新局面を迎えたモノづくりの進化
現場革新に直結する先進技術が続々

しい時代のモノづくりを見据えた戦略コンセプト「i-Automation!」を掲げるオムロンが、革新に取り組むモノづくりの現場に向けて展開しているソリューションが注目を集めている。IoT(Internet of Things)、AI(人工知能)、ロボティクスなど新しい分野の先進技術を活用し、これまでとは桁違いの生産性や高品質を追求するための新機軸が随所に盛り込まれているからだ。

 第4次産業革命をキーワードにモノづくりの現場が直面する様々な課題を解決するためにIoTやAI、ロボティクスなどの先進技術を導入する機運が製造業全体で盛り上がっている。こうした中、より現実的で具体的なソリューションを求める声が高まってきた。これに先回りする形でオムロンは、「integrated」「intelligent」「interactive」の3つの“i” から成る戦略コンセプト「i-Automation!」を軸に、実践的なソリューションを次々と開発。2017年11月に東京ビッグサイトで開催された、「システムコントロールフェア2017」と「2017国際ロボット展」に同時出展し、実証事例を積極的に示しながらユーザーに向けて大規模な提案を行った。

「制御」の可能性を拡大

 その展示にもあった制御システムの進化を示す「integrated」によるソリューションの一つが、「スマート搬送」である(図1)。後工程の作業に合わせて搬送システムを制御するオムロンならではの技術だ。連なった複数のコンベアの中に速度を変更する「調整コンベア」を用意し、ワークの間隔に合わせてコンベアの速度を制御することで、ランダムに流れてくるワークの間隔が等しくなるように調整する。投入されたワークの間隔をセンサーで検出し、コントローラーが瞬時に補正量を算出。この結果を基にコンベアを駆動するサーボモーターの回転速度を変える。

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図1「スマート搬送」のモデル機械

 コンベア上を流れるワークをロボットが移送するピックアンドプレイス工程に導入すれば、工程の前段でワークの間隔を揃えられるので、ロボットがワークを取りこぼすことなく、最大限の速度でワークを流すことができるため、ロボットの性能を無駄なく引き出すことができる。同社はこうした制御アルゴリズムを、「ファンクションブロック(FB)」と呼ばれるソフトウエアのモジュールとしてユーザーに提供し、同社のPLC(Programmable Logic Controller)やIPC(Industrial PC)などのコントローラーに効率良く実装できるようにしている。

 同社は、様々な制御アプリケーションを次々と開発し、FBとして提供することに注力しており、すでに数多くのFBを揃えてライブラリ化。これを「Sysmac NJ/NX/NYシリーズ」をはじめとする同社のPLCやIPCのユーザー向けに提供している。ユーザーは同社のWebサイトからFBをダウンロードし、各種制御プログラムの開発環境である「Sysmac Studio」を使ってPLCやIPCに実装できる。つまり、ライブラリの中からニーズに合ったFBを選択して、コントローラーに実装することで効率的に生産設備やラインの機能を強化できるのだ。現在、同社が提供するFBは約200種類にも及ぶ。さらに随時新しいFBが追加されている。

 FBの開発を担当しているのは同社が世界に展開している「オートメーションセンタ」である。制御アプリケーションを開発するユーザーのサポートや、新しい制御技術の開発を担う拠点だ。同センタのメンバーがユーザーの生産ラインおよび設備の課題やニーズを吸い上げて、それらに応じたFBを開発している(コラム「ユーザーとともに制御の進化を追求」を参照)。

先進制御で「匠の技」を再現

 同社は、新たな制御技術の開発を通じて、社会や市場の変化によって浮上する現場の課題を解決するためのソリューションを提供する。その1つが、これまで熟練技術者の経験やノウハウの積み上げによって実現していた技術、いわゆる「匠の技」をオートメーション化する制御技術である。これまでに、制御対象の「追従遅れを低減する技術」や、移動中のワークを「加減速中にぴったり撮像する技術」、制御対象から受ける負荷の変動に対する「ロバスト性を高める技術」、「2次元形状をサブミクロン単位で測定する技術」などを開発している(図2)。同社はこれらの技術も、FBなどの形でユーザーが簡単に利用できるようにする考えだ。

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図2匠の技を具現化するアプリ制御技術

 「追従遅れを低減する技術」は、遅れの原因となる機構系やサーボモーターの特性や、制御ネットワークの通信路で発生する制御指示の遅延を反映した制御対象のモデルを使って、制御量を随時調整する「モデル予測制御」の技術を適用した制御アルゴリズムである。制御量を自動的に最適化するので追従性が高まる。この技術を製造装置に適用することで生産ラインにおけるスループットの大幅な改善が期待できる。「加減速中にぴったり撮像」は、同社が採用している産業ネットワーク規格「EtherCAT」が提供するタイムスタンプ機能を利用して実現したものだ。個々のワークごとに、最適な撮影ポイントを算出し、それに対応した時刻情報を使って撮像するタイミングを制御する。これによって、ワークの移動速度が変化したときに生じる撮像のズレを防げる。従来は、撮像ズレが発生するのを前提に、撮像範囲を広く取って、その範囲で撮影した上で画像を補正していたが、時刻情報に基づいて撮像することで、こうした一連の処理を省ける。この技術を、画像処理を使った検査工程に適用すれば、移動するワークを止めずに検査することができるようになるので、検査時間を大幅に短縮できる。

 「ロバスト性を高める技術」は、「スライディングモード」と呼ばれる制御手法を導入して、外乱などの制御対象が受ける負荷が変動したときの追従性を高める技術である。負荷が変動しても、制御システムのゲイン(感度)を再調整する必要がなくなる。この技術を利用することで、剛性が低い装置などゲインを大きくできない制御対象でも、高い追従性を維持できる。

 「2次元形状をサブミクロン単位で測定する技術」は、0.004µmと極めて高い静止分解能を備える白色同軸共焦点方式の高精度変位センサーを使って、ワーク表面における狭小箇所の形状を高精度で測定する技術である。サブミクロン単位でワークの形状や表面のキズなどを検査できるので、品質の大幅な改善に貢献する。白色同軸共焦点方式の高精度変位センサーは、微小な変位を測定するのは得意だが、測定範囲が狭い。そこで変位センサーを移動させてワークの表面を走査することで、広範囲を測定できるようにした。このとき、表面の形状に合わせて変位センサーの高さを調整する「ならい制御」と、測定面の高さが測定範囲外に変動した場合に測定範囲内となるように変位センサーの高さを再調整する「サーフェースサーチ」の2つの制御手法を導入することで、高精度な2次元形状の測定を可能にした。それぞれ、すでにFBが用意されており、それらを組み合わせるだけで簡単に実現できる。変位センサーの位置と測定タイミングを高精度に合わせるため、EtherCATのタイムスタンプ機能を利用することで、変位センサーとサーボモーターを同期させることを可能にした。

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