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自動車評論家フェルディナント・ヤマグチ氏、ついにトラクタも乗りこなす? クボタの新製品展示会へ潜入!
飯田 聡

クボタ 取締役専務執行役員・研究開発本部長。1980年 久保田鉄工(現クボタ)に入社。2003年 建設機械事業部長、04年 クボタヨーロッパS.A.S社長(フランス)、09年 クボタトラクターCorp.社長(アメリカ)などを経て、15年から専務執行役員を務める

フェルディナント・ヤマグチ

自動車評論家、コラムニスト。一般企業に勤める傍ら、自動車に関するコラムなどを執筆し人気を博す。現在では講演やテレビ・ラジオへも活動の幅を広げている。著書に『仕事がうまくいく7つの鉄則 マツダのクルマはなぜ売れる?』(日経BP社)など

■トラクタの自動運転
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リモコンのスイッチ一つでトラクタはコースへ向かう

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ターンの際はロータリーの上げ下げもきっちりこなす

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障害物(人形)を検知し、表示灯でアラートを出した後、安全に停止した

■田植機の自動運転
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耕うん後の圃場を真っすぐ走行しながら田植えを開始

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残された田んぼ幅から判断し、植える条の数を自動調整

■コンバインの自動運転
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リモコンで刈り取り開始。※作物がないため模擬実演

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収穫物が満杯になったところで作業をやめて移動

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収穫物の排出のために運搬車まで自動で離脱し、排出後ムダを省いた最適な位置から作業を再開

■ドローンの実演
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リモコン操作によって農薬の空中散布が自在に行える

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搭載能力は最大10kg。一度に最大1ha分の農薬散布が可能

最新の農機が勢ぞろいするというクボタの展示会が京都市で開催された。「乗り物のことなら」と白羽の矢が立ったのが、日経ビジネスオンラインの人気コラム『フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える』のフェルディナント・ヤマグチ氏(以下、フェル)。「これまでの人生で一度も農機に触れたことはございません」というフェルだが、準備真っただ中の前日に潜入。なんと、クボタ取締役専務執行役員・研究開発本部長 飯田聡氏が迎えてくれた。展示会場を見学後に、向かったのは寒風吹きすさぶ圃場(農作物を栽培する田畑)……。

道路を走るよりも難しい農機の自動運転

フェル:さ、寒い……。

飯田:今、私たち、かなりシュールな絵になっていませんか?

フェル:キリコの絵画よりシュールです。ところで飯田さん、ここで何が始まるんですか?

飯田:IoTを活用したクボタの農業ソリューションの例として、農機の自動運転のデモを行います。

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フェル:先ほどのお話の中でハッと気付かされましたが、道路ではなく田畑を走るからといって自動運転は決して容易ではありません。この通り、道路のようにガイドとなる中央線や外側線もありませんし、舗装路と違い凸凹の悪路です。道路は道路幅の範囲内で安全に走行し続ければいいですが、農機は作業を実行するために真っすぐ正確に走らなければいけません。

飯田:そうなんです。そもそも熟練者であっても広い田畑で真っすぐ走るのは難しく、作業は大きな負担となります。

フェル:人間が運転する場合でも通常どれくらいの精度が求められるものなんですか?

飯田:許容できるのは数cmの誤差です。そうでないと、車輪で畝を破壊してしまったり、田畑の使い方に無駄が出て収量が落ちてしまいます。

フェル:普通に道を走るクルマは、少なくとも数十cmのバッファがあります。そう考えると、農機の自動運転に求められる正確性は桁違いですね。

飯田:そして、単に自動走行するだけではなく、耕うん、田植え、収穫などの農作業を田畑や周辺の状況を把握しながら行う必要があります。今回は、稲作での1年間の作業を再現して、春のトラクタでのロータリー耕うん、初夏の田植え、秋のコンバインによる刈り取りを実演します。まずトラクタで作製した走行経路が田植機、コンバインに共有され、それぞれの作業に最適な経路に計算し直し、最適な走行ルートで、しかも高精度に作業するという点にご注目ください。

IoT活用の農業ソリューションが見えてきた

■コンバイン(普通型100馬力クラス)、田植機、コンバインの実演(動画)

飯田:まず対象となる圃場の計測が必要ですが、これはトラクタで圃場の外周を1周するだけでOKです。外周のデータを基に圃場全体のマップが自動作成されます。

フェル:オペレーターがトラクタで1周して戻ってきましたが、もう降りてしまいました。リモコンを押して……おお、無人のトラクタが自動で向きを変えて耕うんの準備態勢に入りました。あ、始まりましたね。ロータリーが下りて真っすぐに耕うんされていきます。

飯田:圃場を4つのコースに分割するのが最適だと判断したようです。コース2から入り耕うんを終えると、ロータリーを上げてターンしコース4へ入ってまたロータリーを下げました。そしてコース3、コース1という走行ルートを選んでいます。

■自動運転農機(トラクタ)の実演

フェル:あー。本当に全コース真っすぐきれいに耕していきますね。まるで人が乗っているみたいにステアリングが小刻みに動き、進路を修正しています。どうやって位置を把握しているのですか?

飯田:高精度GPSです。常にGPSで数cmの位置を修正しながら走行しています。加えて、遠距離はレーザースキャナ、近距離は超音波ソナーで物体を検知しています。さらに前後左右計4つのカメラを搭載しています。走行ルートに障害物がある場合は安全に停止します。

フェル:人形に近づいたトラクタは、表示灯を点灯させました。それでも人形がどかないので、トラクタは停止しました。人形を取り除かれるのを待っている間も、刻々と変わる周囲の環境を一生懸命理解しようとしているようで、何か愛嬌(あいきょう)がありますね(笑)。

■自動運転農機(田植機)の実演

飯田:田植えの見どころは大きく2つ。1つは苗を植える条の数を圃場の広さに合わせて自動調整します。コース1~コース3では8条植えを行い、最後のコース4では8条では収まらないので半分の4条植えに変更しました。

フェル:おお、賢い! しかし、水田で田植えとなれば、水があって、ぬかるみだらけですし。その状況で直進するのは人間では大変ですね。

飯田:もう一つの見どころは、苗の補給時。苗がなくなると、あぜのところまで補給してもらいにやってきます。人間が圃場の中に入ることもなく苗の補給がスムーズにできます。

フェル:おお、健気!

■自動運転農機(コンバイン)の実演

飯田:コンバインは逆に収穫物がいっぱいになると、運搬車のところまで排出にやってきます。コンバインでの刈り取りの見どころは収穫物の排出を含めた走行ルートです。運搬車への排出を終えてコースに戻る際、それまで刈り取りをしていた場所に戻るとは限りません。他の場所から刈り取りを再開することも多く、その場合も全てを漏れなく刈り取ります。最も効率的に作業を遂行できるルートを選択するため、そのような動きになるのです。

フェル:いやー、クボタの自動運転、私の想像をはるかに超えていました。人間の作業を肩代わりしてくれるというレベルを超えて、人間よりも正確かつ効率的に作業を行える存在になっているとは驚きました。オートメーション化が進んだ最先端の工場のような世界が、農業でも実現されつつあるのですね。

■実演のより詳しい解説動画はこちら(動画)

飯田:自動運転農機の先駆けとして、直進時自動操舵(そうだ)機能付き農機「直進キープ機能付田植機」とオートステアリング(自動操舵)機能仕様の畑作用大型トラクタ「M7シリーズ」を2016年に発売しました。デモでご覧いただいた自動運転トラクタは、2018年の正式販売を目標に開発を進めています。まだ先のことですが、完全自動運転農機は将来的には人が乗る必要もなくなりますから、キャビンやシートはなくなるかもしれません。

フェル:無人の自動運転が可能になれば、人間は材料の補給や不測の事態などに対応するだけでよくなる。複数の作業を同時に行ったり、複数のトラクタを同時に操ることも可能になるから、省人化による生産コストの削減が実現できますね。無人の農機が走り、ドローンが飛び交う。こうなるともうSFの世界だなぁ。

データの見える化で農業経営をサポート

フェル:展示会では、クボタは農業と最先端のICTを組み合わせることに注力していると感じました。その目玉の一つ、「KSAS(クボタスマートアグリシステム)」について教えてください。

■IoTを活用した農業ソリューション

農業機械に最先端技術とICTを融合させたクラウドサービス。スマートフォンを使ってKSAS対応農機とも連携でき、より確かな農業経営をサポートする。農業経営の見える化で農作業の効率を上げ、生産性の向上をサポートする基本コース月々3500円~。KSAS対応機と連動し、品質・収量の向上と順調稼働をサポートする本格コース月々6500円~

飯田:「KSAS」はICTを活用して農業経営をデータで見える化するシステムで、大規模化する担い手の農業経営をサポートするべく2014年にサービス提供を開始しました。現在、約3600軒の農家で活用され、米の食味向上と収量増加、農作業の効率化で効果を上げています。

フェル:インターネットやモバイルデバイスを活用して、ICTと農機を連動させるといったことでしょうか。

飯田:はい。圃場、作業、農機、経営といった多様なデータを一元管理し、分かりやすく見える化できます。当社の強みは農機とシステムが連動していること。コンバインには「食味・収量センサ」を搭載しており、収穫と同時に収量を測定し、さらに米や小麦、大麦などのタンパク質と水分の含有率を計測することができます。

フェル:どの圃場で、どれくらい味のいいものが、どれくらいとれたかが分析・記録されるというわけですね。

飯田:そのデータを基に翌年の肥料の設定情報をKSAS対応農機に送り込むことで、指示通りの量の肥料をまくことができ、食味と収量のアップが期待できます。今後は測定できる畑作物、野菜の拡大、NTTとの連携協定締結による天候や収穫予測情報などを随時展開していきます。さらにはAIの活用も検討してまいります。

フェル:これまでいつ何をすればよいか、肥料はどれくらいかなど経験と勘に頼ってきた曖昧な部分を科学的根拠に基づいて実行する。これは農家にとってリスクヘッジになりますね。しかしICTに対する農家のアレルギー反応はありませんか?「機械に何ができる!」というような……。

飯田:ご意見いただくこともございますが、一方で、若手はもちろん、70歳以上の方でも「KSAS」への高い関心を示す方は少なくありません。60~70代の親世代が導入を決め、操作は30~40代の子供世代に任せるという例も多い。次世代に、新しい農業を築いていってほしいという願いがあるのだと思います。

フェル:実際「KSAS」は採用すると、どれくらい良くなるのですか?

飯田:「KSAS」の効果が発揮されると想定しているのは約5ヘクタール(ha)以上の圃場を保有されている農家。おおむね収量15%アップ程度の効果が確認されています。また、「農作物の増収、品質向上による売価UP」での所得拡大への貢献だけでなく、「肥料散布の最適化」「安心・安全な農作物づくり」「メンテナンス性の向上による農業機械の長寿命化」など、環境に配慮した農業経営を実現します。

フェル:最近、同級生が北海道で脱サラして就農したので先日会ってきたのですが、「農業ってIoTとかどうなの?」と聞いても「まだまだ全然先のこと」で話はオシマイです。あいつ、クボタがどんなことやっているか知らないな。今度、説教してやらないと。

■クボタが描く未来農業のあり方

ものづくりに一貫して関われるクボタのエンジニア

フェル:クボタは、2030年の世界の農業がどのようなカタチになっていると思い描いていますか?

飯田:大変な仕事といわれていた農業は、IoTの活用によって労働集約的な作業は機械が担い、人間は創造性を発揮する作業に専念しています。1次産業としての農業は最先端ビジネスにバージョンアップされ、一方で趣味としての農業も一部で愛好されています。

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フェル:今回の取材で、クボタが非常に魅力的な会社であることが分かりました。IoTの活用によって農業や水の分野でソリューションを提供するグローバル企業であり、非常にユニークな研究開発を行っています。今後は、どのようなエンジニアに来てほしいとお考えですか?

飯田:一言で言えば「グローバル人材」です。どのような環境でも挑戦する好奇心があり、かつ素直な人。クボタは従来からお客様を訪問して製品の状況を確かめ、使い勝手などのご要望を直接お聞きすることを大切にしてきました。相手の声に耳を傾け、WANTSを引き出す能力も重要です。
 クボタは、明治期に、コレラなど水系伝染病の流行により、近代水道の整備が求められる中、国内で初めての水道用鋳鉄管の量産に成功することで、多くの人々に安心・安全な飲料水を提供する礎を築きました。また戦後は、農家に寄り添いながら、農業機械の開発を次々に進め、日本、そして世界で、食糧増産と農作業の重労働からの解放に大きく貢献しました。
 今後、世界的な人口増加を背景に、「食料・水・環境」分野で当社が果たすべき役割は、ますます重要になると考えます。

フェル:一般的に大きなものづくり企業では、エンジニアは特定のパーツのマニアックな専門技術をひたすら担当してキャリアを積んでいくことが多い。クボタは大企業なのに、1つの製品のものづくり全体に関わることができます。そしてその製品が、社会課題の解決に貢献する。それがクボタでエンジニアとして働く醍醐味(だいごみ)かもしれませんね。

飯田:社員はギアではありません。お客様の課題発見からそれを解決するためのものづくり、アフターサービスまで一貫して主体的に関わってほしい。大きな達成感がそこにはあります。

フェル:私もクボタの最新動向を注視しておこうと思います。ぜひ今年はクボタの田植機で田植えに挑戦してみたい。おそらく次回、読者の皆様にお伝えするのはフェルの泥んこリポートだろうと思います。専務、ありがとうございました。

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