桔梗原 テクノロジーの急速な進化を背景に、デジタル変革の流れに対応しなければならないという危機感を強める企業が増えています。
田口 もはやデジタル変革は、あらゆる企業にとって不可欠な取り組みとなっています。しかし、デジタル技術そのものがイノベーションを起こすわけではありません。技術は戦略を形にするための“触媒”であり、重要なのは常に、そこで得られる「データ」です。
従来のようにデータをオペレーションの効率化に活用するだけでなく、これまで見えていなかったことを見える化し、新たな価値を生み出す。このことが、デジタル時代における戦略の要諦といえるでしょう。
当社の法人向けクラウドサービス「Dream Cloud」は、こうしたデータ活用を可能にする基盤として用意したものです。これまでにお客様は1200社以上。プライベートからデェディケーテッド、パブリックまで多様なニーズでご利用いただいています。
桔梗原 強みはどこにあるのですか。
田口 中核サービスであるマネージドクラウド「Next Generation EASY Cloud」は、VMware のSDDC(Software-Defined Data Center)アーキテクチャを全面採用したサーバーインフラ、ネットワークのスケーラビリティを備えています。
一般のパブリッククラウドと同等の技術で構築されていますが、利用するアプリケーションの特性を踏まえた最適なサーバーやストレージの提供、セキュリティ対策や運用・監視も一体的に提供しています。また、サービスラインアップの拡充にも注力しています。ドローンを活用したビジネス展開を支援する「Dream Drone」はその1つです。
桔梗原 Dream Droneとは、どのようなサービスなのでしょうか。
田口 豊富なドローン技術の知見を持つDBRIJ※1各社との提携により実現した、ドローンのビジネス活用を支援するサービスです。空撮映像や様々なセンシングデータの収集が可能なドローンは、いわば“空飛ぶIoTデバイス”。Dream Cloudを処理基盤とすることで、ドローンで得た様々なデータをビジネス価値に変えることができます。
例えば、空撮による4K画質の映像制作サービスでは、各種プロモーションのほか、名所・旧跡の映像を利用した今までにない観光振興策などが可能になるでしょう。また、人が足を運べない地域にもドローンは入っていけるため、橋梁やトンネル、鉄塔、プラント設備など、社会インフラの監視や安全管理にも役立てることが可能です。
桔梗原 2017年9月には千葉県君津市に首都圏最大規模(14万平方メートル)のドローン飛行場を開所されています。これも、このサービスにつながっていたのですね。
田口 その通りです。実際、既に多くのお客様からお声がけをいただいており、ドローンのニーズの高まりを感じます。例えば土木・建築分野では、空撮した土地の映像を3DCG化することで、3D起工測量を行う企業が増えています。これにより、従来は多くの時間と人手が必要だった測量業務を、少ない人員かつ圧倒的な短期間で行えるようになります。
また、工事現場の空撮映像を3D映像化し、BIM(Building Information Modeling)/ CIM(Construction Information Modeling)のデータと連携することで、工事の進捗管理に役立てることも可能です。建機のレンタル会社と協業し、それらの稼働データも取り込めば、より管理の精度を高めることもできるでしょう。
さらに、農業もドローンへの期待が大きい分野です。空撮映像を活用すれば、農作物の育成状況や圃場の管理を飛躍的に効率化し、品質や収量アップにつなげることができるからです。既に当社も、精密農業を推進する企業と共に、有機農法による「ドローン米」作りの実証実験を進めています。
桔梗原 映像のような大容量データの活用が進めば、それを処理するクラウド基盤の要件も変わりそうですね。
田口 そのためのクラウド基盤の強化にも取り組んでいます。2017年10月には、GPU(Graphics Processing Unit)コンピューティングの世界的メーカーであるNVIDIA社が展開するパートナープログラムを、国内企業として初めて締結※2。同社の仮想GPUテクノロジーを採用した「vGPU-VDIクラウドサービス」を開始しました。
このサービスでは、ドローンを使った3D測量はもちろん、高速画像処理が求められるCADや3DCG、BIM/CIM、4K映像などの実行環境をVDIサービスとして提供します。また、ディープラーニング用途に最適化したサービス拡充も予定しています。これにより、“データドリブン”な企業経営を、一層強力に支援できる体制を整えていきます。
桔梗原 最後に、今後の展望を教えてください。
田口 Dream Cloud、Dream Droneをはじめ、当社のサービスは様々なOSSの活用により成り立っています。それらを適切に組み合わせ、サポート対応までを含めたソリューションとして提供するのが我々の務め。そのための技術者の採用・育成や、実績あるパートナー企業との協業をさらに進めることで、サービス品質の強化に努めていきます。
こうした取り組みを通じ、アイネットのクラウドをドローンデータにおける国内最大規模の「集積地」へと発展させていく。そのことを通じて、さらに多くのお客様のビジネスイノベーション実現に貢献していければと思います。
※1 DBRIJ(Drone Business Realizing Initiative Japan)
※2 2017年10月、NVIDIA Partner NetworkのCloud/Virtualization分野で「CSP(Cloud Service Provider)契約」を締結