i-Construction活用セミナー 2017.5.24 開催レビュー

オートデスク 諸外国のBIM ROI研究やBIM義務化動向から見るCIM/i-Constructionの今後

米オートデスク アジア太平洋地域土木事業開発統括 部長 福地 良彦 氏

BIM/CIMの有効活用は、プロジェクトに関わる企業に財務上のメリットをもたらし、業務実行プロセスでのさまざまな問題を解消する。その活用の要点とは何か。世界各国でBIM/CIMの活用支援に取り組むオートデスクが、i-Constructionの将来を探る。

 今回は、アジア太平洋地区のインフラ開発事業などでBIM/CIM関連の支援に携わった経験と、そこで得られた知見を共有しながら、日本のBIM/CIMとi-Constructionの将来を探ってみたい。

 当社には、BIM導入による生産性向上や、コスト軽減を専任で研究するスタッフがいる。昨年9月、その研究者を東京に招聘し、初のBIMのROIワークショップを開催した。単に2Dの図面を3Dモデル化してクライアントに提示するためにBIMを導入するのではなく、All-in BIM、つまり、建設事業のすべてのプロセスでBIMの有効性を財務上の投資対効果として数値化する試みだ。

 BIM導入の費用対効果の定量化は、各国の大学や機関で研究されていて、過去7年で95の研究論文を情報ソースとして活用している。ワークショップではその一部を参加者に紹介した。

BIM導入費用対効果の定量化ケーススタディ

●上海ディズニーランド
建物の70%以上がBIM環境で開発された「上海ディズニーランド」は、入札段階でのRFIを88%低減。

●WALSHの水処理施設
米国WALSH社の設備工事子会社が水処理場増設工事にBIMを活用。モデリングに4万ドルの費用を要したが、干渉チェックにより15万ドル以上の不具合を事前に解消。設計変更がゼロになりRFIも推定75%減少、スケジュールは5週間短縮できた。

●CRC Construction Innovation 2007
スタンフォード大CIFEが32のプロジェクトで分析したBIM導入の費用対効果。予算計上されていない設計変更を最大40%削減。従来の試算に比べ費用見積の誤差が3%以内。積算の時間が最大80%短縮。干渉チェックにより総契約価値の最大10%を節約。所要時間が最大7%短縮、などの成果があった。

 建築現場では不具合が頻繁に発生し、そのコストの多くはオーナーへの負担が強いられる。インドIMTプネー国際教育センターの研究では、その原因の6〜15%は施工工程後半の欠陥と手戻りで、コストの5%は保守中に発見された瑕疵が原因であった。この無駄なコストが解消されれば、オーナーの利益になる。

 アメリカで行われたROIワークショップで、BIM導入のメリットが形になる時点を検証した結果、施工中の利益が圧倒的に高く、維持管理、運用段階での利益も伸びていることがわかった。これはBIM/CIM本来の使われ方により、オーナー側のメリットが形になっていると見ることもできるだろう。

 この時のワークショップでは、BIM導入のメリットの69%を発注者が享受できるという結果が導かれ、各国で実施されたワークショップでも、半分以上はオーナーメリットという結果が出ている。

日本のBIM導入の参考になるイギリスのBIM Level 2

 イギリスは昨年4月、全公共事業でBIM活用が義務化された。近年、多くの国がさまざまな事情でBIMの義務化に取り組んでいるが、イギリスの戦略と事例は、日本のBIM/CIM導入の参考になると考えている。

 イギリスは2011年にBIM導入推進の政策を公表し、発注者だけでなく業界全体で、5年でBIM化の整備を行うよう通達した。産学官が集結し、問題解決や公的な仕組みの構築に取り組み、16年に建設コスト20%削減を前提にBIM義務化がスタートしている。その後、25年に向け新たな戦略を発表。そこでは、コスト33%削減、工期50%短縮などが目標と示されている。

 現在、イギリスでは、中央政府が管理する全プロジェクトで、図1の赤いラインのBIM Level 2達成を目指している。その実現のため、さまざまな基準やガイドラインが設けられ、公共事業はLevel 2を達成している企業に発注される仕組みが構築されている。一方、日本は残念ながら、まだ、図面ベースで意思決定を行い、その後3Dモデルを構築するLevel 1がBIM/CIM活用の中心であることは否めないだろう。

図1 イギリスのBIM Level 2プロジェクト
クリックで拡大

 2Dの時代は、計画、設計、施工、維持管理という業務実行プロセスで、プロセス間の移行時に、前段階で得られた情報や知見が欠落することが問題視されていた。BIM Level 2は、それをなくし、単純に情報を積み上げるだけでなく、この業務実行プロセスを標準化することも視野に入れている。

 プロセスの標準化は、発注者は自分たちがいつどんな情報が必要かを定義するところからスタートする。業者はプロポーザルの段階で、この定義=情報要求要件(EIR)に適応するBIM実行提案書を作成、そこで選ばれた受注者が契約し、BIM実施計画を提出、その計画に基づき情報を交換して、発注者に認知された情報はBIMに積み上げられる。このプロセスを繰り返すと、工事完了時には計画から維持管理までの必要な情報がすべて整うことになる。

 これがイギリスのBIM Level 2のプロセスの標準化であり、これを含むガイドライン(PAS1192-2)をベースとした基準は、ISO提案中だ。イギリスのスタンダードは数年後にはISO19650として公開され、BIM活用の国際標準になると考えられる。日本でも同様に、2020年からのCIMの100%義務化を目指したロードマップが公表済みで、イギリスの動向も参考になると思う。

 最後に、国際的に通じるBIM/CIM導入のポイントを図説したい。図2の6つは押さえておきたい要点である。参考にしていただきたい。

図2 国際的に通じるBIM/CIM導入のすすめ
クリックで拡大
PageTop
お問い合わせ
オートデスク株式会社
〒104-6024 東京都中央区晴海1-8-10 晴海アイランド トリトンスクエア オフィスタワーX 24F
https://www.autodesk.co.jp/