キーパーソン対談 世界初のケータイ情報サービス開発者 夏野 剛氏×スマート・ソリューション・テクノロジー CEO 山川 進氏 「聞こえない音」が認証の常識を覆す スマホ時代のサービスを革新する新技術とは

キャッシュレス化の進展に伴い、スマートフォンを利用した決済サービスも次々と登場。しかし、本格的な普及を図る上では、ユーザーの個人認証をより手軽に、かつ安全に行える仕組みが必要だ。これを実現するために有効な手段となるのが、スマート・ソリューション・テクノロジーが提供する音通信認証技術「SmartSound Technology」である。その真価と可能性について、同社社長の山川 進氏と世界初のケータイ情報サービス開発者として知られる夏野 剛氏が語り合った。

スマホ向けサービスにまつわる課題をいかに解消するか

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特別招聘教授 夏野 剛氏

今やビジネスにも日々の生活にも欠かせない存在となったスマートフォン(以下、スマホ)ですが、夏野さんは現在の状況をどのように見ていますか。

夏野 剛氏(以下、敬称略)世間では「ガラケー vs スマホ」といったとらえ方もあるようですが、私としてはあまりそういうふうには見ていません。大画面液晶やタッチ操作についても、既に15年くらい前に同様の機能を備えた製品が登場していますし、絵文字やアプリの構造などについてもガラケーのノウハウがかなり踏襲されています。とはいえ、当時の要素技術では、現在のような使い勝手が実現できなかったことも事実。そういう意味では、技術の発展によってガラケーが大きな進化を遂げた姿が、現在のスマホといえるのではないでしょうか。ただし、利用者、特に日本をはじめとしたローカルサイドの視点に立てば、課題もあるようです。

どのような課題があるとお考えでしょうか。

夏野大きな点では、日本市場にマッチしたサービスが、以前ほどタイムリーに提供されなくなった点でしょうか。AppleもGoogleもグローバルにサービスを展開していますので、日本固有のニーズにばかり目を向けるわけにもいきません。特に「おサイフケータイ」のような決済系サービスがそのいい例でしょうね。日本ではガラケー時代から普及していますが、iPhoneでApple Payが実用的に使えるようになったのは最近です。


株式会社スマート・ソリューション・テクノロジー CEO 山川 進氏

山川 進氏(以下、敬称略)プラットフォームが集約されたことで、利用者にとって慣れ親しんでいた機能が、ある日突然使えなくなるというのは大きな課題かもしれません。iPhoneのイヤホンジャックなどもそうですが、こうしたものが廃止されてしまうと、それを利用していた製品もすべて影響を受けてしまう。また、最近ではスマホの買い替えサイクルが延びる傾向にありますので、我々事業者側にとっては、いろいろな機種が混在することを前提に、製品やサービスの開発を行わなくてはならないことも、頭の痛い問題です。こうした問題点の解消に向けた新しいアプローチとして、当社では、日本初(※)の音による通信認証技術「SmartSound Technology」(以下、SST)を開発しました。

出典:スマート・ソリューション・テクノロジー 2018年2月調べ


「聞こえない音」による認証で改ざんや不正利用を防止

なぜ音通信認証技術の開発が課題解決向けた1つのアプローチとなるのでしょうか。

Spectrogramで見たSST

Spectrogramで見たSST

人の耳には聞こえない非可聴音域の音を利用して、暗号化された認証データをやり取りする。Spectrogramで見ると、その情報が見えているのがわかる

山川多種多様なスマホに対応できる共通のインフラとは何かーー、そう考えた時に残されていたのが「音」だったのです。いくらデバイスやOSが進化しても、マイクとスピーカーは無くならないでしょう。この唯一残されたレガシー技術を活用すれば、スマホにまつわる多くの課題を解消できると考えました。

夏野レガシーという言葉が出ましたが、五輪委員会の仕事などに携わっていると、意外と前向きな表現として使われているんですね。もともとが「遺産」という意味ですから、将来へ受け継がれていくものという意味合いが強い。そう考えると、「音」というレガシーで未来を拓くというのは、大変いいアプローチかもしれませんね。具体的にはどのような技術なのですか。

山川人の耳には聞こえない非可聴音域の音を利用して、暗号化された認証データを一方向、あるいは双方向でやり取りします。最近ではQRコードによるスマホ決済の仕組みなども登場していますが、画像にはどうしてもコピーや改ざんなどの問題がつきまといます。その点、「聞こえない音」であれば、こうしたリスクを回避できます。また、アプリを操作してQRコードを表示させる、店舗側のリーダーで読み取るといった手間も掛かりませんから、手続きも非常にスピーディーです。加えて、FeliCaのようなライセンス費用も掛かりませんし、既存の店舗PCやタブレットとも柔軟に連携できます。

SSTを活用した決済のイメージ

SSTを活用した決済のイメージ

顧客がスマホでアプリを立ち上げ、認証するとそれが店側にも通知される仕組み

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最近話題の「キャッシュレス化」に向けても強力な武器となりそうです。

山川もちろん、この技術単体で決済まで行えるわけではありませんが、その認証に不可欠な機能や使い勝手は提供できると考えています。キャッシュレスサービスを展開される企業と手を組んで、いろいろな新しいサービスが創出できればいいですね。


近接通信であることがサービスの可能性を大きく広げる

夏野さんはSSTにどのような印象を受けられましたか。

夏野個人的には、この技術の最大の肝は「近接でしかID交換が行えない」ことだと感じます。実は、そのことによるメリットは考えている以上に大きい。なぜなら、認証を行った端末が必ずその場所に存在した証明にもなりますからね。

キャッシュレス以外の分野でも、こうした特性が求められる用途は意外と少なくありません。例えば、ライブやスポーツイベントなどのチケットもその1つです。会場への入場手続きに利用することを考えると、近接でなければ使えないことに大きな意味があります。そう考えていくと、大変応用範囲の広い技術だと思います。また、認証に音を使うという点も利用シーンを広げる意味で大きなポイントになると思います。

なぜ、認証に音を使うと利用シーンが広がるのでしょうか。

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特別招聘教授 夏野 剛氏

夏野カメラや電波を使う手もありますが、前者では認識精度や先のお話にもあったコピーなどの問題がつきまといます。また、FeliCaなどの決済系技術では、セキュリティが堅すぎてアプリを作るのも大変ですし、運用コストもかさんでしまう。その点、音であれば、これらの点がクリアできますから、サービスを開発する側にとっても大変使いやすい。セキュリティについても、連携先のシステムを工夫することで、柔軟にセキュリティレベルを変えられますしね。音をコア技術として用いるからこそ、広がりのあるサービスがいろいろ創れるような気がします。

そもそも、スマート・ソリューション・テクノロジーが音に注目したきっかけは何だったのでしょうか。

山川これは裏話になりますが、もともと当社がFeliCa対応のリーダーを開発した時に、iPhoneが登場したことが関係しています。なんとかiPhoneユーザーの方々にも、FeliCaと同様の環境を提供したい。そう模索していた時に、リーダーにスピーカーを内蔵していたことに気付いたんですね。それほど高速な通信は行えませんが、認証キーの交換には十分使えます。そこから音の可能性を突き詰めていくようになったのがこれまでの経緯です。昔はネットワークにつながっている店舗も少なかったので、用途もある程度限定されていましたが、最近ではこの技術を様々な企業にご活用いただいています。例えば、訪日旅行者向けに、空港Wi-FiのSSIDを音で配信する仕組みを作ったこともあります。

夏野それはいいですね。Wi-Fiルーターのメーカーにも、ぜひ売り込むべきです。そのほかにもいろいろな利用方法がありそうです。例えば、企業の機密エリアの入退室管理。アプリ起動時に本人認証やドアで端末認証を行えば、その人がその端末を持っていないと入れないようにできます。また、スタンプラリーに使う手もありますね。こうした一時的なイベントのために大掛かりなシステムを作るのは困難ですが、この技術なら同様の仕組みを低コストに実現できます。

あとは家電製品などの保守サービスにも役立ってくれそうです。製品側から機種名やシリアル番号などをスマホに通知すれば、コールセンター側でもより迅速な対応が行えます。最近では金庫にもFeliCaで認証を行うような製品がありますが、こうした分野でもいけそうですね。

山川当社としても、まさにこういった業種の企業の方に、使っていただきたいと考えており、無料でこのテクノロジーの実装サポートを行う「スタータープログラム」の提供を開始したところです。興味ある会社は、気軽にお声がけいただければと思っています。


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