ミライ”への階段

電池の進歩が変える生活のカタチ

2017.04.25

元田 光一=テクニカルライター

私たちの生活空間には様々な電池が存在している。「私たちの生活は電池によって支えられている」といっても過言ではない。その電池の技術進歩が、生活シーンを変えつつある。いろいろな形状の電池、折り曲げても使える電池、ものの表面に貼り付けられる電池、さらには人間の体の中を使って電気を作る電池などの進化が見られるからだ。

一言で電池といっても、大きく分けて充電できないタイプの一次電池と、充電できるタイプの二次電池、いわゆる蓄電池がある。電池には素材によっていろいろ種類があるが、蓄電池に関していえば他の素材に比べて大容量で軽量なものが作れることから、現在ほとんどのノートパソコンやスマートフォンではリチウムイオンバッテリーが使われている。

電池の内部構造自体は、19世紀に発明されて以来大きな変化はない。大容量化と軽量化に関する進化のスピードも半導体の進化と比べるとゆっくりで、せいぜい前年比で数パーセント程度の向上といったペースだった。その電池が今、大きな進化を遂げようとしている。円柱や直方体とは異なる変則的な形状にしても、あるいはそれをさらに変形させても性能を保てる電池を作れるようになってきたためだ。モバイルデバイスの内部構造に合わせて隙間なくバッテリーを詰め込むこともできるし、スマートウォッチのベルトを電池で作るといったこともできる。

例えば韓国JENAXが開発を進めているフレキシブルリチウムポリマー電池「J.Flex」は、紙のようにくしゃくしゃに曲げても電池の性能を保つことができる(写真1)。従来の電池は内部に電気を通す液体が詰まっているが、リチウムポリマー電池ではその溶液をゲル状の半固体にすることでフレキシブルな形状を可能にした。現時点で公開されている仕様を見ると、27×48mmの大きさで3.8Vの電圧と30mAHの充電容量を実現できている。

(写真1)韓国JENAXが開発を進めている「J.Flex」
紙のようにくしゃくしゃにしても、電池として利用できるフレキシブルリチウムポリマー電池。(JENAXのホームページより引用)

米アリゾナ州立大学は、最大1.5倍伸縮できるストレッチ電池を開発した(写真2)。これは、エラストマーを素材にしたリチウムイオン電池で、紙に電極をコーティングしたものを「ミウラ折り」したもの。ミウラ折りは、人工衛星の太陽光パネル展開するために日本で考案された折りたたみ方である。写真にあるように、手で伸ばしたり縮めたりできる。

(写真2)アリゾナ州立大学が開発を進めている伸縮するストレッチバッテリー
日本の折り紙をイメージして開発され、最大1.5倍に伸びるリチウムイオン電池。(アリゾナ州立大学のホームページより引用)

国内では、例えばパナソニックが製品開発を進めている。2016年9月に発表した「フレキシブルリチウムイオン電池」がそれ。厚みが0.45mmで、1000回の曲げ試験実施後、さらに1000回のねじり試験を実施しても電池性能を維持できたという(写真3)。カード型デバイスや身体貼付型デバイス、ウエアラブルデバイスなど、頻繁に曲げやねじりの力が加わる機器での使用を想定したものである。変形を繰り返しても液漏れが生じにくく、異常な温度上昇が起こりにくい構造になっているため、高い安全性が求められる身体貼付型デバイスやウエアラブルデバイスにはもってこいだ。

(写真3)パナソニックの「フレキシブルリチウムイオン電池」
1000回の曲げやねじりにも耐えることができる。(パナソニックのホームページより引用)

他では、塗布型の太陽電池もある。有機エレクトロニクスの技術を応用し、ガラスや壁面などに印刷するようにしてソーラーパネルを作れる、“未来の太陽電池”である。太陽電池では、すでに曲げることが可能なフレキシブルソーラーパネルが市販されているが、従来型の太陽電池と比べて低コストで製造できる点が大きな特徴だ。

塗布型太陽電池の一つであるペロブスカイト太陽電池は、2006年に日本で誕生した。その後、年々発電効率が高まり、従来型の太陽電池の性能に近づいてきた。