世の中の変化に対応する
ジオマテックの薄膜と加工技術

ジオマテックの特殊形状への薄膜形成
					いろいろな形状のモノに新たな価値をコーティング

平らな基板上だけだと思われていた薄膜形成。それを高度な技術によって、パイプやワイヤーといった特殊形状のモノでも可能にしたのがジオマテックだ。ありふれた部材や道具でも、表面に新たな機能を付加することで、その価値は大きく高まる。

機能性薄膜を表面に形成することでモノの価値はガラリと変わる

菅原浩幸 氏
ジオマテック株式会社
取締役 執行役員 兼 CTO
菅原 浩幸

ありふれた部材や道具であっても、その表面に機能を持った薄膜を形成すれば、その価値を高めたり、新たな価値を生み出したりすることができる。例えば、ガラス板の上に、厚さがナノオーダーの透明導電膜を形成することで、私たちの生活に欠かせないスマートフォンのタッチパネルができている。また、形成するモノをアルミニウムの薄膜に変えれば、宇宙の成り立ちを探究する天体望遠鏡の反射鏡にもなるのだ。

電気を通すモノ、光を反射するモノ、耐久性が向上するモノ、発熱するモノ、特定の化学物質を吸着するモノ……。この世界には、豊かな生活や仕事、社会の高度化に役立つ機能を備えた多種多様な材料がある。「薄膜形成技術は、それぞれの材料固有の機能を別のモノの上に付与することで、現代社会を支える重要な技術となっています」とジオマテック株式会社 取締役 執行役員 兼 CTOの菅原浩幸氏は語る。

特殊形状への真空薄膜形成を可能に

お鍋の湯気のように膜を作る真空蒸着法 成膜物質を熱して						蒸気を発生させ、その蒸気を基盤に蒸着させる。

かつては「平らな基板以外の特殊形状のモノへの薄膜形成は難しい」というのが常識だった。蒸着法やスパッタリング法など機能性薄膜の形成技術は、真空中で形成条件を精密制御しながら行うという、極めて高度なプロセスが求められる。薄膜となる材料は、高速で直進する原子や分子として運ばれる。このため、薄膜形成対象の基板が平らでないと、高品質な機能性薄膜の均一形成は困難であった。

ジオマテックもFPD向け製品に注力していたこともあり、平らな材料への加工が多いという。しかし、平らな基板だけを対象にしていることが、高い潜在能力を秘めた機能性薄膜の応用を狭くしているのではないだろうか。世の中には、むしろ曲面の方が多く、そこにも新たな価値を付け加えていくことが求められているはずだ。

ジオマテックは、真空プロセスを活用した薄膜形成のプロフェッショナルを自任している。これまで、多様な基板の上にさまざまな材料の薄膜を形成してきた。ただし、その多くは表面が平らな基板を対象にしたモノだった。「世の中にあるモノの形状には、それ自体に意味があります。平らな基板を対象にしてきた機能性薄膜の形成による新たな価値の付与を、あらゆる形状のモノに展開できれば、世界が変わると考えています」(同氏)。

“あらゆる表面に機能性薄膜を”の実現に向けて、ジオマテックは着実に技術と知見を蓄積している。

パイプの外側にも内側にも機能性薄膜の形成が可能になった

ありふれたパイプが機能を持つ部材に

円筒の内側にも薄膜形成したもの 画像

ジオマテックは、平らな基板以外の特殊形状のモノの表面に薄膜を形成する技術への取り組みとして、パイプへの薄膜形成技術の確立に成功した。

パイプは、気体や液体、固体を運ぶための通り道として、世の中のさまざまな場所・目的で、当たり前のように使われている部材である。その利用分野は、自動車や家電製品など身近な機器から、工場設備やガス・水道など社会インフラや産業プラントまで極めて広い。そうした生活や社会活動に欠かせない存在であるパイプに、機能性薄膜の形成によって新たな価値が付与されれば、そのインパクトは計り知れない。

外側だけでなく内側にも薄膜形成

パイプを対象にしたジオマテックの薄膜形成技術で特筆できる点は、外側だけではなく、内側にも機能性薄膜を形成できることだ。

「パイプの外側表面に関しては、それほど難しくありません」と菅原氏は言うが、それは薄膜の形成対象となるパイプを回転させて薄膜形成の条件を一定に保つことで、外側表面に高品質な薄膜を均一に形成できる技術をジオマテックが実現したためだ。ローストチキンを回しながら均一に焼くのと同じ方法である。ただし、“どのように回転させるか”には相応のノウハウが求められるが、ジオマテックは自社製回転装置を独自開発することでそれを可能にした。

厚さ約10μmの極薄フレキシブルな熱電対

円筒断面図 外形φ180mm~、内径φ4mm~。薄膜:金属膜。基材:ガラスorセラミックス、金属パイプなど

一方、パイプの内側に高品質な薄膜を均一形成することは極めて難しい。パイプ内側の奥まで、薄膜材料の原子や分子を行き渡らせる必要があるが、薄膜材料の原子や分子は、パイプの入り口からしか飛ばすことができないからだ。そこでジオマテックは、薄膜を形成する条件を徹底的に研究し、均一に形成できる技術を確立。既に、内径4mm以上、外径180mm以下の長さ1500mmまでのパイプの内側に、機能性薄膜を形成できるまでに到達した。

「内径15mmならば、長さ2000mmのパイプにも形成できます。SUS管や塩ビ管では、4mの長さが標準規格になっており、こうした規格にも挑戦したいと考えています」と菅原氏は展望する。

気体・液体・固体を運ぶ既存のパイプに+αの価値ある機能を付与する

対応する基材と薄膜物質は多種多様

一般に、メッキ法などに比べ、真空薄膜形成技術の方が扱うことのできる物質が多い。ジオマテックのパイプへの薄膜形成技術においても、対応可能な基材や機能性薄膜となる材料が幅広く、応用範囲が広い薄膜形成技術に固有の特徴を維持している。

対応する基材は、ガラス、セラミックス、金属パイプ、樹脂パイプなど多様であり、お客様のニーズに即した技術開発も進めている。また、技術開発を始めた当初は金属しか薄膜形成できなかったが、現在ではリアクティブ(反応性)スパッタを用いて化学反応させながら形成することで、酸化膜や窒化膜も形成できるようになった。

光への応用 光の伝搬機能を加える

パイプの内部を光が反射し続けて進むことで光が伝搬する

パイプの内部に反射膜を形成することで、光の伝搬を促進することができる。

つまり、金属膜の種類を選択すれば、狙った波長の光を高効率で伝搬するパイプを実現できるようになるのだ。ジオマテックは、天体望遠鏡の反射膜形成で求められる厳しいニーズにも応える高度な技術を保有し、なおかつ形成した薄膜の光学的特性の評価と作り込みにも豊富な経験を持っている。そのため、用途に応じた光の伝搬特性を持つパイプの提供が可能だ。

電気への応用 電気の伝導機能を加える

パイプの内部に金属薄膜を形成すれば、電極膜として利用できるようになる。その上、耐久性などを考慮して形成する金属材料を自由に選択することも可能だ。パイプの内面に金属配線を設置することは以前から求められてきたことだという。また、液体や気体などさまざまな物質の状態で活用できそうであり、つまり、アイデア次第で発展的な活用が見込めるはずとニーズを収集している最中だそうだ。

熱への応用 ヒーターによる加温機能

液体を流しながら加温することも

導電性物質をパイプの内側に形成することで、ヒーターの機能を付加することが可能に。例えば、液体を流しながらパイプのなかで加温するといった可能性が広がる。一般的に使用するジャケットヒーター設置とはことなり、液体近傍を温めることから熱伝達性が良く「加温時間を短くできる」期待が持てる。

フィルターへの応用 フィルターや触媒の機能を追加

金属材料のなかには、特定の原子だけを通す特性や触媒の機能を備えたモノがある

金属材料のなかには、特定の原子だけを通す特性や触媒の機能を備えたモノがある。

目的に応じた金属材料をパイプの内部に形成すれば、フィルターや触媒の機能を付加できるのだ。例えば、燃料電池自動車の実現には、高純度の水素を供給する水素ステーションの設置が欠かせない。そこで使用できるような、水素だけを透過させる透過膜をパイプ内に形成可能だ。

汚れ防止への応用 汚れ防止機能を付与

他にも、超撥水性を持つ物質をパイプの内部に形成すれば、汚れ付着防止膜として機能させることができる。例えば、欧州の水道は水質が硬水であるため、使っているうちに水道管の内部に炭酸カルシウムなどのミネラル分が付着して水が流れなくなってしまうことも。そこで、汚れ付着防止膜を形成しておくことで、こうした付着物が一切付かなくなる。

SUSパイプ 汚れ防止機能なし ザラザラしている

SUSパイプ 汚れ防止機能なし

SUSパイプ 汚れ防止機能あり ツルツルピカピカ、光が反射している

SUSパイプ 汚れ防止機能あり

自社で薄膜形成した「汚れ防止機能付き」パイプに汚れが付かないか実験。今も実験は続いている
【実験方法】
工場排水(流速:8L/min)、30日間経過後のスケール付着確認

ワイヤーや繊維、チューブ、半球にも対応 対象物を寸断しない連続での形成も可能に

長いワイヤーなどの表面に連続形成

ジオマテックは、パイプ以外にも、極めて長いワイヤーや繊維、チューブの表面などさまざまな特殊形状品の表面に機能性薄膜を形成する技術を持っている。

ワイヤーや繊維、チューブも、長さを短く寸断すれば、パイプを対象にした技術と同様の手法で薄膜を形成できる。しかし、ワイヤーなどは長い状態のまま薄膜を形成し、後から必要な長さに切った方が生産コストを低減できる場合も多い。

そこでジオマテックでは、リールに巻いた長いワイヤーなどを、別のリールで端から巻き取りながら連続的に真空中で薄膜形成する「Roll to Roll」という技術を確立。これまでにも、巻き取った長いフィルム上に薄膜形成し、スマートフォン向け静電容量型タッチパネルを量産した実績があった。それと同様の技術を応用して「Roll to Roll」の連続形成することに成功したのだ。

Reel to reel  イメージ図

薄膜形成したワイヤーの写真。 形成する薄膜の物質を変えることで「硬い」「柔らかい」「滑る」「耐久性」「色」などの様々な機能性を持たせることができる

「既に、いろいろな用途で使えるように『Roll to Roll』で連続形成する試作も進めています。最終的には医療をはじめとしたさまざまな分野で使えるような高機能材料を作り出したい。ただ高機能なだけでは市場は受け入れてくれないが、短く寸断した後に1本1本形成するよりもこの技術は低コスト化できるはずです」(同氏)。

また、繊維の上に導電性の金属を形成してウエアラブルなセンサーを作ったり、魚の養殖用の網に汚れ付着防止機能を付加してフジツボや海藻の付着を防いだりといった用途もアイデアとして挙がっている。

半球状の透明ドーム上にも薄膜形成

透明ドームイメージ 防犯カメラ

他にも半球状のモノの表面に機能性薄膜を形成する技術も持っているジオマテック。屋外に置く監視カメラは、ドーム型の透明な保護部材の防汚性を備えていることが多い。この保護部材の表面に超親水膜を形成することで、霧、降雨、温度変化などにさらされても、いつもクリアな視界を確保できる防曇性を加えることができるのだ。また、ITOの薄膜で透明なヒーターを形成すれば、雪を溶かすこともできる。Vol.2参照

あらゆるモノの表面に機能性薄膜を付加してイノベーション創出

薄膜形成技術の提供を通じて数々のイノベーションを支えてきたジオマテックは、今、特殊形状を対象にした薄膜形成技術によって新たなイノベーション創出を後押ししている。ありふれたモノの表面に新たな機能を付け加え、より価値の高い製品を作り出すアイデアと、ジオマテックの力を活用することで製品化までの道のりがグンと短くなることだろう。

機能性を付与させたいモノがあれば、是非、お問い合せいただきたい。http://www.geomatec.co.jp/

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