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ハリウッド実写版 攻殻機動隊 公開記念 ─ ホリエモンが語るゴースト・イン・ザ・シェルの世界

自らのアイデンティティを模索する少佐。多くの人はその理由と苦悩に共感するはず

堀江氏

 ゴースト・イン・ザ・シェルを見る上で注目すべき描写の一つとして、人間の体の一部を機械化する“義体化”がある。このテクノロジーが、もし実用化されたらどうするか? という問いに堀江さんは「義体化する。しないと死んじゃうもんね。義体が実用化されれば、隕石が地球にぶつかるような状況でない限り、ほぼ死なないようになるのでは」と答えた。

 ただ、これは僕が考える未来の話だけど、死なないという部分においては、義体ではないのかもしれない。生物学的にサスティナブルなテクノロジー、それが再生医療か免疫療法なのかは分からないけど、割とナチュラルな形になるんじゃないかな。

 ただ、大きな事故や病気にあったら、義体が必要になりますよね。それに、生身の体よりも義体のほうが、身体能力が向上することだってある。実際、走り幅跳びでは義足の選手が世界記録を塗り替えていたりしますよね。

 これからもっと、テクノロジーが進歩して攻殻機動隊の世界が実現すれば、自分の体を強化するために義体化する人が出てくるかもしれません。

 作中では、脳以外の全てを義体化した少佐が、自らのアイデンティティを模索し、生きる意味を考える。作品の軸となる大きなテーマだ。

 一般的に少佐に共感する人は多いと思います。その象徴的なシーンが、少佐が何もない部屋でベッドに横たわっているシーン。この人は何をしているんだろう、と思わせるためにすごく強調して表現されていますが、これは、生活のために仕事をして、冷たい部屋に帰る。帰っても何も楽しいことはなく、次の日も通勤電車に揺られて会社に行く人と同じ状況だと思います。

 そういった生活で「自分は何のために働いているのか、生きているのか」と考える人は珍しくない。それは、少佐が生きる意味を考えるのと同じ。だから、多くの人は共感できるでしょうね。

 ただ、正直、僕は全く共感できなかった(笑)。そもそも生きる意味とか考えるほど暇じゃない。“何のために”とか考えたことがないくらい、楽しく生きていますよ。

実写版のゴースト・イン・ザ・シェルも次世代のクリエイターをインスパイアする

映画イメージ
少佐の代名詞である熱光学迷彩はシリコン製の全身スーツで表現されている。姿が見えない少佐のアクションも映画の見どころの一つだ

 最後、堀江さんにゴースト・イン・ザ・シェルから受け取ったテーマやメッセージを尋ねたところ“ポストヒューマン”というキーワードが出てきた。簡単に言えば、今の人類以降というところだろうか。

 ポストヒューマンが最も分かりやすく表現された映画は、マルコヴィッチの穴ですかね。みんなと意識が溶け合って混濁して、一つの生命体になる。脳神経がネットに直接接続できる電脳化はそれに近い気がします。そうなると、多くの人たちが思考を停止すると思う。

 現に、ポストヒューマンの手前である現在でも、何も考えていない人が多いでしょう。日本や世界の政治的な動きを見ていると、一つの大衆的意識ではないけれど、何も考えずに、みんなと同じ方向を向いている人がマジョリティになっている。ゴースト・イン・ザ・シェルのように電脳化で人の意識がつながると、その流れは加速しますよ。

 堀江さんはこの状態を分かりやすく表現して大ブレイクしたのが、マトリックスだと考えている。

 マトリックスでは、ポストヒューマンはマジョリティであるエージェント・スミス。主人公であるネオは現実を知り、覚醒してマジョリティの世界をひっくり返そうとする。

 善悪の構造で分かりやすく表現されたから、あんなにブレイクしたんです。攻殻機動隊は分かりづらいですよね。分かりづらいというのは作品を否定しているわけではありませんよ。逆に、分かりづらいから深く掘り下げて考える必要がある。

 最初に、“ある意味、とてもアニメに忠実”と言ったじゃないですか。それは、テクノロジーの描き方や画作り、脚本だけでなく、その世界観、さらには、分かりづらい部分も含めてなんですよ。

 今回の実写化も、表面的には派手なアクションや美しい描写で多くの注目を集めるだろう。しかし、その深いテーマまで理解するのは簡単ではないと堀江さん。「この映画の製作陣は、攻殻機動隊の無骨な感じや分かりにくさを愛していて、それをそのまま見てほしいと思っているのではないでしょうか」と笑う。原作の誕生から25年経った今でも、リスペクトされ続けているのは、良い意味で分かりづらい部分があるからだろう。そして、その功績についても、堀江さんは高く評価をしている。

 攻殻機動隊の功績は、ポストヒューマンやインターネットの概念が確立していない時代にゼロから作品を生み出したこと。

 この作品があったからこそ、マトリックスのような作品が生まれてきたわけで、そういう意味では、価値があると思います。そして、ゴースト・イン・ザ・シェルが、その世界観を再現してハリウッドで実写化されたことも、非常に意義がある。

 アニメがそうだったように、次世代のクリエイターをインスパイアする作品になるのではないでしょうか。

ゴースト・イン・ザ・シェル