モータージャーナリスト岡本幸一郎の試乗インプレッション

新型カムリ徹底解剖!

トヨタ初のフルTNGA採用

2017年7月10日、トヨタは6年ぶりにフルモデルチェンジしたセダン「カムリ」の国内販売を開始した。新型カムリは、TNGAに基づいてプラットフォームやパワートレーンなどを含めすべてを一新。トヨタの並々ならぬ意気込みが伝わってくる内容となった。

しかし、アメリカをはじめ、これまでに100以上の国や地域で累計1800万※1台以上を販売したドル箱車種とはいえ、業界の売れ筋は完全にSUVへとシフトしている。あえてこの時代に「セダンの復権」を掲げ登場したカムリの実力やいかに。いち早く新型カムリをドライブしたモータージャーナリストの岡本氏と一緒に細部までチェックする。

※1 2016年12月時点。トヨタ自動車調べ。

TNGAってなんだ?
Toyota New Global Architecture(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)の略。トヨタいわく「いい車を生み出すための新しい挑戦」。トヨタの新しい車づくりの手法と言い換えてもいいだろう。パワートレーンユニットやプラットフォームなどを一新し、全体最適を考え新開発することにより、クルマの基本性能や商品力を飛躍的に向上させることを目指している。

検証1 スポーツカーに通じるエモーショナルで美しいデザイン

新型カムリは見た瞬間に人を魅了する。WIDE & LOWなスタイリングは、キャンペーンテーマとして与えられたコンセプト「BEAUTIFUL MONSTER」そのものだ。スポーツカー好きで、今までは買い替えの際に国産セダンが選択肢になることはなかったという岡本氏も新型カムリにハートを掴まれた。

「カムリは本来がいい意味で普通のクルマ。実用的で毎日乗っても飽きないという意味で、アメリカでは“ホワイトブレッド(食パン)”と呼ばれているくらい。そのカムリが、ここまでイメージチェンジしてきたのは驚き以外のなにものでもありません。

まずはこの低重心のシルエットがかっこいい。見た目だけでなく、走りの面でも重心は低ければ低いほどいいのですが、低重心化は技術的に非常に難しい。それをクリアできたのは、フルTNGAモデルだからこそでしょう。

大きく口を開けたフロントマスクも印象的だし、抑揚豊かなボディの面構成、シャープなボディラインも大胆。これだけチャレンジングな意匠なのに全体として破綻がない。360度どこから見ても全身スキのないデザインですね。このデザインは、クルマに実用性だけでなくセクシーさを求める層にも確実に訴えかけるでしょう」

サイドからリヤにかけてはクーペ風の流れるようなデザイン

サイドからリヤにかけてはクーペ風の流れるようなデザイン

迫力あるフロントフェイスに目を奪われる

迫力あるフロントフェイスに
目を奪われる

ヘッドランプとテールランプはフルLED仕様

エモーショナルなデザインは走りの良さも予感させますね

検証2 アクセルワークにリニアに反応するパワートレーンが官能性を演出

新たなパワートレインはシステム全体で155kW[211PS]を絞り出す。それでいて燃費はXクラスで33.4km/Lと優れた低燃費も実現

新たなパワートレーンはシステム全体で155kW[211PS]※2を絞り出す。
それでいて燃費はXクラスで33.4km/L※3と優れた低燃費も実現
※2 エンジンとモーターにより、動力性能として発揮できる出力。社内算定値
※3 JC08モード(国土交通省審査値)

国内向け新型カムリは全車ハイブリッド。最大熱効率41%と高出力を両立したTNGA新エンジン「ダイナミックフォースエンジン2.5」と、THSⅡ(トヨタハイブリッドシステム)を組み合わせたパワートレーンが与えられた。岡本氏によれば、そこには数値からだけでは読み取れない、走りの官能性が隠れているという。

「THS自体ずっと以前からあるシステムです。正直に言うと燃費がよく、そこそこ走るけれどアクセルワークに対して反応がリニアでない、というのが今までの印象でした。これは機構的な宿命で、大幅に改善されることはないだろうと思っていたんです。それがどうですか。新型カムリは非常に反応がいい! アクセルを踏んだら踏んだ分だけ回転が上がるだけでなく、パワーも遅れずスムーズについてくる。アクセルをオフにしたときの回転とパワーの落ち方も非常にスムーズで、純粋に操るのが楽しいクルマへと生まれ変わったんです。

諸元表を見ると、モーターの最高出力と最大トルクは先代に比べて抑えられています。これはモーターをコンパクトにして重心を下げるため。ただ、新型は変速比を見直すことにより、運転した印象としては先代より確実にパワフルになっています。スペックほどパワーを感じないクルマはいくらでもありますが、新型カムリはその逆。スペック以上にパワフルかつ、操るのが楽しいクルマになりました」

検証3 低重心のドライビングポジションはドライバーをその気にさせる

シートを包み込むようなコックピットはドライバーをその気にさせる

シートを包み込むようなコックピットはドライバーをその気にさせる

TNGAによってエンジンレイアウトとともに、ドライバーの着座位置も低く抑えることに成功した。重心が下がればコーナリング性能が上がるのは周知の通り。安定したコーナリングは運転の楽しさに直結する。

「運転の楽しさという点だけを考えれば、着座位置は低ければ低いほどいい。新型カムリはスポーツカーのように低く調整できる点も評価したいですね。着座位置が低くなれば、コーナリング時に遠心力で外に体が持っていかれるロールも必然的に低くなります。

実は先日、雨の富士スピードウェイで新型カムリを走らせる機会があったのですが、コーナリング性能の高さに驚かされました。ウェット路面ではある程度はスリップすることを覚悟でコーナーに進入するのですが、4輪ともしっかりグリップして不安を感じさせない。これは車全体の重心が下がっていることが間違いなく寄与しています」