赤外LEDの高効率化で新たな用途を開拓

車載用で磨いた光学技術で独自の付加価値

幅広い波長を網羅する様々なLEDデバイスを展開しているスタンレー電気。
同社が、新たに発売した「高効率赤外パワーLED」が注目を集めている。
同社の多彩なノウハウを投入して業界随一の発光効率を実現。
さらに自動車用で磨きをかけた光学技術と組み合わせてユニークな特長を打ち出しているからだ。
この特長は監視カメラなど既存の赤外LED応用機器における設計の合理化や機能強化に貢献すると同時に、自動車用安全システムなど新たな用途の発展にも貢献する。

近藤 清太郎 氏

近藤 清太郎

スタンレー電気
光半導体事業部 第三営業部 部門長

1920年の創業当初から一貫して光の技術を手掛けてきたスタンレー電気は、1960年代からLED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)の開発を手掛けている。近年、家庭用や自動車向けの照明などLEDの用途が急速に広がるとともに可視光LEDの市場を開拓。さらに紫外LEDから赤外LEDも積極的に展開し、光の波長領域を幅広く網羅する多彩なLED製品を揃えている。

同社は、紫外光、可視光、赤外光の大きく三つに分けた波長領域のそれぞれにおいて、意欲的な製品を次々と市場に投入している(カコミ記事を参照)。そのうちの赤外領域において、いま同社が注力しているのが、高効率赤外パワーLEDである。同社は2017年10月3~6日に開催されたIT(情報技術)とエレクトロニクスの大型展示会「CEATEC JAPAN 2017(シーテック ジャパン 2017)」で最新製品を披露すると同時に、その応用機器も参考出品の形で展示。多くの来場者の注目を集めた。

新たな車載用途を視野に開発

赤外LEDは、発光波長の中心が780nm付近を超える光を出すデバイスである。家電製品のリモコンといった赤外線通信システムなど、すでに幅広い用途で使われている。こうした赤外LEDの中で、このところ需要が伸びているのが高出力の赤外LEDだ。監視カメラなどセキュリティ・システムの夜間照明、TOF(Time Of Flight)方式の距離画像センサの光源などに向けた製品である。さらに最近では、居眠りなどドライバーの状態を検知するドライバーモニタリングシステム(Driver Monitoring System:DMS)や自動運転システムのセンサなどへの応用も期待されている。こうした既存の応用から先進的な応用まで幅広く視野に入れてスタンレー電気が開発したのが高効率赤外パワーLEDである(図1)。発光波長が855nmおよび945nmの2種類のデバイスがあり、さらにそれぞれ指向特性が60度の狭指向性タイプ(M□N1105MS)と120度の広指向性タイプ(M□N1106MS)を用意している。「2020年の東京五輪に向けてセキュリティ分野の需要が伸びるでしょう。DMSなどの車載システムのほか、異常気象から市民生活を守る防災用カメラや生体認証システム用の光源など新たな用途も出てくると見ています」(スタンレー電気 光半導体事業部 第三営業部 部門長 近藤清太郎氏)。

図1 高効率赤外パワーLED

高効率赤外パワーLED 写真
(左)狭指向性タイプ(「M□N1105MS」) (右)広指向性タイプ(「M□N1106MS」)

機器設計の自由度が向上

同社が新たに発売した高効率赤外パワーLEDの大きな特長は、855nmおよび945nmのデバイスのいずれも610mW/W(放射束/投入電力)以上と業界随一の高い発光効率を実現していることだ。このため従来と同じ電流で高い光出力が得られる。「順方向電圧(Vf)が低く、高出力が可能なLEDを新たに開発しました」(近藤氏)。市場では光出力を高めるためにLED素子2個分の順電圧となっているデバイスが数多くある。ただし、こうしたデバイスの場合は消費電力を抑えるうえでは不利になる。そこで、同社の高効率赤外パワーLEDではLED素子1個分の順電圧にしたうえで、素子材料や構造など多角的に最適化して高効率化を図った。さらに同社が自動車向けLEDで培った光学設計のノウハウやパッケージ技術を生かして、パッケージ上面に設けた光学レンズを最適化。素子から出た光の利用効率を最大限に高めた。

このような多くの特長を備えた高効率赤外パワーLEDは、機器設計者に多くの利点をもたらす。「例えば、監視カメラに内蔵する照明用赤外LEDの個数を大幅に減らせます。具体的には、従来36個の砲弾型赤外LEDで構成していた照明と同じ明るさが、わずか1個のLEDで得られます。同じ消費電力とした場合は、3個のLEDで実現でき、しかも明るく広く照射できます」(近藤氏)(図2)。つまり高効率赤外パワーLEDの採用によって、部品点数の削減によるコストダウンができるだけでなく、照明部分を小さくすることで機器全体の小型化も進めることができるわけだ。

もう一つ見逃せない利点は、高効率化によって点灯時の発熱を抑えられることだ(図3)。基板温度の低減に貢献するほか、放熱機構を簡素化することで低コスト化や実装の高密度化を図れる。さらに同社が新たに発売した高効率赤外パワーLEDは、放熱性の高いセラミック材やCu(銅)系材料を使った新設計の小型パッケージ(縦3.8mm×横3.8mm×高さ2.1~2.8mm)を採用して、一段と放熱性を向上させている。「機器に実装した際の信頼性を確保するうえで有利です。熱による制限が低くなるので設計の自由度も増すでしょう」(近藤氏)。

図2 機器の小型化に貢献

監視カメラ製品画像
(左)従来の砲弾型赤外LEDを36個を使った監視カメラの設計例
(右)高効率赤外パワーLEDを3個使った監視カメラの設計例

図3 従来品に比べて発熱量を低減

発熱比較画像

赤外LED投光器も開発

スタンレー電気は、LEDをはじめとする電子デバイスを提供すると同時に、電子デバイスを使った各種モジュールや機器などの応用製品も展開している。高効率赤外パワーLEDについても、いち早く応用製品を開発している。同社は、CEATEC JAPAN 2017で、高効率赤外パワーLEDを搭載した遠距離監視カメラ用赤外LED投光器を参考出品の形で展示した(図4)。外形寸法が55mm×55mm×60mmの小型の筐体に、高効率赤外パワーLEDと光学レンズなどを実装したものだ。高度なシミュレーション技術を駆使して光学レンズの設計を最適化。指向半値角3度と配光角をぐっと絞って、遠方まで赤外光が届くようにした(図5)。この投光器を使って100m以上先にある被写体の撮影が可能になる。

LED素子の技術と自動車向けで多くに実績を誇る光学設計の技術を生かして、競合他社とは一線を画する特長を備えた赤外LEDを製品化しているスタンレー電気。赤外LEDの新しい市場を創出するに違いない。

図4 高効率赤外パワーLEDを使った投光器

高効率赤外パワーLEDを使った投光器

図5 光学設計のためのシミュレーション画像

光学設計のためのシミュレーション画像

超狭角配光 LED 投光器で数々の受賞

ヘッドランプ、ターンランプ、テールランプなど自動車用の可視光LEDで多くの採用実績を誇るスタンレー電気が開発した超狭角配光 LED 投光器が、幅広い業界で高い評価を受けている(図A)。この超狭角配光 LED 投光器は、自動車用ヘッドランプの開発を通じて培った光学設計の技術を駆使して、2.5度と極めて狭い配光角を実現。発光効率を高めることで照明設備の大幅な省電力化を可能にする。

同投光器はアメリカ(ニューヨーク州)とカナダ(オンタリオ州)の国境に位置する世界的観光名所ナイアガラの滝に、イルミネーション設備として2016年11月に設置されている(図B)。この設備では、250~600m離れた3カ所の施設から赤、青、緑、白の4色の光を滝に向けて投射する。従来4kWのキセノン・ショートアーク球を光源にした投光器21台を使った照明設備を使っていた。これを1400 台 (赤色、青色、緑色、白色が各350 台)のLED投光器に置き換えた。設備の規模が一気に大きくなったにもかかわらず設備全体の消費電力は、126kWから54kWへと約60%も削減できた。一方で、従来は4色のカラーフィルターを組み合わせて色彩を表現していたのが、LED投光器では4色の掛け合わせと調光で1677万色以上の多彩な色を使った高度な表現できるようになり演出効果が格段に向上した。このイルミネーション(Designed by Salex, Inc. and M&B Lighting, Inc.)は、北米照明学会(IES:Illuminating Engineering Society of North America)が主宰する2017年の IES Illumination Award で 「Award of Excellence」 を受賞している。

このほか2017年10月に開催されたCEATEC JAPAN 2017において、二つのアワードでも賞を受けている。一つは、学術的および技術的観点、さらに市場の将来性の視点から革新性を評価する「CEATEC AWARD」で、ホーム&ライフスタイル・イノベーション部門準グランプリを受賞(図C)。もう一つは、「米国メディアパネル・イノベーションアワード」である。米国のIoT関係のジャーナリストで構成される選考委員会が、CEATEC JAPAN 2017の展示の中から、今後の米国市場への影響力が高い技術、製品、サービスと選んで表彰するもので、ここではComponents 部門賞を受賞した。

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図A 超狭角配光 LED 投光器

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図B 超狭角配光 LED 投光器で彩られたナイアガラの滝

図C

「CEATEC JAPAN 2017」にて受賞した2つの賞

「CEATEC AWARD 2017」
ホーム&ライフスタイル・イノベーション部門
準グランプリ

「米国メディアパネル・イノベーションアワード」
Components 部門賞

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