AR×5Gがスポーツ観戦の新体感に貢献
テクノロジーがスポーツの未来を切り拓く

 NTTドコモではAR 、5G、 VRといった最新技術を活用し、スポーツ観戦の新たな体感価値向上を目指している。なぜ同社がスポーツに取り組むのか。担当者や関係者にその狙いを聞くとともに、画期的な観戦サービスを提案した体験イベントの様子をあわせてレポートする。
 NTTドコモではAR 、5G、 VRといった最新技術を活用し、スポーツ観戦の新たな体感価値向上を目指している。なぜ同社がスポーツに取り組むのか。担当者や関係者にその狙いを聞くとともに、画期的な観戦サービスを提案した体験イベントの様子をあわせてレポートする。

NTTドコモとスポーツは、もともと深い関係にある

 2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックと大規模かつ国際的なスポーツイベントが続く日本。スポーツ庁/経済産業省ではスポーツ市場規模を2020年に10.9兆円、2025年に15.2兆円と試算し、スポーツ産業を成長産業の1つに位置づけている。

 こうした中、NTTドコモは同社の豊富なアセットを用いてスポーツ産業の市場拡大に向けた取り組みを重ねる。2017年7月には戦略的な取り組みの1つとして「スポーツ&ライブビジネス推進室」を新設した。

 スポーツ&ライブビジネス推進室で室長を務める尾上健二氏は、「ラグビーではNTTドコモ レッドハリケーンズ、サッカーのJリーグでは大宮アルディージャを支援するなど、もともとNTTドコモとスポーツは深い関係にある」と話す。2017年2月にはスポーツ専門の動画配信サービス「DAZN(ダ・ゾーン)」と協力して、「DAZN for docomo」の提供を開始。サッカー、ラグビー、野球、バレーボールなど国内外年間7500以上の試合映像を月額980円(ドコモ契約者のみ)で見放題とした。テレビやPCはもちろん、スマートフォンやタブレットなどマルチデバイスに対応することで、いつでもどこでも視聴可能とし、スポーツ観戦の裾野を広げることに大いに貢献している。

NTTドコモの尾上健二氏

 2017年7月にはJリーグと「トップパートナー契約」を締結。協業を主軸とした取り組みを加速させた。

 「Jリーグチケットサイトでdポイントがたまって使える『dケータイ払いプラス』を9月に導入し、よりお得にチケットを購入できるようにした。また、全国のドコモショップのうち、約210店舗をJリーグ応援店舗としている。今後、この応援店舗を柱として各スタジアムへのライトユーザーの送客なども加速していきたい。これからはオンライン/オフライン双方の取り組みで蓄積されたデータを組み合わせながら、さらなる相乗効果を生んでいくことが鍵を握るだろう」(尾上氏)

 このほか、スポーツ観戦やライブ鑑賞などで“これまでにない視聴体験”を提供することも、スポーツ&ライブビジネス推進室が担う大きなミッションだ。2017年12月24日には、東京・秩父宮ラグビー場を舞台に5G、AR、VRといった最新技術を投入した体験イベント「新体感!みらいスタジアム」を開催した。

 具体的には、スタジアム外のテントに3Dの4K VRと8K VRブースを設けて、選手目線で没入できるラグビー映像を用意。映像にはNTTドコモ レッドハリケーンズの選手が全面協力した。このVR体験はすでに2017年10月の試合会場で実施され、長蛇の列を成すほどの好評を博した。

展示したVR映像のイメージ(NTTドコモの発表資料より)

 スタジアム内ではスマートグラスを用いたARによる映像体験と、スマートフォンアプリ「ラグビー先輩」を提供。スポーツ&ライブビジネス推進室 担当課長の鈴木茂美氏は「これらソリューションを総合して、スポーツ観戦の新体感をお客様に味わっていただく」と語る。ラグビーをターゲットにしたのは、「ルールがわかりにくく、初心者には入りにくい。スタジアム内で観戦支援を行うことで若い女性などにラグビーの楽しさを知ってほしい」(鈴木氏)からだ。

NTTドコモの鈴木茂美氏


ARライブ映像視聴システムのイメージ(NTTドコモの発表資料より)

 そのため、AR体験では本物の試合を見ながらスマートグラス上に注目選手情報やピッチ内の状況を拡大した別視点映像、注目ポイントのテキストを表示。アプリのラグビー先輩は試合の状況や選手情報をプッシュ配信するほか、AIチャットボットによる質問への自動応答など、「まるでそこにラグビーに詳しい先輩がいるかのような内容にした」(鈴木氏)。

 今回のイベントではNTTドコモに加え、パートナー企業の技術を結集した。まず、AR体験エリアや試合実況用サーバへの伝送路として5G回線を利用し、通信によるスタジアムでの生配信を実現。AR体験ではNTTドコモが開発した特許技術「空間インターフェース技術」による「ARライブ映像視聴システム」を採用。スマートグラス越しの手の動きをセンサーで感知し、スマートグラス上のコンテンツを操作できるようにした。

 ラグビー先輩のAIチャットボットにはNTTドコモのチャットボットAPI作成プラットフォーム「Repl-AI」を活用。試合実況のLMV(Live Multi Viewing)アプリはTBSテレビ、WOWOW、NIXUSが共同開発したものだ。LMVサーバはNTTドコモと富士通、富士通研究所が共同で実証実験を行っているMEC(Mobile Edge Computing)に組み込まれ、多端末接続へのアクセスを可能としている。

 尾上氏は「ARを使った理由は、試合を見ている状態を邪魔せずに情報を提供できるため。スポーツを見ることで得られる感動体験や臨場感に、我々の技術で利便性や楽しさという付加価値を加えたい」という。スポーツとICTの掛け合わせについてもさまざまな可能性を感じており、観戦にとどまらずチーム管理やコーチングなど、プレイする側にとっても有益な技術が多いと話す。

 「NTTドコモとしてスポーツ産業をより活性化していくためには、大企業だけではなく、ベンチャーも含めて協創を考えている。また、プロだけではなく、アマチュアや大学なども含めていろんなトライを重ねながらパートナーシップを組むのが理想。スポーツに関わる『観る人』『する人』『支える人』に対し貢献してきたい」(尾上氏)

日本ラグビーフットボール協会の太田治氏

 ラグビー関係者はどのように受け止めたのか。日本ラグビーフットボール協会 トップリーグ委員会 委員長の太田治氏は「NTTドコモの技術を用いてラグビーの魅力をリアルタイムに届けられたことはとてもインパクトが大きかった。ラグビーに対する理解度が深まるツールとして非常に有効だったと感じている」とイベントの取り組みを評価。その上で「AR/VRにしろ、解説アプリにしろ、わかりやすく、観客が見て楽しいところがいい。協会のミッションは日本代表の強化、そしてラグビーの普及活動にある。このようなツールをきっかけに、ラグビーへの理解が深まれば嬉しい」と語った。

 日本のラグビーは日々成長を続けている。2015年のラグビーワールドカップにおける日本代表の健闘もあり、「今の選手は国内だけではなく、世界を目指すことが目標になりつつある」(太田氏)という。昨今は映像をはじめとするデータを活用した分析やコーチングを積極的に採り入れ、世界標準をにらんだ選手育成にも余念がない。2019年のワールドカップは確かに1つのマイルストーンだが、その後の発展こそ大事だと太田氏は力を込める。

 「日本でもっとラグビーを盛り上げていくには、おらが町のチームが地域に根づき、今以上に盛り上がる必要がある。一方、ラグビーは企業の皆さんに支えられてきた歴史を持つ。地域も企業も住民も一緒になってラグビーを支えていくのが理想。それこそラグビーの“One for all, All for one”の精神につながるものだ」(太田氏)

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