各地で勢いを増すCLT建築。施策や基準も普及を後押し

CLT(直交集成板)の一般的な設計法などを定めた告示の公布・施行からまもなく2年。各地でCLTの特性を引き出した新しい建築が次々と打ち出されている。CLT建築の急増と並行して、供給体制や国の施策、基準の整備もより充実してきた。

 2017年3月末まで計95件に留まっていたCLTを用いた建物が今、急速に増え始めている。18年度にかけて、さらに100件程度の建設が見込まれている。

 大きな弾みとなったのが、2016年3月31日と4月1日の両日にわたる告示の公布・施行だ。一般的な設計法が告示化されたことで、CLTパネル工法については大臣認定を取得しなくても建てられるようになった。次いで17年9月にツーバイフォー工法に関する技術基準の告示も改正されるなど、身近な建材に向けてCLTは着々と進化している。

 供給体制の整備も進む。17年4月までに全国8工場が整備されており、さらにこの春からは新しい大型工場も稼働する予定だ。

CLTの特性を生かして多様な木造が生まれている

 単に件数が伸びているだけではない。むしろ、このところのCLT建築で目を引くのは、その使われ方だ。

 以前は、バス停のような小規模な施設や、仮設建築物などが試行的につくられるケースが少なくなかった。それに対して最近は、低層から中高層までの各種用途の建物で、CLTを主要構造部に用いる事例が増えている。興味深いのは、CLTの特性を生かしたプランニングや構造システムを、それぞれの建物に応じて生み出している点だ。CLTを用いることで、従来の工法や建材では難しかったプランニングや意匠、施工の合理化などを実現している。

 右ページで紹介する3つの事例は、各地で広がるそうした取り組みを象徴するものだ。

 事例1の「KFC堺百舌鳥店」は、フランチャイズ展開する店舗でもCLTが有用なことを示している。従来の店舗で主流だった鉄骨造と比較して、ほぼ同等の経済性や施工合理性を引き出した。

 事例2の「倉敷市平田CLT分譲住宅」は、地域に密着して活動する住宅会社が、CLTパネル工法を活用してつくった戸建て分譲住宅。補助金などに頼らなくても、CLTを活用できることを実証している。

 事例3の「すくも商銀信用組合」では、軸組み部材とCLTパネルを組み合わせて、独特の意匠と空間を実現している。地域を基盤とする銀行が、地域材を用いて、地域の利用者に親しまれる木造でつくられた点は、広く参考になるだろう。

 軸組み部材とCLTパネルを組み合わせた構造は、各地の木造建物で様々な形で考案されている。また、鉄骨ラーメン造とCLTパネルのハイブリッド構造に取り組む大型建築も出てきた。CLTという新しい木質建材が、木造はもちろんのこと、建築自体の可能性を広げ始めていることがうかがえる。

年度内に層構成を追加適切な運用に技術者育成も

 活気付くCLTの活用を、さらに推進する動きもある。その1つが、CLTの基準強度の拡充だ。これまで、長期荷重に対する許容応力度計算において、CLTの基準強度は限定されていた。積層方向かつ強軸方向のCLTで基準強度が定められていたのは、5層5プライと5層7プライの2つだけだった。そこに新たに、3層3プライ、3層4プライが加わる。

 また、積層方向かつ弱軸方向では、これまで3層3プライと3層4プライ、7層7プライの3つだったところに、5層5プライ、5層7プライの2つが追加される。これらの新たな基準強度は、既にパブリックコメントを終えており、17年度内の公布・施行が期待されている。

 これまで、国は、先駆的なCLT建築物への設計・建築費、建築の指導や助言をする専門家派遣、設計・施工者向けの講習会などへの支援に取り組んできたが、これらに加え、18年度予算では、CLTの調達費支援を盛り込むなど、多彩な施策を用意している。

 日本CLT協会も、構造設計者に向けた講習会や構造設計相談室の開設、実務者向けの手引きの発行などを通じて、CLT普及を後押ししていく。このほかにもCLTを巡っては今後も各方面で活発な展開が続く。

事例

事例1 鉄骨造と同等のコストで大幅に工期短縮 KFC堺百舌鳥(もず)店(大阪府堺市北区)

世界展開するファストフードチェーン店のロードサイド型店舗。従来、同規模の店舗で主流の鉄骨造と、工期やコストなどを比較検証した。建物は平屋で、壁と屋根、庇にCLTを用いている。壁と屋根の取り合いは“壁勝ち”とし、壁パネルに開けた穴に集成材の梁を接合した後、在来工法にて小屋組みしている。
一部のCLTは店内で現しにしている。基礎から下地までの工事を比較検証したところ、工期は一般的な鉄骨ラーメンの14日に対してCLT工法は4日、コストはほぼ同等という結果だった。

事例2 民間の自己資金で国内初のCLT戸建て分譲 倉敷市平田CLT分譲住宅(岡山県倉敷市)

2017年夏、CLTを使った国内初の戸建て分譲住宅が完成した。早くからCLTの活用に取り組み、実績を重ねているライフデザイン・カバヤが、公的な補助金などを利用せず、自己資金で建設した。建物は、壁・床・屋根をCLTパネルで構成した2階建て。玄関上部やバルコニーを大きく張り出すなど、剛性の高いCLTの特性を生かしたプランニングや意匠を実現している。将来の販売を前提に、現在は同社のモデルハウスとして利用している。

事例3 大版CLTと張弦梁で開放的な大空間 すくも商銀信用組合(高知県宿毛市)

国内で初めてCLTを主要構造部に用いた銀行。片流れの大屋根に覆われた建物は、軸組み工法とCLTを組み合わせた木造2階建て。壁と2階床にCLTを用いている。2階の床では、大版のCLTパネルと張弦梁を組み合わせて11.4mの大スパンを実現。建物前面の開口部にシャッターを設けないことで消防法無窓階を回避し、木材の架構・仕上げともに現しとした。従来の銀行のイメージとは異なる木質空間で、地域密着型の企業活動を展開する。

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国による各種支援策:CLT活用促進のための政府一元窓口 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cltmadoguchi/
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