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vol.3-2 ABB Robotics Night 2017レポート

アイデアコンテストが生んだ次世代のロボット活用

「ABB YuMi Cup 2017」表彰式典

 「ABB Robotics Night 2017」のハイライトは、初開催された「ABB YuMi Cup 2017」の受賞式典だ。「ABB YuMi Cup 2017」は、人との協働を実現するロボットYuMiの新しい活用を募ったアイデアコンテスト。およそ150組に及ぶ応募のうち、ファイナリストには3組が選ばれた。それぞれYuMiが無料で貸し出され、アイデアとプログラミングを実践するプロトタイプを制作。最終選考ではプレゼン動画による審査が行われた。審査のポイントは「革新性」「市場性」「実現性」という3つの評価軸で秀でているかだ。

 ファイナリストに残ったのは、リンクウェーブの坂元貴紘氏らが手掛ける「YuMiとディープラーニングを利用したサラダの盛り付け」、電マークの中野裕介氏らによる「初生雛鑑別システムのやさしいヒヨコ捕獲の実現」、そして最優秀賞に選ばれた立命館大学の立花京氏、立花舞氏らによる「サイダーバー」だ。

 受賞発表のアナウンスがあると会場は大いに沸いた。盛大な拍手に包まれる中で、「サイダーバー」チームは興奮と戸惑いの表情で壇上にあがったものの、トロフィーを受け取り喜びの声を表してからは先鋭の技術者らしい表情に戻り、本作のコンセプトやビジョンを語った。

「サイダーバー」を手掛けた立命館大学 リーダー 立花京氏(写真左)、サブリーダー 立花舞氏(写真中央)と審査委員長の佐藤知正氏
「サイダーバー」を手掛けた立命館大学 リーダー 立花京氏(写真左)、サブリーダー 立花舞氏(写真中央)と審査委員長の佐藤知正氏
トロフィー
最優秀賞で贈呈されたトロフィーにはYuMiのデザインがあしらわれている

デザインと技術を兼ね備えた作品が最優秀賞受賞

 「お酒もアイドルももう古い!時代は(安全規制的に)おさわりできるロボット!」をキャッチフレーズにする「サイダーバー」は、YuMiを使ってオリジナルのサイダーを提供するというもの。双腕であるYuMiの片方の腕でカップをピッキングして、もう一方の腕でサイダーにシロップをはじめ、マシュマロやフルーツ、フレーバーなどを入れ、さらにはフタやストローを付けるという精密な作業まで可能だ。

 当初は工場の中で使用できるものをベースにコンセプトを練っていたものの、それでは面白みがないと感じた「サイダーバー」チームは、「ロボットに興味がない人も注目してくれるように、SNS映えや女子高生のトレンドを意識しました」と開発の経緯を話した。表には「サイダーバー」の装飾以外はYuMiとカメラしか見えないようにしたり、カメラの台数も減らしたりと、デザインにおいてさまざまな工夫が凝らされている。設計、デザイン、プログラミングとチーム内で役割を分担して制作したという点も注目すべき点だ。

 難しかったのは、「感覚統合制御」という、キャリブレーションやティーチングを使用しなくても高精度なロボット制御ができるという独自開発のアルゴリズムを、YuMiのAPIと繋ぐことだったという。他方でYuMiの大きな動きを作る際には「ダイレクトティーチングができるのはだいぶ楽でした。私たちがこれまで携わってきた産業用ロボットであまりなかったので、すごく作りやすかったです」と振り返る。

サイダーバーの展示
「サイダーバー」は東京ビッグサイトで行われた「2017国際ロボット展」のABBブース正面に展示された

 審査委員長を務めた佐藤氏は「ABB YuMi Cup 2017」を以下のように総評する。「コンテストにおいて非常に大切なのは衆目と衆知です。衆目という点では『サイダーバー』はデザインとしても美しく、動きも魅力的。もちろん見た目だけでなく、マニピュレーション技術の権威である立命館大学の川村晃久氏が指導されている研究室というのもあり、ビジュアルフィードバックなど優れた技術で実現されています。また衆知という点では、150組という数の、多種多様なアイデアが集まりました。多くの人がかかわるということは数々のトライアルが行われたということであり、将来製品化を期待できるようなアイデアが出やすくなるということです。アイデアコンテストへの参加者たちが、ロボットの実用化や学術的進歩に貢献する一人として活躍してほしいです」

 企業の支援と、技術者たちのアイデアが融合することの可能性を示した本コンテスト。ファイナリストの3組はABBドイツおよびスウェーデンの開発センターへの研修旅行を、最優秀賞にはYuMi実機1台がさらに1年間無償で貸与されるという大盤振る舞いは、未来を拓くという意義ゆえだという。海外で先進技術を生で見て、産業の第一線で活用されるロボットを手にした若き技術者たちが、想像を超えたイノベーションを打ち立ててくることは必至だ。彼らやABBの今後の動向、そして次なるコンテスト開催に期待したい。