ロボティクス社会

スポーツ界にも入り込むロボティクス、トレーニングや競技を支援

2016.07.15

元田 光一=テクニカルライター

ロボット技術が、産業機器や日常生活だけでなく、スポーツの世界にも入り込み始めている。人間の潜在能力を引き出すトレーニングコーチ、競技場における試合の審判、体操やフィギュアスケートの審査員――。場面はいろいろだ。一方では、ロボットの力を使うことで、障がい者と健常者が同じフィールドで競い合える新しいスポーツを生み出そうという動きもある。

まもなくリオデジャネイロ五輪。世界各国からアスリートが集う。そのアスリートたちの活躍を影で支えるロボットが登場してきた。代表的なのが、トレーニングを手助けするロボットである。

陸上競技では、「誰かと競ってトレーニングに励むとより速く走ることができる」といわれる。そのような観点から、独プーマは陸上選手の練習をサポートする伴走ロボット「ビートボット(Beat Bot)」を開発した(写真1)。100メートル走の世界記録保持者ウサイン・ボルト選手をサポートすることが目的で、NASAのロボット工学エンジニアやマサチューセッツ工科大学(MIT)の専門家が開発に参加している。

(写真1)プーマの陸上競技サポートロボット「ビートボット」(プーマのYoutube動画より抜粋)

ボックス型のビートボットは、赤外線カメラと加速度センサーで地面にひかれたラインを認識し、そのラインに沿って自律的に走る。選手のペース調整や、記録更新のためのトレーニングを目的としたロボットである。スマートフォンでラップタイムを設定するだけで、その通りのスピードで走ってくれる。本体の前面および背面にはGoProカメラが搭載されていて、走行中の画像を後で確認することも可能になっている。プーマの専属アスリート用なので、現在のところ市販の予定はないが、将来的に拡大していく可能性はあるだろう。

陸上のトラック競技と同じように、より早くゴールにたどり着くことを競う競泳用にもロボットがある。伴泳ロボット「Swimoid」やヒューマノイドロボット「SWUMANOID(スワマノイド)」などがそれ。これらは日本で開発されている(写真2)。

(写真2)水泳大国日本で開発されている水泳向けロボット
写真は伴泳ロボット「Swimoid」(上)とヒューマノイドロボット「SWUMANOID」(下)。(WISS2012資料、東京工業大学ホームページより引用)

Swimoidはスイマーと一緒に水中で移動し、ロボット上部にある液晶パネルでリアルタイムに自分の姿を見たり、コーチの指示を受けたりできる。SWUMANOIDは人間の身体の1/2の大きさでスイマーの複雑な泳ぎの動作を再現し、微妙な動作の違いによる推進力の変化を捉える。これによって、より速く泳げる動作を解明し、結果を競泳選手にフィードバックするほか、高速水着の開発などにも応用されている。

球技では独アディダスが、サッカー選手の力を引き出すツールとして、スマートボール「miCoach」を開発した(写真3)。通常のサッカーボールと同じ大きさのボールに多数のセンサーを搭載し、キック時の速度、パワー、回転、方向、シュートの弾道を測定する。これらのデータは、専用アプリで分析、記録され、Bluetoothを通じてスマートフォン、タブレットに転送される。そして、プレイヤーにどこをどう改善すればいいのかアドバイスを与える。

(写真3)アディダスのサッカー向けスマートボール「miCoach」(アディダスのYoutube動画より抜粋)

ゴルフなど、個人で楽しむスポーツにおいても、ロボットの力を借りればより楽しくプレーできる環境を作れる。例えばSTEWART GOLFが開発した電動キャリーカート「X9」。プレーヤーの後からゴルフバックを積んでついてくる自律走行型ロボットである(写真4)。プレーヤーとキャリーカートの間はBluetoothでつながれていて、ペアリングしたハンドセットをプレーヤーのポケットに装着しておくだけで、カートが一定の距離を保ちつつ忠犬ハチ公のようについてくる。上り下りの坂でも、斜面に応じて自動的に加減速する。

(写真4)STEWART GOLF の自律走行型キャリーカート「X9」
ハンドセットからの電波でプレーヤーの後をついてくる。(STEWART GOLFのYoutube動画より抜粋)