日経バイオテク Online Special

【日経バイオテク Online Special】【第1回】科学の知見にグローバルなビジネスの視点を加え、世界で活躍する人材の育成を目指す“ノバルティス バイオキャンプ”

ノバルティス ファーマ株式会社(以下、ノバルティス ファーマ)は2005年から、大学・大学院の学生を中心とした若手研究者が集うワークショップ「ノバルティス バイオキャンプ」を開催している。その目的はグローバルで活躍する人材の育成と、同社のイノベーションが基盤となるミッションの遂行だ。バイオキャンプの狙い、目指すところを同社広報統括部長の安立聖子氏に聞いた。

異なる背景を持つ人が集う2泊3日のワークショップ

ノバルティス ファーマ株式会社 広報統括部長 安立 聖子 氏
ノバルティス ファーマ株式会社
広報統括部長
安立 聖子 氏

――バイオキャンプとはどのようなものですか。

安立聖子氏(以下、安立氏):ライフサイエンスを専攻あるいは興味がある大学生・大学院生や若手研究者に参加してもらう2泊3日のワークショップです。日頃はバイオ、医療、物理、ITなどさまざまな分野で研究をしている人たちがチームを組み、ヘルスケア領域での課題を解決する施策、さらにはそれをビジネス化するプランを創出し、チーム間で競うというものです。
 2005年に台湾でスタートし、日本でもグローバル人材の育成は意義あることと考え、2006年から国内大会を開催してきました。書類選考などを通過した参加者が集まった国内大会を勝ち抜いた最優秀者は、ノバルティスの本社が開催する世界大会に日本を代表して派遣されており、これまでに2度、日本代表が世界で最優秀賞を受賞しています。
 このバイオキャンプを通じて、多くの研究者に早いうちから研究だけでなく広くビジネスなどにも関心を持ってもらう機会となればと考えています。

――ノバルティス ファーマがバイオキャンプを開催する狙いはどこにあるのですか。

安立氏:私たちのミッションは、「より充実した、すこやかな毎日のために、新しい発想で医療に貢献する」ことです。その源泉になるのは、イノベーションです。イノベーションを起こせる人材を育成することは、当社はもちろん、社会全体に貢献することになると考えています。
 また、当社はダイバーシティ&インクルージョン(多様な人材を受け入れ組織に活かすこと)を重視しています。国内大会の参加者の約半分は日本人ですが、あとの半分は留学生を中心とした外国人です。また、所属学部や研究分野もさまざまです。異なる背景や考え方を持つ参加者が闊達に、時にはぶつかり合いながら意見を交わすバイオキャンプは当社らしい取り組みと言えます。

英語でのやりとり、厳しい指導。参加者の変化が目に見える

――バイオキャンプの具体的なプログラムを教えて下さい。

安立氏:最初に日本のバイオ産業やビジネスを牽引する著名人の刺激的な講演を聴き、それからチームに分かれ、ヘルスケアに関する課題解決方法と、ビジネスプランの策定に取り組みます。この時点で、チームのメンバー間で激しい議論が起こります。


 2日目にはチームでまとめた案の第1回プレゼンテーションがあるのですが、ビジネススクールの教授やバイオ関連でのビジネス経験のある審査員の方が、特にビジネスプランの部分でかなり厳しい、しかし理にかなった指摘をします。


 すると各チームはその問題をなんとかクリアしようと、寝る時間も惜しんで議論し、プランをより良いものへ変えたり、まったく違った新しいプランを生み出したりします。チームでの議論には、ヘルスケア領域のベンチャー企業を立ち上げている若手のビジネスパーソンや医師、また当社のスタッフなどがファシリテーターとして参加し、方向性や考え方にアドバイスを提供します。そしてこうした時間を経て3日目の最終プレゼンテーションを迎え、そこで最優秀チームと2人の最優秀者が決まるという流れです。参加者は、この2泊3日で、さまざまなバックグラウンドを持ったメンバーと出会い、自分の意見を伝えながら、それまでに経験したことのない濃密な時間を過ごすことで、がらりと変わります。傍から見ていてもそれは明らかで、感動を覚えるほどです。

――他のビジネスコンテストとの大きな違いはどこにあるのでしょうか。

安立氏:まず、テーマがヘルスケアに限定されていること、2泊3日で宿泊を伴うワークショップであること、それから、すべて英語で進行することです。この取り組みを10年以上継続してきました。
 ヘルスケアの分野は世界中で研究者がしのぎを削っていますから、このバイオキャンプをきっかけにグローバルに活躍する人材が育ってくれることを期待しています。さらに研究の力だけでなく、発信力、提案力、さらにはマーケティング力が持つパワーに触れ、視野や考え方を広げる機会になっていると思います。

安立 聖子 氏

――これまでの成果を教えて下さい。

安立氏:国内大会には330名を超える若手研究者が参加してきました。そのなかには、現在起業して企業を経営している人、ファンドやコンサルティングファームで働いている人、大学で教えている人など、さまざまな人がいます。医学部を卒業して医師になる、薬学部を卒業して薬剤師になる、あるいは製薬会社に勤務するという選択をされる方ももちろんいらっしゃいますが、普通はほぼ進路が決まってきている時期に、一旦枠を外して自分の可能性について考えた上で、進路を選択する機会となっているようです。
 進路が変わっても変わらなくても、私たちは、バイオキャンプは参加者に多くの刺激を与えるイベントだと自負しています。

参加者同士のつながりはかけがえのない財産

――その他にもバイオキャンプの良さを教えてください。

安立氏:バイオキャンプについて改めて考えてみると、いくつかの大きな意義があると感じています。
 “バイオキャンパー”と私たちが呼んでいる参加者同士や、審査員の方とのネットワークはかけがえのない財産ですし、多くのバイオキャンパーが、バイオキャンプを通じて多様な人と出会い、ワークショップを通じて成長できたと感じてくれることも重要な点です。彼らの中には、バイオキャンプを「Life changing event!(人生に大きく影響を与えるイベント)」と表している人たちもいて、主催している私たちも勇気づけられます。
 また、社内への影響もあります。バイオキャンプにはさまざまなバックグラウンドを持った社員もファシリテーターなどとして参加するのですが、彼ら自身、参加者のチームが大きな力を発揮することに、非常に刺激を受けています。バイオキャンプは当社の社員にとっても重要なイベントなのです。

――今後の展望をお聞かせ下さい。

安立氏:グローバルで活躍する人材の育成に貢献したいという思いは今後も変わりません。
 ヘルスケアの世界は秒単位で進展しています。科学は今後も私たちの想像を超えて進化し続けていくでしょう。そして、それを支えるのは、病気を抱えている患者さんの役に立ちたいという強い思いや、どうしたらその思いを実現できるかを考え、実行に移していく私たち一人ひとりの行動力です。こういった思いと行動力を共有し、私たち自身も、社会に貢献していければと考えています。
 バイオキャンプはとても大きなミッションを抱いていることを、今、改めて実感しています。ぜひ多くの優秀な若手研究者にバイオキャンプに応募していただきたいですし、また、大学などアカデミア関係者の方にもバイオキャンプを知っていただき、参加の後押しをお願いできればと思っています。

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ノバルティス ファーマ ホームページ
https://www.novartis.co.jp/