常識を超える降圧比24対1を2MHz動作で実現 60V入力の同期整流DC/DC コンバータIC

独自のスイッチング回路技術「Nano Pulse Control®」を採用した第一弾の製品としてロームが発売した同期整流降圧DC/DC コンバータIC「BD9V100MUF-C」が大きな注目を集めている。1.9MHz〜2.3MHzと高速で動作した状態で、従来の常識を超える降圧比を実現。最大60Vの入力を2.5Vまで直接降圧できる回路を1チップで構成できるからだ。48Vバッテリーを搭載するマイルドハイブリッド車などにおける電源回路の合理化に貢献する。

「48Vマイルドハイブリッド車の電源を最もシンプルにできるICを開発しました」

 「Nano Pulse Control®」は、電源回路の設計者にとって、いわば常識となっているDC/DCコンバータの限界を超えた特性を実現する画期的な技術だ。具体的には、DC/DCコンバータICが出力するスイッチング電圧のパルス幅を高速・高精度で制御する技術である。

 一般にスイッチング方式のDC/DCコンバータの場合、出力段のコイルに入力するパルス信号をICで制御しており、出力電圧は入力電圧とパルス幅によって決まる。つまり、入力電圧が大きくなった時に、低い出力電圧を維持するには、パルス幅を狭くする必要がある。ところが、電圧が高くなるほど、また高速でスイッチングするほど、きれいなパルス波形を維持するのが難しくなる。寄生容量や干渉など回路の特性に起因する様々な要因でスイッチング時に発生するノイズが大きくなるからだ。そのままでは、安定した出力電圧が得られないうえに、発生したノイズが様々な問題を招く。このため、降圧比が大きな回路では、DC/DCコンバータICを二つ使って2段階で変換する回路を構成するのが一般的だった。

 ここで問題になっているスイッチング時のノイズを抑え、従来の常識を越える高い降圧比の実現を可能にするのがNano Pulse Control®の技術である。車載電源、産業用機器、POE(Power Over Ethernet)など幅広い用途における電源回路の合理化に貢献する。

 多くの分野に利点をもたらすNano Pulse Control®は、回路の工夫に加え、設計、ICのレイアウト、製造プロセスなど半導体の開発工程全般にわたる広範囲の技術を投入して実現した技術だ。素材から製造まで一貫して社内で手掛けるロームならではの技術と言えよう。様々な機器の電源に革新的な変化をもたらす可能性を秘めたNano Pulse Control®の技術を反映した第一弾の製品としてロームが新たに市場に投入した製品が、DC/DCコンバータIC「BD9V100MUF-C」である。欧州を中心に市場が盛り上がりつつあるマイルドハイブリッド車向けに開発した製品だ(図1)。
図1 同期整流降圧DC/DC コンバータIC「BD9V100MUF-C」 図1同期整流降圧DC/DC コンバータIC「BD9V100MUF-C」

幅9nsの超高速パルス駆動を実現

 モーターを補助的に利用して走行するマイルドハイブリッド車は、従来車に搭載されている12Vバッテリーよりも電圧が高い48Vバッテリーを使う。これにともなってバッテリーの電圧を電子コントロールユニットなどに供給する3.3〜5Vに変換する電源回路において入力と出力の電圧差が、従来の12Vバッテリー搭載車に比べて大きくなる。具体的には、最大60Vの入力から3.3Vに変換する回路が必要だ。この回路を1チップで構成できるのがBD9V100MUF-Cの大きな特長である。

 実は、これほど大きな降圧比の電圧変換回路を1チップで構成できるDC/DCコンバータICは、これまで市場になかった。つまり、車載用DC/DCコンバータICの場合、回路から発生するノイズがオーディオ機器などに影響を与えないように、スイッチング周波数を2MHz以上に設定する必要がある。ところが、2MHz動作で出力電圧3.3Vを条件にしたときに、60Vの電圧を入力できるDC/DCコンバータICが、市場には見当たらないのが現状だ。既存の製品では、同条件での入力電圧は最大55V程度だ。(図2)。こうした製品を使っている限り、最大60Vの入力から3.3Vに変換する回路は、2チップで構成しなければならない。ここにBD9V100MUF-Cを使えば、部品点数や実装面積を一気に半減できる。コスト削減や電装機器の小型軽量化を追求している車載設計者にとって、この利点は大きいはずだ。
図2 電源の合理化に貢献 図2電源の合理化に貢献
 BD9V100MUF-Cのデータシートに記載されている情報を見ると、スイッチング周波数が2.1MHzで最大60Vの電圧が入力可能で、これを2.5Vまで下げることができる。つまり24対1と大きな降圧比を実現している。しかも、入力電圧が16V〜60Vと広い範囲で出力電圧が安定している。この理由は、スイッチング周波数2MHzで60Vから2.5Vに変換する場合に必要なパルス幅は20nsであるのに対して、BD9V100MUF-Cならば、これを大幅に下回る幅9nsのパルスを使って制御しすることができるからだ(図3)。
図3 幅9nsの超高速パルス駆動を可能にする「Nano Pulse Control®」 図3幅9nsの超高速パルス駆動を可能にする「Nano Pulse Control®
 さらに車載用途を意識して開発したBD9V100MUF-Cは、回路に異常が生じたときの保護機能が強化されているのも車載機器設計者にとっては見逃せない特長である。出力段のコンデンサやスイッチング出力端子がグラウンド(接地)に短絡したときに、従来品よりも素早く反応して動作を停止し、短絡から復帰した場合は速やかに動作を再開する保護システムを新たに開発した。

車載や産機など降圧幅が大きい用途に展開

 いまやDC/DCコンバータの主流となっているスイッチング方式の回路が抱える本質的な特性にまで踏み込んで開発したNano Pulse Control®。ロームは、この技術を搭載した電源ICを、48Vマイルドハイブリッド車に続いて12Vバッテリー搭載車向けにも展開する。さらにこれら車載用だけでなく様々な用途に向けて展開する方針だ。

 様々な用途の中でもNano Pulse Control®搭載電源ICの大きな需要が生まれる可能性を秘めているのが製造装置、工作機械、ロボットなどの産業用機器である。小型化や信頼性の向上に対する要求が高いからだ。つまり、最近ではROI(Return On Investment)の改善に向けて、より小型の産業用機器が求められている。Nano Pulse Control®搭載電源ICを使って回路の部品点数を減らすことで機器の小型化を進めることができる。さらに部品点数を削減することで電源回路の信頼性が高まる。

 Nano Pulse Control®の技術が求められる用途は、自動車や産業用機器に限らず今後ますます広がる見込みだ。半導体の微細化が進むとともにLSIのコア電圧が下がり続けており、搭載するマイクロプロセッサのコア電圧と電源電圧との差がますます広がるからだ。Nano Pulse Control®が機器設計にもたらすインパクトは予想以上に大きいかもしれない。
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