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難易度が高くなるほど利用メリットが際立つ - 微細な穴あけ用レーザー加工機「ABLASER」

難易度が高くなるほど利用メリットが際立つ微細な穴あけ用レーザー加工機「ABLASER」

先進ユーザー事例:伊藤精工
金型加工は投資産業、新技術導入は早い方が良い
長谷川氏

伊藤精工
代表取締役社長 長谷川公平氏

 伊藤精工は、極めて精密な金型の設計・加工を請け負う京都の企業である。1907年の創業時は仏具製造、その後、配管用ジョイント、自動車吸気マニホールドなどの製造を経て、1975年から現在の金型製造を始めた。京都の産業の変化に寄り添い、柔軟に業態を変えて時代に適応してきた企業である。世界トップクラスの半導体や電子部品のメーカーが数多くある京都という現在の土地柄を反映して、金型加工を依頼する顧客のほとんどが電子部品や半導体に関連した企業になった。同社の金型は、世界の電子産業を支える製品の生産に欠かせない中間消費財となっている。

顧客製品の進化を金型加工の進化で支える

 電子産業は、数ある産業の中でも特に技術開発の進化が早い。製品の製造に使われる金型にも、業界全体の進化と歩調を合わせた技術革新が要求される。伊藤精工は、2017年にABLASERを導入した。半導体のセラミックス基板の生産工程で用いる、焼成前のグリーンシートに微細な穴を打ち抜くプレス金型の加工用としてだ。

 半導体では、複数枚のチップをパッケージ内に積層実装して、より集積度の高い製品を作る動きが活発化している。チップ間にセラミックス基板を挟む方法で積層する場合、チップ間で信号や駆動用電力をやり取りするための多数の導通穴(ビアホール)をセラミックス基板にあけてチップ間をつなぐ。

 伊藤精工では、グリーンシートにビアホールとなるパンチ穴をあけるための金型を製作している(図A)。要求される加工技術のレベルは極めて高い。穴径は機械加工で製作する製品の中では飛び抜けて微細であり、さらに金型1つに対しあける穴の数も1万個に達する場合がある。伊藤精工では、大小合わせてこうした金型を年間約100種類作っている。

精密金型 精密金型

図A伊藤精工で製作しているグリーンシートへのビアホールの打ち抜き用精密金型

長時間・連続加工できる点が何より助かる

 ABLASERを使っている工程は、パンチ穴を打ち抜くピンを受け止めるための穴をあける部分である。金型には、ピンの数だけ微細な穴をあける。しかも、金型にあけた穴の位置や形の精度が良くないとピンが折れてしまう。微細で高精度、なおかつ大量の穴あけが求められる、加工難易度の高い工程だ。

 金型の材料には耐久性に優れた超硬合金を使っている。これまでこの部分の加工には細穴放電加工機を使っていたが、1.1㎜薄さの超硬合金に120㎛の穴を1万個あけるのに、290時間(約2週間)もかかっていたのだという。しかも、放電加工機は加工中の電極部の摩耗が激しく、摩耗による加工の中断が頻繁に起きる。そのまま気付かずに放置してしまうと、納期がずれ込んでしまうため、加工中は土日も機械が動いていることを確認しに出社しなければならない。

 ABLASERの導入によって、加工時間が約1/6の44時間に短縮できたばかりではなく、一度セットしたらそのまま長時間・連続加工できるようになった。「ABLASERを使い始めてから、これまでに加工の途中で止まったことは一度もありません」と伊藤精工 代表取締役社長の長谷川公平氏は言う。さらに、加工品質も格段に向上した(図B)。

120㎛の細穴を放電加工とABLASERのそれぞれで加工した後の形状比較

図B120㎛の細穴を放電加工とABLASERのそれぞれで加工した後の形状比較

早期導入して使いこなしのノウハウを蓄積

 伊藤精工が金型の加工手法としてのレーザーに注目したのは、約20年も前のことだったという。接触加工による工具の摩耗が生産性の向上を著しく阻んでいたため、非接触加工が可能なレーザーが代替案として浮かんだ。なかなかの先見の明である。ただし、その時点では、工作機械に替えて利用できるような性能のレーザー加工機が見当たらなかった。

 しかし、2014年に開催された日本国際工作機械見本市(JIMTOF)での三菱重工工作機械(当時は三菱重工業の工作機械部門)のブースで、工作機械として開発したレーザー加工機の展示に目が止まった。その時点では、取り扱う加工領域が狭く、自社の金型加工に利用できなかったのだが、にわかにレーザーを使った加工が現実味を帯びてきた。その後、伊藤精工が出展していた展示会のブースに三菱重工工作機械の担当者が訪れ、同社が望むレーザー加工機が出来上がったことを知らされ、導入に至った。

 伊藤精工に限らず、金型加工を請け負う多くの企業は、機械加工技術の蓄積で金型を作ってきた。「現時点の金型の加工要求については、従来法である細穴放電加工機を使っても対応可能です。しかし、金型産業は設備産業であり、どんどん新しいものを取り入れていかないと生き残れません。今、放電加工で対応できても、より微細で高精度の加工が求められれば、トラブルが発生するリスクがどんどん高まることでしょう。特に半導体向けでは製品の微細化は目に見えており、迅速な対応が求められていました」(長谷川氏)。

 その一方で、レーザーを使った加工では、ワークの材料によって加工条件の精査が欠かせず、その活用には新たなノウハウが求められる。「今は、加工条件の設定時に扱うパラメーターの意味を把握し、自在に使いこなせる状態にすることを目指して取り組んでいます。そして、従来法では実現できなかった、レーザー加工でしかできないことを明確に訴求していきたいと考えています」(長谷川氏)。現時点で、レーザー加工による金型製作を請け負う企業は少ない。そのためにも、いち早く使い始めることが重要だと考えたようだ。

 ABLASERを使わないと実現不可能な、焼成後のセラミックスの加工にも挑戦していくのだという。セラミックスは焼成後に材料が縮むので、高精度な製品を作るために、焼成後の穴あけにニーズがある。「レーザー加工機は、設置場所の温度変化に対して加工条件が繊細に変わるが、理想的には限られた工場スペースに何台も並べて稼働させたいので、温度変動に強い加工機が欲しいと考えています」と新たな注文をつけながら、長谷川氏はABLASERを使いこなして実現する競争力の高い加工事業に思いを馳せている。

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