熊谷組『クラウドファースト』への軌跡 〜熊谷組は、なぜソフトバンクを選んだのか〜

建設業界に生産性向上のメリットをもたらすことが期待されている「i-Construction」。このi-Constructionの推進をスムースに行うために重要となるのが、現行システムの可用性や操作性などを損なわずにいかに新しいICT環境に移行できるかという点だ。その答えとして注目されているのが「クラウド」だ。熊谷組は2015年に、自社サーバから全システムをソフトバンクのクラウドサービス「ホワイトクラウド ASPIRE」へ全面移行した。その目的と、同社はなぜソフトバンクを選んだのかを担当者に聞く。

土木業界にもクラウドの波が到来

株式会社 熊谷組 経営企画部 IT企画グループ 部長 鴫原 功 氏

 近年、道路舗装の現場では、出来形管理、施工時の転圧管理データはもちろん、気温、湿度、風速など舗装工事の属性データとして収集し、将来の維持管理に備える動きがある。国の「i-Construction推進に向けたロードマップ」では、すべての建設生産プロセスでICTや3次元データなどを活用し、2025年までに建設現場の生産性2割向上を目指す、と記されている。

 土木業界では、1990年代、国交省の「CALS/EC」による電子入札・納品が契機となり、インターネット、パソコン、デジタルカメラなど、現場のデジタル環境整備が進んだ。さらに、2008年の「情報化施工推進戦略」で、3次元データによる施工や維持管理導入が始まり、2012年からのCIM試行プロジェクトでは、設計段階から3D CAD導入やドローンによる測量が行われるなど、3D技術やICTの活用範囲はますます広がっている。

 ここで大きな課題となるのが、こうしたさまざまなデータを作成・収集するアプリケーションの移行・管理のコストや、膨大化するデータ管理のコストである。ICT活用のコスト増は、企業規模を問わずICT技術導入への大きな障壁となっていると考えられる。

 この課題解決で注目されているのが「クラウド」である。クラウドは自社でのサーバ運用に比べ、初期費用が大幅に少なく、需要に応じたICTリソースの増減ができるため、業務規模に合わせた最適化も容易だ。自社サーバの運用負担や人件費などのコストも削減できる。i-Constructionへの取り組みに要するコスト増を大幅に改善することができる。

熊谷組『クラウドファースト』への軌跡

 クラウドをいち早く導入し、さまざまな課題解決とコスト削減を実現した先進的な事例として、準大手ゼネコンの熊谷組の『クラウドファースト』への取り組みがある。同社はクラウド活用によるIT予算最適化が評価され、2016年度「IT戦略総合大会」(企業情報化協会主催)で「IT特別賞」を受賞している。

 同社では、2011年の東日本大震災を機に、あらためて停電などによるリスクの最小化を目指し、IT環境の見直しに着手。主要な業務系サーバをソフトバンクのデータセンターに移設するとともに、全面的にIT基盤を仮想化し、拠点の冗長化も含め、災害に強いIT環境を実現した。

曳屋(ひきや)のように既存サーバをそのまま移行

 2015年のWindows 2003のサポート終了を迎えるタイミングと既存サーバ機器の老朽化が重なり、経営企画部 IT企画グループ 部長の鴫原功氏は、これまでデータセンターで運用していた基幹システムを含む全システムのクラウド全面移行の検討を開始した。

 「古いOS上で動くアプリケーションには重要な業務基盤もあった。サポートが終了するとはいえアプリケーションは継続利用したい。しかし、サーバを自前で持つと、更新サイクルのたびに今回と同じような問題に直面する。保守や更新といった付加価値のない作業は極力排除したいと考えていた。そこで注目したのがクラウドだった」(鴫原氏)。

 ERP(統合基幹業務)や原価管理といった基幹系システムを、どのクラウドへ、どのように移行すれば良いのか。国内外のメジャーなクラウド事業者も含め、クラウドの選定から移行方法まで、慎重に比較検討を重ねた結果、ソフトバンクからの全面的な支援を受けることとなった。OSやアプリケーションだけでなく、IPアドレスも変えない全システムの移行は、建築物をそのままの状態で移動する曳屋(ひきや)さながらに、社内のユーザがクラウドへ移行したことを意識できないレベルで実現した。

 「従来から利用していたサーバOSを提供していたクラウドベンダーでは自社提供のOSしか対応せず、別の候補もWindows2000のような古いOSには対応していないなどクラウドサービスの活用には制限が多かった。その点、ソフトバンクのクラウドは幅広いサーバOSを柔軟にサポートしており、現場の使い勝手を変えることなく移行でき、かつ、旧サーバ運用時のアプリやデータの活用ができるクラウドサービスだった。」(鴫原氏)

 クラウド以前は、月に1、2回起こったサーバの機器障害によるシステム停止と保守対応、機器のライフサイクルに伴う更新コスト増などが深刻な課題だったが、クラウド移行により、機器障害によるシステム停止もなくなり、情報システム部門の保守運用にかかる業務負荷は約20%の軽減を実現した。現在、VMware vSphereを基盤に使用した、ソフトバンクのクラウドサービス「ホワイトクラウド ASPIRE(以後、ASPIRE)」上で、約80台以上のサーバを運用している。

クラウドサービス「ホワイトクラウド ASPIRE」導入前と導入後の比較

熊谷組『クラウドファースト』の未来

 オンプレミス(自社運用)からクラウドへの移行後は、新しいアプリケーションを試験導入するための環境構築などでも、クラウド活用による作業時間の大幅な短縮が実現している。更に、旧来のようなテープバックアップと遠隔地への送付・保管から、現在は「ASPIRE」からソフトバンクの閉域ネットワークを使った別クラウドとのオンラインバックアップ連携により、リストアもテープとは比較にならないほど短時間での完了が実現し、事業継続性も向上した。

 「最近の建設現場ではドローンを使い撮影した画像データを3D化して活用するなど、作業所で利用するデータ量は年々増加している。当社で利用しているファイルサーバについても、今後はクラウドサービスに移行してクライアント環境からの使い勝手を向上する取り組みも計画している。」(鴫原氏)

 施工の現場や作業所で利活用されるデータは年々増加しているが、一方で、古いデータやアプリケーションがそのまま活用できることも大切だ。ソフトバンクの「ASPIRE」は、こうした外的環境の変化に低コストで対応しながら、結果的に長時間労働の対策が課題の建設業界の労務環境の改善にも貢献できるインフラを提供できるクラウドといえるだろう。

オンプレミスからクラウドへのデータ移行によるメリット
ITpro Activeセミナー「クラウド移行 課題解決セミナー」
株式会社 熊谷組
本 社 :東京都新宿区津久戸町2-1

資本金 :133億円(平成29年3月31日現在)

事業内容:建設工事の調査、測量、企画、設計、施工、監理、技術指導その他
     総合的エンジニアリング、マネジメントおよびコンサルティング
     ならびに請負をはじめととするゼネラルコントラクター
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