世の中の変化に対応する
ジオマテックの薄膜と加工技術

多様な機能を実現する「真空薄膜技術」その特徴と機能価値を知る

 Vol.1では、薄膜技術の特徴やその応用製品について、その概要を紹介してきた。
Vol.2となる今回は、ジオマテックの強みと、今後どのような分野にその応用を広げていこうとしているのか、 そして薄膜形成の技術にはどのような種類があり、それぞれのメリットや使い分けについて、その詳細を見ていく。

「過去の延長に未来はない」創業以来の伝統である進取の気性で成長

松﨑建太郎 氏

ジオマテックは創業当初から真空成膜技術という真空プロセスを活用した薄膜形成に特化した企業で、今年65周年を迎える。「創業者で私の祖父である松﨑勇は、若い頃にランプメーカーに勤務していた時に真空成膜に出会い、将来さまざまな分野で活躍するのではと考え、薄膜加工の専業メーカーとして独立しました」とジオマテック社長の松﨑建太郎氏は話す。

創業当初はカメラ向けを中心としたアルミ反射鏡やレンズへの反射防止膜が主力の加工製品だったという。鏡面サングラスが流行した時は、クロムを蒸着法による真空成膜を活用して多くの受注を得た。その後、自動車のミラーやカメラのペンタプリズム、大型凸面鏡などの薄膜形成が、ジオマテックが薄膜メーカーとしての土台を築く基盤となった。そして、現在のコア技術である透明導電膜の形成技術によって電卓やワープロ向け液晶、白黒液晶からカラー液晶、現在のスマートフォンやタブレット向け液晶に携わる薄膜メーカーへと成長を続けてきた。

しかし、時代は再び変革期に入ったと松﨑氏は考えている。今後、ジオマテックはどのような新分野に挑戦しようとしているのだろうか? 「長年、液晶業界に対する薄膜の提供において、高品質な液晶の安定供給やタッチパネルの開発に貢献できたと自負しています。ですが、我々は薄膜・加工の可能性はむしろ広がりを見せていると考えています」(松﨑氏)。

「分野別で言えば、まず自動車です。自動運転技術が進むにつれ、ウィンドウやミラーが進化し、ディスプレイやセンサーも多く用いられるようになっており、こうした分野に薄膜を応用できる可能性があると考えています。また、車内外の装飾にも、薄膜が活かせます。コストや耐久性で課題はありますが、自動車産業には薄膜にとって多くのビジネスチャンスがあると確信しています」(同氏)。自動車産業のみならずジオマテックの技術は医療機器や電子部品、分析機器やインフラ・FA向けのセンサーに展開できます。また、建築や農業など、大きな基板への加工を求められそうな分野にも薄膜技術の応用は活かされると松﨑氏は描いているという。

もっとも、薄膜だけ、国内だけでは一企業としての広がりや深みに限界がある。今後は川上や川下の技術への理解を深め、他の加工業者と協力する機会を増やす一方で、海外にも視野を広げて薄膜・加工の可能性を追求する。「これから加速度的にITと製造業の融合が進んでいくでしょう。我々は自らあらゆるモノづくりにおける技術やその現場に飛び込み、そこで何が起きているかを知る必要があります。まずはジオマテックという企業を知っていただき、我々もお客様との出会いを大切に、技術力やサプライチェーンの対応力に磨きをかけ、薄膜・加工におけるプロフェッショナルとしてさらに高みを目指していきたいと思います」(同氏)。

製品写真いろいろ

さまざまな要求に柔軟に応えられるのが強み

ジオマテックの主力商品はITO膜を中心とする薄膜だが、フィルムや、光学系の部品へのコーティングなど、特定の分野では大手の企業が既に高いシェアを持っている場合も少なくない。ところが、ちょっと材料が変わったり、基板の大きさが変わったり、あるいは前後の工程と組み合わせたりというように「少し条件が変わっただけで対応できなくなってしまう企業は意外と多いんです」と松﨑氏は言う。

これに対してジオマテックは、さまざまな種類の薄膜装置をそろえ、大面積の基板から小面積の基板まで幅広く対応できるほか、薄膜を形成する材料の変化に対しても柔軟にこたえられるのが強みだ。「最近では海外の企業もこうした薄膜分野に参入していますが、“変化への対応”では、まだ海外企業に対して優位性があると考えています」(同氏)。

また、ジオマテックが力を入れているのが、前後のプロセスの取り込みだ。例えば、薄膜のパターン形成やラミネート、転写技術など、薄膜+αの加工プロセスに積極的に取り組んでいる。加工が別の企業だと、一度基板を梱包して搬送といった煩雑な作業が必要になり、コストも上昇するし、ホコリなどが付いて品質が低下する懸念もあるため、クライアントにとってもメリットの大きい取り組みだといえるだろう。

液晶のITO、光学制御で培った光学(誘電体)薄膜
他にも多彩な機能薄膜がジオマテックにはある

真空プロセスで形成する薄膜は「鮮やかな色」と「機能」を実現
加飾膜

加飾膜の技術はジオマテックが培ってきた「光学薄膜」の応用で、プロジェクター(エンジン)でも活用されている技術だ。その技術を紹介していく。

塗装では出せない鮮やかな色

金属や金属酸化物などの薄膜を多層形成することで、塗装では出せなかった絶妙なメタリック調を表現できるため、高級感あふれる装飾が可能に。

腕時計 写真

写真提供 カシオ計算機(株)様

カシオ計算機で使用されている時計では、透過色と反射色が違うため、角度によって色が変わるようになっている。ナノオーダーの薄膜を重ねることででき上がる色彩は塗装とは異なるのだ

角度によって色が変化

ジオマテックの加飾膜は、角度を変えることで変化する色味を楽しむことができる。

環境に優しい

真空ドライプロセスを用いて薄膜形成することで、塗装の有機溶剤によるVOC/環境負荷物質がない。

色だけじゃない

加飾膜には「金属」そのものを使う製品もある。主に銀メッキ代替などに使われるが、金属色を持ちながら電気を通さない薄膜もジオマテックでは製造できる。これらはミリ波などを透過し、車載向けなどに適応される薄膜となっている。

高付加価値・高機能化

加飾膜に親水膜や撥水膜など、他の機能膜を付加し、高付加価値・高機能化も可能だ。

ジオマテックが得意とする透明導電膜
面全体で温める視認性の高いヒーター
											透明ヒーター

線ではなく面で加熱

ジオマテックの透明ヒーターは、透明導電膜を活用したヒーターとなっている。透明電極はヒーター面にナノオーダーで形成され、透明性が高く、全面で温めるのが特徴だ。

雪の乗った窓ガラスで発熱面と非発熱面の比較。解氷開始から9分後、発熱面の雪は大方溶け、窓の向こう側が見えるようになった。

写真提供 JR北海道様
写真は融雪の様子を観察した写真。視認性が良く安全性に貢献できる技術といえる

厳しい環境でも安全を守るために

安全性を確保するためには、いつでも視認性が良い状態が求められる。雪はもちろんとして、結露などで曇ってしまっては「監視」することはできない。人々の安全を守るため、意外な所でジオマテックの技術は使われているのだ。

雪の高速道路脇に設置された監視カメラ

写真提供 ネクスコ・エンジニアリング北海道様

ネクスコ・エンジニアリング北海道とドーム型カメラを共同開発。透明ヒーター技術を活用し、高速道路の安全を見守る。ドーム内に設置されたカメラが「着雪」や「結露などの曇り」により監視ができないことのないように透明ヒーターが視認性を高めてくれる。ジオマテックの技術はこんなところでも使われているのだ

ジオマテックは真空薄膜加工の専門メーカー
形成だけではなく部分的に剥がす(パターン化)も得意
薄膜形成~パターンまで一貫生産

塗装では出せない鮮やかな色

ジオマテックは薄膜形成メーカーであるが、顧客の要望に合わせパターン加工にも対応している。基板材料はガラス、金属、プラスチック(シート、フィルム)など、幅広く対応。パターンできる薄膜の種類も多く、薄膜形成が得意なジオマテックだからこそ提案できる技術である。

1円玉とのサイズ比較

ポリイミド上に薄膜の熱電対を形成。薄膜形成からパターン加工まで一貫生産しているのでカスタム対応も得意なのだ

薄膜のパターン形成(SEM像)

一般的に難しいとされる金属などもパターン形成ができ、薄膜専業メーカーならではの技術となっている。右はPETフィルム上に形成した5μmの金属膜のパターンで、基板材料も多くの材料に対応している。異形品にもトライアルしているため、興味のある方はホームページを閲覧してみては。http://www.geomatec.co.jp/

くし形に形成された薄膜画像

金属の特徴や機能をそのままに
電気的・光学的(反射・透過)・接着性などいろんな機能満載
金属膜

金属は機能の宝庫

ジオマテックは真空薄膜専業メーカーとして65年の実績がある。例えば「反射」という一つの機能をとっても、可視域反射にはAlやAgがある。赤外域では、Auや金属酸化物など、顧客の要望に合わせ提供・提案できるのも魅力だ。他にも、低抵抗な金属薄膜が必要であればAuやAg、コストを考えたCuなども提供できる。また、耐久性や二次加工性を向上させた合金薄膜も提案可能だ。金属材料の物性や特徴を活かした薄膜が活躍する場面は多岐にわたり、あらゆる産業で活用できるはず。

金属フィルターサンプル画像

「減衰膜」は、同一基板内で連続的に、あるいは多段階的に透過率をコントロールする機能を持たせた膜となっており、測定機器の光量調整や照明などに使用され、減衰膜をドーナツ(円形穴あき)基板の円周上に形成したものや、長方形基板に形成したものなどがある。

天体望遠鏡

天体望遠鏡の主鏡や副鏡に使われる反射膜にもジオマテックの薄膜技術が活用されている。反射率が高い状態で耐久性を高める設計も可能で、個人向けのリペアにも対応してくれる。

天体望遠鏡

プラズマを活用した表面処理技術と薄膜で
形成する真逆の「機能」
親水膜・撥水膜

親水膜と撥水膜

ジオマテックの表面加工技術と薄膜技術を活用すれば、「親水」や「撥水」などの機能形成もできる。電気的な機能形成のイメージが強いジオマテックだが、いろいろな薄膜形成が可能な技術だからこそ多種多様な機能形成ができ、顧客に提案することができる。

超親水コートありは水滴が面に貼りつくように薄く広がり、
							超撥水コートありは水滴が玉のように乗る

ジオマテックは親水と撥水という真逆の機能を持つ膜を開発。
写真左は「親水膜」(接触角10°以下)、写真右が「撥水膜」(接触角147°)

親水膜は「防曇」や「汚れ防止」の機能も

親水膜を基板表面に形成すると何が起きるのか? もっとも分かりやすい現象は「曇り防止」だ。曇りは目に見えないくらい小さな水玉が基板表面に付着して光を乱反射することで起きる現象のため、親水膜により水玉が基板表面に濡れ広がることにより曇りを抑えることができるのだ。
この水が表面に濡れ広がる性質は、他にも「汚れ防止」という重要な機能を付与することができる。プラスチック基板に油性マジックで文字を書いても水に浸すことでマジックが浮いてくる。これはマジックのインクと基板の間に水が入り込みインクを浮かせることによるものだ。

撥水膜は水を弾く。それだけ?

撥水膜は水を弾くが、親水膜のような他の機能はないのだろうか? ジオマテックに聞くと撥水膜にも「水を弾く」以外の機能がたくさんあるとのこと。気になることがあれば、是非、問い合わせいただきたい。http://www.geomatec.co.jp/

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