AI×IoTで加速するモノづくり革新
現場発の最も“リアル”なアプローチ

AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)などの革新技術とともに進む「第4次産業革命」。この大きな流れの先を読むオムロンは、「integrated(制御進化)」「interactive(ヒトと機械の新たな協調)」「intelligent(知能化)」の3つの柱から成るビジネス・コンセプト「i-Automation!」を打ち出すとともに、新たなIoTサービス基盤「i-BELT」を構築。これをベースに現実的なAI、IoT、ロボティクス活用を提供することでモノづくりの現場における革新を支援する。

 高齢化や消費者ニーズの多様化などを受けて、モノづくりの現場を取り巻く環境が大きく変わりつつある。例えば生産拠点のグローバル化などを背景にした「作る“場所”の変化」。多品種少量生産に代表される「“作り方”の変化」。熟練技術者の高齢化や外国人労働者の増加などによる「作る“ヒト”の変化」などである。これらの変化に伴って浮上する様々な課題を解決するために、従来の仕組みを見直すことを迫られているモノづくりの現場は着実に増えている。

 こうした状況を受けて、オートメーションのパイオニアとして知られるオムロンが打ち出した新たなビジネス・コンセプトが、i-Automation! である(図1)。先頭の「i」はinnovation(革新)を表しており、独創的なアプローチによってオートメーションの世界で革新を起こすというオムロンの強い意志を表現している。i-Automation! を実践するための具体的なアプローチを示す3つのキーワードが「integrated」「intelligent」「interactive」である。

 integratedは、制御システムの進化を示す。ここで言うintegratedは、制御機器を統合し、擦り合わせることを表現している。つまり現場のニーズと機器の機能を制御技術によって適切に結びつけ、これまで不可能とされてきた制御を実現しようという取り組みだ。例えば、搬送機を高速で動かした場合に不要な振動が発生する。機構系をしばらく静止させておけば、この振動は収まる。だが搬送に余計な時間がかかり、生産性の低下を招く。こうした振動をモーション制御の技術で抑えることを可能にしている。また、モノが面にぶつかる瞬間にかかる衝撃を抑える「やわらか制御」や、超高速で動作する2系統の機構系の動きを同期させる高速同期制御なども制御による擦り合わせの例である。いずれも制御システムにソフトウェアの形で実装する制御モジュールとしてオムロンが提供している技術だ。同モジュールの種類は枝番を含めると、すでに200種類を超えている。

 interactiveは、人と機械とが協調し、それぞれの特性を補完しながら現場の作業を最適化するという新しい考え方を指す。オムロンが買収した米Adept Technology社の搬送用ロボット「モバイルロボットLD」は、これを実現する技術の一つだ。AIを搭載しており、人や物にぶつからないよう自律的に移動する。

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図1オムロンが推進するモノづくり革新のコンセプト「i-Automation!」

革新の成果を市場に展開

 intelligentは、オートメーションの領域における情報活用を指す言葉だ。製造現場を行き交う様々なデータを収集・解析して、そこから抽出した情報を分かりやすい形で提供することで、モノづくり革新を支援する。まさにIoTの考え方そのものともいえる取り組みだ。自身でもモノづくりの現場を抱えるオムロンは自社の現場で実践し、そこで培ったノウハウを積極的に市場にフィードバックしている。

 同社がノウハウを蓄積する現場の一つが、草津工場(滋賀県草津市)のプリント基板実装ラインである(図2)。ハンダ印刷機、マウンター(高速機および多機能機)、リフロー炉のそれぞれから個々の基板の出入り時間のデータを収集。それを基に、段取り替えによるラインの空き時間や、一時的に生産が止まる「チョコ停」などによる滞留など状況をグラフィカルに「見える化」している。これによって、問題点を洗い出し、改善を進めることで、生産性を30%も向上させた。問題を割り出すために要する時間も大幅に短縮している。

 同社綾部工場(京都府綾部市)の光電センサの組み立てラインでもi-Automaiton! を実践している。レンズの組み付け時に発生するバラつきのデータを収集し、統計的な処理を施して組み立て位置の補正情報を抽出。これを組み立てラインにフィードバックすることで、精度不良をシングルPPMにまで抑えることに成功した。また、中国上海工場では、セルラインでの人の動きをセンサで検知し、段取り替えなどに伴うムダを排除することで生産性を30%も向上させている。

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図2オムロン草津工場(滋賀県草津市)のプリント基板の実装ライン

20万種超の製品群が強みに

 i-Automation! を巡るオムロンの取り組みを理解するうえで重要な概念が「高度1mから10mのモノづくり革新」である(図3)。

 ここで言う「高度」はデータ活用によって付加価値を提供できる領域を指す。すなわち、センサやアクチュエータが扱うデータの領域は「高度1m」。生産ラインを制御するコントローラが扱うデータの領域は「高度10m」。生産管理システムやMES(Manufacturing Execution System)が扱うデータの領域は「高度100m」。基幹システムや工場間システムが扱うデータの領域は「高度1000m」。外部企業や顧客間の取引で扱うデータの領域は「高度10000m」と定義する。

 このうちオムロンがターゲットとしているのが、センサやアクチュエータ、およびコントローラのレベルを対象にした「高度1〜10m」である。IoTの概念における「エッジ」の領域だ。クラウドのような上位システムにデータを上げるのではなく、現場に近いところでデータを集め、分析し、改善へとつなげ、課題を解決するというのが同社の考えだ。

 この高度1〜10mに向けたソリューションを構成するのが、「ILOR+S」と表現されている製品群。具体的には、センサなどの入力機器(Input)、コントローラなどのロジック機器(Logic)、サーボやインバータなどの出力機器(Output)、新たに展開を始めたロボット製品(Robot)、そして安全な現場に欠かせないセーフティ機器(Safety)である。それぞれのカテゴリを指す言葉の頭文字を並べると「ILOR+S」になる。全体で20万品種を超える豊富なラインアップの製品群に加えて、関連するソフトウェアも提供できるのが同社の強みだ。

 さらにオムロンは、モーション制御機器メーカーの米Delta Tau社、産業用ロボットメーカーであるAdept Technology社、産業用カメラのセンテック社(京都市)、産業用バーコードリーダーで世界的シェアを持つ米Microscan Systems社をそれぞれ2015年から2017年にかけて相次いで買収し、「ILOR+S」の品揃えを一段と拡大することで顧客に提供する価値の向上を図っている。

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図3オムロンが取り組む高度1〜10mのモノづくり革新

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