一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブル 代表理事 滝川クリステルと考える 生物多様性を守るために今、できること

一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブル 代表理事 滝川クリステル
一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブル代表理事滝川クリステル
©阿部雄介

地球上には、動植物から細菌などの微生物にいたるまでさまざまな生き物が存在しています。
また、同じ種でも異なる遺伝子を持つことにより、形や模様、生態などに多様な個性があります。
そして、すべての生き物は、森林や河川などの多様な生態系の恩恵を受けながら生きています。
生き物たちの多様な個性とつながりは、生物多様性と呼ばれています。

この生物多様性が、開発や乱獲といった人間の活動によって大きな危機にさらされています。
生物多様性を守るために、私たちに今できることはどんなことでしょうか?
地球上でもっとも生物多様性の豊かな場所の一つであるボルネオ島の熱帯雨林。
そこを訪れた経験を持つ滝川クリステルさんにお話を聞きながら、一緒に考えてみましょう。

一面に広がるプランテーションに絶句

——滝川さんが、生物多様性の保全について発信するようになったきっかけを教えてください。

滝川クリステルさん(以下滝川):2010年に愛知県名古屋市で生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催されました。私はその前年、COP10の広報組織「地球いきもの応援団」の一員にさせていただいたため、メディアを通して生物多様性の重要性を分かりやすく、より多くの人に伝えていこうと決意しました。

そこで、まずしなければならないと思ったのは、現場へ行くことです。見て、感じて、知った上で、伝えていきたい。なかでも生物多様性の危機が深刻といわれるボルネオ島の熱帯雨林をこの目で見ておきたいと思い、取材に行くことになりました。

インタビュー写真

——マレーシア・サバ州、ボルネオ島の北東部に広がる熱帯雨林を訪れたのは2010年の乾季とお聞きしました。どんなことが印象に残っていますか?

滝川 最初は小さなボートに乗り、キナバタンガン川流域でたくさんの動物たちを見ることができました。10頭くらいのボルネオゾウの群れに遭遇したときは、思わず興奮してしまいました。森には燃えるような緑が広がり、手つかずの自然がどこまでも広がっているように見えました。ボルネオの熱帯雨林がどのように開発されているのかは、川や地上から見るだけではわからなかったのです。

そこで、ヘリコプターに乗り、上空から森を見下ろすことになりました。そこには、言葉を失ってしまうほどの衝撃的な光景が広がっていました。自然のままの熱帯雨林が残っているのは、川の両岸のわずかな部分。はるかに広がる緑のほとんどはアブラヤシでした。ボルネオゾウの群れに出逢えたのも、開発が川沿いギリギリまで進み、生息地が狭まっているためにゾウが川沿いまで追いやられているからだったのです。

ボルネオ島の写真
©阿部雄介

二度とは戻らない森と生き物たち

——1970年代にはボルネオの86%を覆っていた熱帯雨林が、2005年には60%に減少し、残っている原生林はわずか数%程度だそうです。なぜ、熱帯雨林の伐採がここまで進んでしまったのでしょうか?

滝川 国策としてパーム油の生産が推奨されたことなど、理由はいくつかありますが、かつて「熱帯雨林の樹木は無尽蔵でいくらでも回復する」と考えられていたこともあったからだと聞きました。樹木は森の生態系と結びついていて、いったん失われたら簡単にはもとに戻りません。「無知」とは、とても恐ろしいものだと感じました。

この地でも1963年に法律ができ、野生動物の保護が始まりました。現在もボルネオ保全トラスト(BCT)が中心となり、「緑の回廊」計画や野生動物救出プロジェクトが行われています。そこで働く人々にお話を聞くことで、危機的状況は続いているけれど、未来は決して暗くはないと気づくことができました。

——「緑の回廊」計画や野生動物救出プロジェクトの取り組みについて教えてください。

滝川 野生動物には、生息に最低限必要とされる川沿岸の森と、分断された熱帯雨林を結ぶ移動路が必要です。BCTは、サバ州キナバタンガン川沿岸にわずかに残る私有地の森を買い取ることで森林保護区をつなぎ、熱帯雨林を一つに結ぶ「緑の回廊」計画を推進しています。緑の回廊が確保できれば、ボルネオゾウが群れからはぐれたり、オランウータンの子どもが親と離れたりすることを防ぐことができます。

ボルネオ島の写真
©阿部雄介

また、プランテーションの拡大により、生息地を追われ傷ついた野生のボルネオゾウやオランウータンを救出して森へ返す試みが野生動物救出プロジェクトです。罠が絡まり足や鼻を締めつけられ痛みに苦しむゾウを救出し、縄を取り除くなどの処置を行ったり、分断された森に隔離された餓死寸前のオランウータンの母子を捕獲して保護林に放つなどの活動を行っています。