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日経テクノロジーONLINE SPECIAL
特別対談:2030年に製造業革新は全領域へ

最先端のITを活用して製造業革新を進める機運が世界全体で高まっている。その動向や、革新を製造業全体の競争力向上につなげるうえでの課題などについて、「Industrie 4.0(インダストリー4.0)」を巡る欧州の動向に詳しいベッコフオートメーション代表取締役社長 川野俊充氏と、トヨタ自動車の生産ライン構築に携わってきたノウハウをベースにしたIoTソリューション「IoE」を展開するジェイテクトの取締役副社長を務める井坂雅一氏が議論した。

井坂 雅一
ジェイテクト
取締役副社長
川野 俊充
ベッコフオートメーション
代表取締役社長

井坂:最近では、IoT(Internet of Things)など新しい概念に基づく仕組みをものづくりの現場に導入する動きが活発化しています。ただし、いまのところ大企業が中心です。日本の製造業において企業数、従業員数ともに圧倒的な大多数を占める中堅/中小企業の取り組みはまだこれからだと見ています。製造業革新の先鞭をつけたドイツの産業界では、どのような状況なのでしょうか。

川野:日本もドイツも目指している改革の方向にそれほど違いはないと思いますが、同じ山を違う道から登っているように見えます。

 欧州は地続きの国が多いので、移民の労働者が少なくありません。その場合、スキルが均一な労働力を確保するのが難しくなります。このため誰が作業しても同じレベルの製品ができるシステムを、ITで実現しようという考えが強いのではないでしょうか。

 日本の労働者は、スキルのバラつきの幅が比較的小さく、しかも全体に技能が高い。このため、ITを導入しなくても、たいていの問題は現場で解決できます。日本のものづくりの現場でITの導入が進まないと言われている理由は、ここにあるのではないかと思っています。

井坂:確かにそうですね。しかし、いまや日本のものづくりの現場でも、ITが必要になってきたと感じています。例えば、高齢化が進む一方で若い人材が確保できないという現場が増えてきました。このままでは、ベテランの技能を維持・継承することができません。この問題を解決するには機械化やIT化によって、暗黙知の形式知化などを進めるべきです。もっとも、現場へのITの導入がなかなか進まないと言われている日本の製造業が、この段階に至るにはもう少し時間がかかるのではないでしょうか。

IoT導入で現場の人が成長

川野:IoTのような新しいテクノロジーの導入には慎重な経営者が多い一方で、いまのところ数は決して多くはありませんが「前のめり」の経営者もいらっしゃいます。こうした経営者の皆さんがどんどんと実績を作ってくだされば、それを見て追従する企業が出てくるのではないかと期待しています。

 IoTには様々な取り組みがありますが、本質的には従来のカイゼン活動となんら変わらないものが多いというのが私の考えです。つまり、これまでの取り組みの延長にあります。従来と違うのは、デジタル・ツールが進化したことで、いままでやってきたことがもっと短期間でできたり、より効果的な取り組みができるようになったりすることです。

井坂:「前のめり」になれない経営者の皆さんの多くは、IoTに関する投資の費用対効果を懸念しているのではないでしょうか。これはもっともなことです。実際、ジェイテクトが展開する「IoE」を導入した企業でも、最初はあまり乗り気ではなかった経営者が多かったと思います。

 ところが、こうした経営者の皆さんが、実際にIoEシステムが稼働し、現場から様々な情報が上がってくるようになると様子が変わりました。工場内のあの情報も見たい、機械のこの情報も見たいと、どんどんと積極的になるのです。こうした経験から、IoEに興味があるものの、なかなか積極的になれないというお客様に、「まずは一歩を踏み出してみませんか」と話しています。

川野:ドイツにあるベッコフオートメーションの本社工場も同じです。状況に応じて対応する人間ならではの柔軟性を重視する本社社長の考えもあり、本社工場には人間が作業している工程が数多くあります。こうした現場の一つに生産ラインの様々な情報を表示するダッシュボードを掲げたところ、業務に関して新しい工夫を始める人が増えたそうです。

 デジタル・ツールを使って様々な情報が見えてくると、新しいことをやってみたくなるのでしょう。これは、先ほどのお話と同じです。まずは一歩を踏み出そうというマインドを持つことが大事だというのは同感です。

井坂氏