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vol.2-1 知と現場の最先端が語る、ロボット市場の未来

ロボットアプリケーションは「動詞」の数だけある

東京大学名誉教授である佐藤知正氏は、ロボティクス分野における知の最先端。また、産業用ロボットのトップランナーである中島秀一郎氏は、ABB株式会社のロボティクス事業部長としてその進化を牽引してきた現場の最先端だ。二人の目に映るロボット市場の現在と未来を語ってもらった。(聞き手:日経BP社 先端技術メディア発行人 林達彦)

トイワールドから社会実装段階へ

――政府による「ロボット新戦略」の後押しなどもともない、製造・サービス業を中心にロボット導入活動が急速に進展しています。佐藤先生は黎明期からロボットに携わられてきましたが、現在どのような思いがあるのでしょうか?

佐藤 私が大学を卒業した1970年代、国立の研究所ではちょうど現在と同様ロボットとAIがホットトピックスでした。当時ロボティクスは「トイワールド」と呼ばれ、整えられた実験環境で技術の基礎を作っていた時代です。何しろ画像処理さえままならず、どこまで実用化できるかもわからない状態でした。真っ黒な敷物を敷いた机の上に真っ白な積み木や升が置かれ、相当な処理時間をかけながら、ビジュアルフィードバックによるペグインホール作業を行っていました。それが今や、ロボットは桁違いの計算力や高度な知能を手にし、実社会で実用の段階にあります。ムーアの法則では、計算機の技術やコストは10年で1000倍以上進化するといわれてきましたが、感慨深いですね。

佐藤氏
佐藤 知正氏 Tomomasa Sato
東京大学名誉教授

 また、かつてプログラミングはすべて自分たちで手書きする必要がありましたが、今やオープンソースでまかなえる部分もたくさんありますし、学習アルゴリズムも進化しました。たとえば顔認証では、何万枚の画像を簡単に学習させることができ、人が書いたプログラムを凌駕する性能が得られる時代を迎えています。さらに重要な点は、そうした技術と技術を組み合わせることで、次なる新技術がどんどん生まれているということです。

――まさにオープンイノベーションが軸ということですね。他方、ABB(旧ASEA)が産業用ロボットを発売したのは1978年。世界に先駆ける一社として産業用ロボットの実績を重ねてきたわけですが、技術的な進化を実感する出来事はありますか?

中島 人との協働を実現するYuMi®(ユーミィ)は、ABBの歴史の中でも大きなイノベーションの一つです。これまでは産業用ロボットの導入といえば、大規模な工場、あるいはせいぜい倉庫の中でした。しかしYuMiを展開し始めてからは、従来の製造業だけでなく、農業や食品業など幅広くお引き合いをいただいています。

中島氏
中島 秀一郎氏 Shuichiro Nakajima
ABB株式会社 ロボティクス&モーション事業本部 ロボティクス事業部 事業部長

 当初YuMiが想定していたターゲットは、携帯電話の組み立て作業です。人と変わらない専有面積、万が一人と接触しても安全な外装やシステムなど、安全柵がなくても人の隣で働けることをコンセプトに開発されました。それが現在、安全柵で囲う必要がないことから、業種、工場といった従来の枠組みそのものを超えてご要望いただいています。考えてみれば、レストランやファストフードの調理場だって、作業の流れがきっちり構築されている点は工場と違いありません。バリューチェーンのあり方を含め、もっと自由に考えたいと思うきっかけになりました。

佐藤 YuMiは人型なところがいいですよね。ロボットに求められるのは、人に近い作業です。人の場合、周囲と協調して生存しているため、相手がどんな表情で、何を話しているかがクリティカルに重要です。相手の姿形や身振りに対して、センシティブに脳や神経ができあがっており、我々は相手の動きや表情を読み取るのに長けています。そう考えると、ロボットがより自然な応対を実現するためには、人に似た姿形や身振りが大切な役割を果たすでしょう。

 この意味で、世の中のあらゆるヒューマンインタフェースは、最終的には姿形と身振りのあるロボットになるのが自然だと私は考えているんです。世の中の多くの技術は人のために作られています。また逆に、ロボットの発展は、人を知ることと等価ということでもあります。人に役立つロボットの実現は、人を知ることにつながっています。

中島 人と技術の距離自体が近づいていますよね。ロボットだけでなく、3Dプリンターは誰もが使えるようになり、プログラミングは小学生でも勉強すれば書けてしまうわけですから。社会一般が、技術を使った発展を欲望しやすい環境に向かっているんだと思います。

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