モノづくりを「薄く」「軽く」「便利に」意外と身近な「薄膜技術」の素顔に迫る

時代の変化に巧みに対応しディスプレイ産業とともに発展するジオマテック

薄膜技術はスマートフォンのディスプレイやタッチパネル、意匠性を向上させる加飾、 監視カメラの曇り防止や太陽電池部材、車載部品など、身近な製品の意外な部分に使われている。
ジオマテックは、時代とともに変わるユーザーニーズにこたえながら、さまざまな技術を磨いてきた。

スマートフォンのタッチパネルや光学系の部品にも応用

ジオマテック株式会社
代表取締役社長兼CEO
松﨑 建太郎

スマートフォンやタブレット端末は、私たちの生活のなかで最も身近な電子機器といえるだろう。このスマートフォンやタブレットを操作するタッチパネルの多くに、ジオマテックの薄膜技術が使われている。なかでも多く使用されているのは、指がディスプレイの表面に触れると静電容量が変化するのを検知して機能する「静電容量式」と呼ばれるタイプのタッチパネルだ。

現在のスマートフォンで広く採用されているIPS方式の液晶ディスプレイでは、表示に影響する帯電を防止するため、表面にITO膜というインジウムとスズの酸化物の導電薄膜を、帯電防止膜として形成している。以前のタッチパネルは、液晶とは別に作られて液晶パネルに貼り付けていたが、現在は液晶とタッチパネルを一体化したものが多く、この場合、帯電防止のためのITO膜が、タッチパネルの一部としても機能する。 つまりITO膜は製造上も、機能上も液晶パネルの重要な要素であり、このITO膜がジオマテックの主力商品だ。「これだけITO膜を掘り下げている企業はあまりないと思います」とジオマテック社長の松﨑建太郎氏は語る。

ジオマテックのあゆみ

自動車用ミラーから出発

ジオマテックは1953年に創業し、光学部品の製造と販売から事業を始めた。
創業当初は、カメラ向けを中心にアルミ反射鏡やレンズへの反射防止膜を主力製品とし、戦闘機や自動車のミラー、アルミニウムや銀を蒸着材料に使用したカメラのペンタプリズムや大型凸面積なども手掛けた。

1971年に、当時の通産省工業技術院大阪工業技術試験所からITO透明導電膜の製造技術について国有特許の実施権を取得し、液晶黎明(れいめい)期の電卓やワードプロセッサーから、現在のスマートフォンやタブレット向け液晶に至るまで、ITO膜の技術で貢献してきた。

ITO時代の
「膜」開けとともに成長

設立当時の主な取引先は光学機器メーカーだったが、1964年に、SnO2(酸化スズ)膜やITO(酸化インジウム・スズ)膜の薄膜技術を確立させてから、電気機器メーカーとの取引が始まった。1975年に液晶時計が発売されると、ITO膜を透明電極に使った液晶電卓やワードプロセッサーなどの液晶関連製品向けの取引が飛躍的に増大した。

技術力を高く評価され
科学技術庁長官賞受賞

1975年以降、電気機器メーカーが競って液晶応用製品を発売したのに伴い、ジオマテックもITO膜の薄膜メーカーとして安定した品質とコスト低減を評価され、1981年10月に第1回科学技術庁長官賞を受賞した。

中国に生産拠点を設立、
海外進出へ

取引先である液晶関連メーカーや光学機器メーカーが相次いで中国進出し、ジオマテックにも進出の要請が寄せられたことから、2002年に中国・無錫市の工業団地に100%子会社「吉奥馬科技(無錫)有限公司」を設立。

タッチパネルへの応用

ジオマテックはタッチパネルの主な方式である抵抗膜式タッチパネルと静電容量式タッチパネルの両方式に対応したITO膜を生産しており、携帯電話やスマートフォンなどのタッチパネルを搭載した携帯端末向けに、なくてはならない技術を供給し続けている。

幅広いニーズに対応できるのが強み 量産にも試作にも対応

ジオマテックの強みの一つとして、どんなユーザーのニーズにもこたえようとする姿勢がある。「お客様からの要望に対してできませんという返事は、まずしない」と松﨑氏は言う。

「新しい仕事のための投資であれば億単位でも躊躇しない」(同氏)。中国の無錫に進出したのも、ユーザーの要望があったからだ。また「薄膜技術」や「材料」のお客様との共同開発は常に数十件かかえ、新規技術の開発に取り組んでいる。

他にも保有する技術の多様性も強みだ。小型から大型まで薄膜装置を100台以上保有しており、最大1800×1500mmまで、さまざまな基板サイズに対応できる。

生産量についても「1枚からでも、もちろんお引き受けします」(同氏)と柔軟で、試作から量産まで、幅広い要望にこたえる。さらには、基板の切断や研磨、ラミネート、エッチングなど、薄膜形成の前後に必要な加工にも積極的に対応している。

今後は、液晶や光学分野で培った技術力を、より広い分野に応用していくことをジオマテックは目指しており「現在はまだ十分に取り込めていないため、自動車、医療、産業機器、半導体など、これまで電子機器や光学機器で培ってきた技術力を生かしたい」と松﨑氏は語る。

薄膜の多様な機能がさまざまな製品を支える

ジオマテックの薄膜製品はさまざまな市場で採用されている。同社の主力製品であるITO膜は、酸化インジウムと酸化スズの無機化合物で、透明でありながら電気を通すという性質を持っているのが特徴だ。

現在、スマートフォンやタブレットで使われている静電容量式タッチパネルは、X方向の位置を検知する電極と、Y方向の位置を検知するITO透明電極が交差して形成されており、指が近づくと、指と電極の間で一種の静電容量(コンデンサー)が形成されて変化。この変化を検知して指の位置を検出できるという仕組みだ。

また、金属や誘電体の薄膜を使って特定の波長の光だけを通したり、反射したりするミラーやプリズムも作ることが可能に。こうした薄膜は、プロジェクターやコピー機などの光学部品に使われている。さらに、薄膜技術で形成した金属膜は表面の平滑性が高く、反射率に優れることから望遠鏡などに使用されているという。

他にも変わった使い方としては、監視カメラの保護カバー表面にITO膜を形成した「薄膜ヒーター」がある。これは、ITO膜に電気を流すと抵抗で発熱することを利用して、雪や雨の付着や曇りを防止するもので、天候にかかわらず、クリアな映像を守ってくれるのだ。

最終商品別構成比

スマートフォン29%、タブレット・PC23%、カーナビゲーション11%、デジタルカメラ6%、車載6%、FPD(その他)7%、光学機器部品4%、その他14%

品目別構成比

帯電防止37%、タッチパネル(静電容量)19%、タッチパネル(抵抗式)9%、FPD(その他)6%、その他(AR)6%、その他(光学部品)4%、その他19%

スマートフォンやカーナビの機能を進化させるFPD用基板

タッチパネル用のITO膜

タッチパネル用のITO膜

スマートフォンやタブレットPC、カーナビゲーション、携帯音楽プレーヤーなどに使用されるさまざまなタイプのタッチパネルに使われるITO膜を製造

電極用の薄膜

電極用の薄膜

さまざまな種類と構成の金属膜を作製。たとえばスマートフォンの額縁部分の「電極エリア」の極細配線などに利用されている

エンジン系、電池系、インテリアへと広がる自動車部品

自動車用の製品

自動車用の製品

自動車には、熱線反射、曇り止め、装飾、着雪防止、視認性の向上などのためにITO以外も含む薄膜が使用されている

加飾膜や天体望遠鏡などの光をコントロールする光学機器用部品

天体望遠鏡

天体望遠鏡

天体望遠鏡に使用されるミラーには、高い反射率とゆがみがないことが要求されるため、薄膜技術で作製した精密なAl表面反射鏡によって、高精度な光学系の実現に貢献している

あらゆるものづくりへ、その付加価値を高めるその他真空薄膜製品

薄膜ヒーター

薄膜ヒーター

屋外に設置された監視カメラで、着雪や着氷、結露を防止するために、保護カバーを加熱することを目的としたITO膜が利用されている

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