2018年は「サードギアチェンジ」の年
NTTドコモ・ベンチャーズが目指す明日とは?

 2018年2月20日、「NTTドコモ・ベンチャーズ DAY 2018」が盛大に開催された。設立から5周年を迎えたNTTドコモ・ベンチャーズ、そして母体となるNTTドコモが、今後の方針や取り組み、パートナー企業との協創を発表。熱気に満ちたカンファレンスの様子とあわせ、ブースにおける画期的なソリューション展示をレポートする。
 2018年2月20日、「NTTドコモ・ベンチャーズ DAY 2018」が盛大に開催された。設立から5周年を迎えたNTTドコモ・ベンチャーズ、そして母体となるNTTドコモが、今後の方針や取り組み、パートナー企業との協創を発表。熱気に満ちたカンファレンスの様子とあわせ、ブースにおける画期的なソリューション展示をレポートする。

ベンチャーとの「フォーカス」「拡大」「連携」がキーワード

 カンファレンスの冒頭、NTTドコモ・ベンチャーズ 代表取締役社長の中山俊樹氏が挨拶。中山氏は「Gear Change(ギアチェンジ)」をキーワードに掲げ、同社の前身であるNTTインベストメント・パートナーズが発足した2008年を「ファーストギアチェンジ『創業』」、NTTドコモにファンドを移してNTTドコモ・ベンチャーズとしての活動をスタートした2013年を「セカンドギアチェンジ『加速』」と紹介。そして2018年を、あらゆる活動のレベルを引き上げる「サードギアチェンジ『向上』」と位置づけ、「誕生10年を迎えるにあたり、フルギアチェンジをして前進したい」とそのビジョンを示した。

NTTドコモ・ベンチャーズ 代表取締役社長 中山俊樹氏

 続けてNTTドコモ・ベンチャーズ 取締役副社長の稲川尚之氏が登壇し、同社の活動方針を説明した。「新たに誕生したデバイスや通信サービスを組み合わせることでイノベーションが起こる時代。新たなサービスを発掘すべく、この社会に何かを投じたい」と考える稲川氏が、キーワードとして挙げたのは「フォーカス」「拡大」「連携」の3点だ。

NTTドコモ・ベンチャーズ 取締役副社長 稲川尚之氏

 「フォーカス」では、NTTドコモが2017年4月に発表した中期戦略2020「beyond宣言」の中で挙げた9つの分野(AR/VR、次世代モビリティ、AIエージェント、FinTechなど)の中から、ベンチャー投資活動の観点で注目領域を絞っていく。

 「拡大」では、2017年1月に設立したNTTドコモ・ベンチャーズのシリコンバレー支店との連携をさらに強化し、活動領域をアメリカのみならず、イギリスやフランス、ドイツ、北欧、技術的に注目されているイスラエルなど、世界の主要国に広げていく。「連携」ではベンチャー投資に限らず、M&AやIPOなどのパートナーシップを絡めた事業参画に協力していくとし、今後の展望を明確にした。

NTTドコモから続々と生まれる次世代型のデジタルビジネス

 以下、NTTドコモ関係者による注目を集めたセッションを紹介していこう。プラットフォームビジネス推進部 担当部長の川本裕子氏は「ドコモが目指すデジタルマーケティング」を説明した。ご存知の通り、近年のNTTドコモでは「dアカウント」や「dポイント」を中心としたサービスの進化、決済手段の多様化、パートナービジネスの拡大を通じて会員基盤「docomo DMP」を拡充し、そこに蓄積された顧客情報を理解することで広告や送客を軸としたマーケティングビジネスを展開している。

NTTドコモ プラットフォームビジネス推進部 担当部長 川本裕子氏

 昨今の取り組みとしては、アンケート形式で有望顧客を絞り込み、新製品を訴求するためのクーポンをQRコード発行することで来店率向上や商品認知などにつなげる事例や、位置情報によるターゲッティングを活用してクーポンをプッシュ配信し、店舗への送客に役立てる事例を紹介。

 また、今後のマーケティングビジネスの進化については、購買情報やWebアクセスログなどの「データ」、AIや機械学習などの「テクノロジー」、販売促進や広告などの「ソリューション」を強化することで「『お客様理解の進化』と『DMPの拡充』を推進し、デジタルマーケティングを拡げていく」(川本氏)方針を示した。

 プラットフォームビジネス推進部 担当部長の岡本哲氏は「dmenu」や「マイマガジン」などのオウンドメディアについて解説した。NTTドコモは現在、おもなオウンドメディアとして「コーポレート」「My docomo」「dmenu」「マイマガジン」「d POINT CLUB」などを展開しており、dmenuはMAU(月間アクティブ利用者数)が5700万、月間PVが30億を超えるほか、マイマガジンも500万MAUと10億PV、d POINT CLUBは2500万MAUと2.5億PVに及んでいる。

NTTドコモ プラットフォームビジネス推進部 担当部長 岡本哲氏

 また、1年で20社とのパートナー連携を結んでおり、「dmenuのトップページに表示すれば、1日当たり約1万クリックが見込める」(岡本氏)と、そのメリットをアピール。これを踏まえ、オリジナル記事を配信するメディアパートナーに対して、「NTTドコモを使い倒す勢いで来てほしい」(岡本氏)と参加・連携を呼びかけた。

 スマートライフ推進部 担当部長の忍足大介氏は、NTTドコモのアライアンスイノベーションについて語った。忍足氏は「典型的な大企業であるNTTドコモと組んでも『上手くいかないのではないか』と諦める人がいるかもしれない。しかし、豊富なアセットとリソースを有するNTTドコモこそがどんなことでもチャレンジして実現できるポテンシャルを持っている」と指摘する。

NTTドコモ スマートライフ推進部 担当部長 忍足大介氏

 直近の実例としては、NTTドコモの100%子会社である「らでぃっしゅぼーや」をオイシックスドット大地に売却した例や、英語4技能をオンラインで身につけられる学校向けサービスでEduLabと業務・資本提携した例を紹介。忍足氏はアライアンス戦略を「パートナー企業との新しいサービス開発やサービス改革が目的であり、M&Aはあくまで重要な手段の1つ。日本を動かすような新しいビジネスを、小さいところからでも一緒に始めたい」と語った。

 ベンチャー企業との協業事例では、「動画ビジネス×スポーツビジネスの可能性」と題したトークセッションが行われた。Candee 代表取締役社長 CEOの古岸和樹氏、NTTドコモ スポーツ&ライブビジネス推進室 担当部長の馬場浩史氏が登壇し、NTTドコモ・ベンチャーズ Senior Directorの安元淳氏がファシリテーターを務めた。

 Candeeは、ライブコンテンツを配信するプラットフォームとして2017年6月にライブコマース「Live Shop!」をスタート。ここで培ったノウハウや経験値を「今後スポーツで活かしたい」(古岸氏)と考え、NTTドコモとの取り組みを進めている。

 一方NTTドコモは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックや2019年のラグビーワールドカップなど、世界的なスポーツイベントの日本開催が予定される中、2020年のサービス開始を予定する5Gネットワークを活用したスタジアムソリューションとして、「動画を中心とした映像体験にこだわっていきたい」(馬場氏)考えだ。また、スポーツ業界はファンの高齢化が課題となっているため、「スマホでの視聴が多い若年層や女性層の取り込みという観点から、Candeeに注目した」(馬場氏)という経緯がある。

左からNTTドコモ・ベンチャーズ Senior Directorの安元淳氏、Candee 代表取締役社長 CEO 古岸和樹氏、NTTドコモ スポーツ&ライブビジネス推進室 担当部長 馬場浩史氏

 今後展開されるビジネスの方向性について、馬場氏は「試合そのものではなく、スポーツの周辺にあるビジネスとライブ映像を掛け合わせてマネタイズしていく」と説明。すでに展開している海外事例として、スタジアムに来た際にVRで別の試合も楽しむ「BROADCAST in 360 VR」、ハーフタイムに観客がスマホで逆オークションに参加できる「REVERSE AUCTION」、スタジアムまでの交通手段の確認やグッズ購入、ゲーム的要素の入った選手応援などに対応する「スマートスタジアム」、ユーザーが仮想チームを作って対戦できる「FANTASY SPORTS」を紹介した。

 最後に馬場氏は、Candeeのようなベンチャー企業と一緒に取り組むからには「“超”スピード感をもってサービスの実現に取り組みたい」と語った。

ドコモ・イノベーションビレッジが育んだ精鋭たち

 カンファレンスの締めくくりとして、ドコモ・イノベーションビレッジとの協業を実現したベンチャー企業4社によるピッチが行われた。

NTTドコモ スマートライフ推進部アライアンス推進担当部長 鈴木康広氏

クロスデバイス 代表取締役社長 早川達典氏

 挨拶に立ったNTTドコモ スマートライフ推進部アライアンス推進担当部長 鈴木康広氏によれば、ドコモ・イノベーションビレッジの枠組みには、ベンチャー企業との連携で新たなサービスを創造する「Villageアライアンス」、オープンイノベーションを促進する「Villageコミュニティ」、社会的課題の解決に取り組む社会起業家を支援する「Villageソーシャル・アントレプレナー」の3本柱があり、今回はVillageアライアンスに関連するピッチとなる。

 1番手は、VRソリューションを展開するクロスデバイス 代表取締役社長の早川達典氏。NTTグループとの取り組みとして「みんなのVR」やライブVRを活用したイベント、8K映像への対応などを説明した。VRの可能性については、NTTドコモと協業して「2020年に向け、VR上でのコミュニケーションを実現していきたい」と未来像を語った。

 2番手は、顧客体験マネジメントのソリューションを提供するEmotion Tech 代表取締役の今西良光氏。顧客と従業員の声を解析することで、企業の事業成長や課題解決を支援しており、「NPS(Net Promoter Score:顧客ロイヤルティ)という指標をしっかり蓄積・整理することと、解析精度をしっかり高めていくことがキーになる」と解説した。

Emotion Tech 代表取締役 今西良光氏

forEst 代表取締役 CEO 後藤匠氏

 3番手は、タブレット端末を活用した高校生・受験生向けeラーニングサービス「ATLS」を展開するforEst 代表取締役 CEOの後藤匠氏。ATLSは「読書ではなく、問題集を解くために最適化されたUXを備えている」のが特徴であるほか、学習履歴を可視化することで、生徒だけでなく「教師や出版社も、これまで以上に自身の役割を果たせる」ことも魅力となる。NTTドコモと連携することで「ICTの啓蒙をしながら、今年度で合計200校の導入を目指す」と目標を掲げた。

Liquid Japan 代表取締役 保科秀之氏

 4番手は、指紋や虹彩などの生体認証による決済サービスで注目を集めるLiquid Japan 代表取締役の保科秀之氏。すでに導入されている指紋を利用したシステムに加え、画像処理を活用した体型認証によるサービス展開などの概要を紹介した。

 保科氏は、IoTの次の社会を「IoP(Internet of Person)」と名付け、「モノを介さずに人がインターネットにつながる世界」を模索している。すでに東南アジアなどの新興国を魅力的な市場と考えており、「IoTを経ずにIoPの世界に飛んでもらい、手ぶらで安全かつ便利な生活ができるように貢献したい」と今後の展望を語った。

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