強力な連携を持つエコシステムづくりを支援
ドコモがオープンイノベーションに賭ける想い

 大盛況のうちに幕を閉じた「NTTドコモ・ベンチャーズ DAY 2018」。国内コーポレートベンチャーキャピタルの先駆けとして常にベンチャー投資をリードしてきたNTTドコモ・ベンチャーズは、5周年の節目を迎えてどこへ向かおうとしているのか。キーパーソンの1人である同社取締役副社長 稲川尚之氏に話を聞いた(聞き手は日経BPイノベーションICT研究所の菊池隆裕氏)。
 大盛況のうちに幕を閉じた「NTTドコモ・ベンチャーズ DAY 2018」。国内コーポレートベンチャーキャピタルの先駆けとして常にベンチャー投資をリードしてきたNTTドコモ・ベンチャーズは、5周年の節目を迎えてどこへ向かおうとしているのか。キーパーソンの1人である同社取締役副社長 稲川尚之氏に話を聞いた(聞き手は日経BPイノベーションICT研究所の菊池隆裕氏)。

可能性に着目した“先鞭投資”を拡大する

菊池氏 先日の「NTTドコモ・ベンチャーズ DAY 2018」は大盛況でした。改めて振り返ってみていかがですか。

NTTドコモ・ベンチャーズ DAY 2018の様子

稲川氏 800名近くのお客様が足を運んでくださり、非常に満足の行く結果となりました。我々はその場で「今後ますますベンチャー企業とのコラボレーションを加速していく」とのメッセージを発信しましたが、その思いはきっと伝わったと感じています。

 イベントでは3つのキーワードとして「フォーカス」「拡大」「連携」を掲げました。まずはフォーカスについて。これは“どの分野に軸足を置いて事業を作っていくのか”について、ピントをシャープにすることを意味しています。

 背景には、NTTドコモが2017年4月に新たな中期戦略として策定した「beyond宣言」があります。beyond宣言では5Gを中心として、AI、AR/VR、ドローン、ヘルスケアなど9つのチャレンジ領域を設けていますが、新しい対象が多いからか「これも面白そう、あれもやってみたい」となる傾向が強い。しかし、最も重要なのはビジネスとして成立するかどうかです。ですからベンチャー企業の方々に、対象についてより具体的な計画を立て、しっかり事業化できるプランを設計できるようにアドバイスしていきます。

NTTドコモ・ベンチャーズ 取締役副社長 稲川尚之氏

菊池氏 拡大はグローバル展開のことでしょうか。

稲川氏 拡大には2つの側面があります。1つはおっしゃる通り、グローバルへの拡大です。2017年1月にスタートアップのメッカである米国シリコンバレーに支店を設立したので、そこをベースに展開していきます。日本と並行して、米国、英国、仏、北欧、イスラエルなどを想定しています。

 もう1つは、ベンチャー企業に対する“先鞭投資”の拡大です。今まではNTTドコモの事業部との協業が見えていないと投資まで実行するのが難しかったのですが、今後は全体の3割ほどについて、ベンチャー企業の持つポテンシャルに着目して積極的に投資していきたいと考えています。

 こうした先鞭投資は、2020年の東京オリンピック・パラリンピック後の時代をにらんだものになります。2020年の大イベントに向かって皆さん一斉に走っていますが、NTTドコモの次世代ネットワークである5Gは逆に2020年がスタート。つまり、5Gを介してそこからいろんなことが始まるわけですから、2025年や2030年にどのような世界になっているのかを見据えた、少し先の未来の事業や分野を掘っていきたいのです。

菊池氏 連携については。

稲川氏 私は2013年から3年間、シリコンバレーで仕事をしていましたが、ベンチャー企業と大企業とのエコシステムが上手く回っている連携を目の当たりにしました。そこで痛感したのが、米国のように戦略的に回していくことが日本にも必要だということです。

 我々は大企業とベンチャー企業が強力な連携を持つようなエコシステムづくりをしていきたい。日本ではまだまだ難しいとは思いますが、トライしていかないと結局ベンチャー企業の中だけで輪が完結してしまい、生まれては消えてを繰り返してしまいます。大企業が有能なベンチャー企業を取り込んでいき、そこから新たな事業を生み出していくやり方は、企業の活性化の面からも有益なものだと思います。

菊池氏 日米の違いについて、もう少し掘り下げて聞かせていただけますか。

日経BPイノベーションICT研究所 菊池隆裕氏

稲川氏 決定的に違うのは“場”のパワーですね。シリコンバレーでは、街が持っている場の要素がまったく異なります。優秀な人材と資金、そこで事業が回るマーケットが既に存在しているからです。

 面白いのは、ダメになっても再チャレンジが可能だということ。以前失敗した人でも斬新なアイデアを再提案すれば、きちんと評価して、資金を出してくれるエンジェル投資家やベンチャーキャピタルがたくさん存在します。成功して、やがて投資側に回るベンチャー関係者も多いですし。

 しかし日本、とりわけ東京では優秀な人材は大企業に就職します。もちろん地頭の良い人たちが多いので、大企業の中ではしっかりと組織を回していきますが、少人数でアイデアを出して新しいことを進めることには慣れていません。

菊池氏 なるほど。確かにそうかもしれませんね。

稲川氏 いずれにしろ、先ほど話したような敗者復活の仕組みも含め、日本ではベンチャー企業を育てる土壌がまだ整備されていないと感じています。そもそもアイデアを出す経験が少ないし、新しいアイデアを温めていても資金を提供してくれる窓口との接点も多くない。

 だからこそNTTドコモ・ベンチャーズのように、大企業のバックアップのもとでベンチャー企業を支援していくスタイルが鍵を握ります。例えば、無名のベンチャー企業AをNTTやNTTドコモが支援しているとなれば周囲の評価も変わってきます。そこからベンチャー企業Aに対する信頼性が生まれ、その信頼性が新たな支援を呼び込むのです。

 米国では、有名な投資家があるベンチャー企業に投資すると、「あの投資家が目をつけているならこの企業は面白いかもしれない」と周囲の投資が連鎖していきます。日本ではその役目を大企業が担っている。我々のようなコーポレートベンチャーキャピタルの意味は、そこにあるのではないでしょうか。

iモード時代から続く、濃いパートナーシップの歴史

菊池氏 一方でNTTドコモには、iモードの昔から外部パートナーと協業してきた経緯があります。

稲川氏 そうですね。振り返ると、1999年にiモードをスタートしたときが外部とのパートナーシップの始まりです。当時、iモードの公式サイトにコンテンツを提供できるかどうかが大きな信頼指標の1つになりました。

 しかし我々からすると、外部の企業が参加してくれたからこそサービスが信頼性を増したのです。iモードは、できる限り小さなデータ量でより多くの情報を送受信するアイデアを具現化したものですが、制約があるからこそさまざまな工夫が生まれました。こうした工夫が、それまでにない携帯電話での新しいコミュニケーションを実現したイノベーションにつながったのです。

菊池氏 ちょうど今日(2月22日)はiモードが始まった日ですね。iモードの誕生は、私にとってもゲーム会社や銀行など、取材先が広がるきっかけとなりました。投資活動のほかには、イノベーション創出プログラムの「ドコモ・イノベーションビレッジ」も運営されています。これも支援の一環でしょうか。

稲川氏 はい。まさに今話しているこの会場を舞台に、基本的に火曜・木曜の夜、いろんなテーマで勉強会を開催しています。例えば新規事業創造、ドローン、観光ビジネス、女性向けのサービスなど、それぞれのテーマに沿った講師を招いているのが特徴です。

 2013年から開催していますので、これまで延べ7000人超が参加しました。実際に顔を合わせると、そこでさまざまなマッチングが生まれます。ですから、場を作ることも非常に重要なのです。

菊池氏 では最後に、2020年の先に向けての展望を教えてください。

稲川氏 NTTドコモだけではなく、ほかのNTTグループとも組めるようなベンチャー企業を探していきたいですね。人と出会うことで何かが変わる――そうした経験は必ずあります。まずは我々を訪ねていただいて、話を聞かせてもらいたい。そうすればマッチングの提案ができる可能性も出てきます。ぜひアイデアをお待ちしています。

お問い合わせ

ドコモ・イノベーションビレッジ事務局
E-mail:village-application@nttdocomo-v.com