vol.3-1 ABB Robotics Night 2017レポート

アイデアコンテストが生んだ次世代のロボット活用

2017年11月30日、ホテル インターコンチネンタル 東京ベイにて「ABB Robotics Night 2017」が行われた。このイベントの目玉となるのが、協働ロボット活用アイデアコンテスト「ABB YuMi Cup 2017」の受賞式典。本稿ではその模様を詳しくレポートするとともに、最優秀賞受賞者の特別インタビューをお届けする。

ABBが見据える「未来の工場」

会場の様子

 ロボットブームの到来から数年がたつ中、2017年は製造業から一般消費者向けまで幅広い分野でロボティクスの進化と可能性を垣間見ることができた1年間だったといえるだろう。そんな年の瀬に行われたのが、産業用ロボットを牽引するABBが主催するイベント「ABB Robotics Night 2017」だ。会場にはおよそ100名にも及ぶ参加者が集い、ロボティクスの未来を語り合った。

 冒頭に行われた講演の部ではABBの事業を担うリーダーたちが中心となり、ロボティクスの展望を語った。

登壇した4名

 登壇したのは、ABBジャパン 代表取締役社長のアクセル・クーア氏、ロボティクス事業部長の中島秀一郎氏、ABBグローバルで協働ロボット開発責任者として活躍するアンディ・ツアン氏。そして東京大学名誉教授であり、「ABB YuMi Cup 2017」では審査委員長を務めた日本のロボット研究の第一人者、佐藤知正氏の4名。

 「Let`s create, and Let`s think the future, together」というクーア氏の言葉を皮切りに、急速に変化するロボット市場の中で、ABBが活路を見出すための戦略指針を示していった。

アクセル・クーア氏
アクセル・クーア氏 Axel Kuhr
ABBジャパン 代表取締役社長

 中島氏が語るのは「ABBが考える未来の工場」。一貫して強調されたのは「コラボレーション(協働)」と「デジタライゼーション」の重要性である。インダストリー4.0以降、工場などの生産現場では、「協働」と「コネクティビティ(つながる)」が重視されており、必然的にロボットはそれを具現化できなくてはならない。そこでABBは、デジタル領域へとシフトしていくためのロボットプラットフォームを用意することで時代に対応していくという。

 さらに中島氏は「多品種少量生産が求められる傾向にある中、『未来の工場』のオートメーション化は、煩雑になっていきます」と指摘。その時にロボットが担うべき役割は、①すべてのレベルの効率化(品質や安全と、高効率な提供の両立)②信頼性(生産停止減少や復旧時間の短時間化、先を予測するインテリジェンス)③総合エコシステムの構築(シームレスに協働できるバリューチェーン)④柔軟性と反応速度(新しい状況に即時対応できるオートメーション)があると語った。

中島氏
中島 秀一郎氏 Shuichiro Nakajima
ABBジャパン ロボティクス&モーション事業本部 ロボティクス事業部 事業部長

 その上でツアン氏が語るのは「協働型ロボットとその模様について」だ。「IFR(国際ロボット連盟)の調査によると、2020年には世界で170万台もの新たなロボット需要が見込まれる」といったデータを用いながら、深刻な人材不足への対応や、これまで手作業で行ってきた暗黙知の継承といった課題解決には、既存の生産ラインをそのままにオートメーションを取り入れることができる、協働ロボットに優位性があると指摘する。その点、ABBの双腕型協働ロボットYuMi®(ユーミィ)は、サイズや安全性において人との協働を前提にしており、ダイレクトティーチングが可能な平易なプログラミングなどユーザビリティの高さが魅力。マスカスタマイゼーション時代の強みを示した。

アンディ・ツアン氏
アンディ・ツアン氏 Andie Zhang
ABBグローバル プロダクトマネージャー(協働ロボット)

 東大・佐藤氏は「産業および協働ロボットの現状とこれからの工場におけるロボット導入」として、自身のキャリアをもとに日本でロボットイノベーションを実践するための方法を提示。日本にはきめ細かなモノづくりを得意としてきた歴史があり、今後も継続する必要がある一方で、「技術で勝っても、産業化で後塵を拝する」という例が枚挙に暇がないという。「ロボットイノベーションとは、科学技術による社会変革です。要するに、単に技術力を高めるだけでなく、社会そのものを、世の中を変えるという視点が欠かせません」と語る。今後、産業用ロボットが要となる社会生活に向かっていく中で、特に福祉の分野などでは、個々人の要求にきめ細かに対応できるようなモノづくりが必要となってくる。そうした柔軟性をベースとするロボットバリューチェーン社会を世界に発信していくことが、日本におけるロボットイノベーションの糸口であるとして講演を締めた。

佐藤氏
佐藤知正氏 Tomomasa Sato
東京大学名誉教授
≫ NEXT 「ABB YuMi Cup 2017」表彰式典