“明日”をつむぐテクノロジー special

東芝が目指すデジタルツインと次世代ものづくり 製造と使用の両面でモノを捉え最適化と価値創造を目指す

※記事中の情報につきましては、すべて取材時点のものとなります。
製造業の改革が進む中、東芝は、製造を意味する「ものづくり」と使用を意味する「ものづかい」の両面を包含した「次世代ものづくり」を構想。IoTアーキテクチャー「SPINEX」(スパインエックス)のもと、デジタル空間にモノを精緻に再現する「デジタルツイン」などの技術とソリューションを通じて、ものづくりの未来に挑む。
甲斐 武博 氏 東芝デジタルソリューションズ株式会社 インダストリアルソリューション事業部 デジタルトランスフォーメーション推進部 部長

ものづくりの変革に向けた取り組みが世界的に活発化する中、自らもものづくりを手掛ける東芝は、IoTとICT(情報通信技術)を核とした「次世代ものづくり」を提唱する(図1)。

次世代ものづくりが包含する領域は2つだ。1つが、製品の製造段階や生産現場を対象にした狭義の「ものづくり」である。いわゆる、インダストリー4.0、スマートファクトリー、工場IoTなどが対象とする領域である。デジタル技術の活用によって、基本となる生産性や品質の向上だけではなく、ベテラン技術者が暗黙知として持つ技術や技能を定量化および形式知化し、共有や伝承を図っていく。

もう1つが、出荷された製品が市場でどのように使われているかを意味する「ものづかい」の領域である。例えばクルマであれば、どのような環境(温度や天候)の中で、どのような状態の道路を、どのような運転で走ったかがものづかいにあたる。製品の品質や寿命は使用条件によっても大きく左右されるからで、上流ともいえる製造局面(ものづくり)と同じように、下流となる使用局面(ものづかい)も重要との考えである。

「ものづくりとものづかいとをデジタル技術を使って統合的に把握することで、ライフサイクルを通じた製品個体の真のトレーサビリティの実現や、使い方や運用までを含めたトータルな最適化が図れ、結果的にこれまでにない価値を創造できると考えています」と、東芝デジタルソリューションズの甲斐武博氏は取り組みの狙いを説明する。

図1 「ものづくり」と「ものづかい」の両面で革新を目指す東芝の「次世代ものづくり」
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情報収集から利活用までをソリューションでサポート

東芝は次世代ものづくりを実現するために、「情報収集」、「情報蓄積」、「情報活用」という3つのレイヤーを定め、それぞれに対して「Meister(マイスター)シリーズ™」と名づけたソリューションを提供中である(図2)。

情報収集を担うのが製造業向けのIoTソリューション「Meister IoT™」である。IoTのセンサーやゲートウェイにインテリジェント性を持たせたいわゆるエッジコンピューティングに対応するとともに、センシング機能を持たない既存の設備や、データ形式が異なるさまざまな機器からの情報も統合的に収集する。

情報蓄積を担うのがものづくり情報プラットフォーム「Meister DigitalTwin™」である。キーコンテナ型データの格納に適した東芝独自のデータベース「GridDB」を基盤に、生産管理などのビジネスデータと、フィールドを含む現場から収集した生産設備の状態や温度などのファクトデータを、あらかじめ定義したデータモデルに基づいてひも付けを行い、用途に応じたデータマートを構成するのが特徴だ。デジタルツインに関しては後述する。

情報活用に対しては、見える化ソリューション「Meister Visualizer™」とビッグデータ分析・活用ソリューション「Meister Analysis™」を提供する。Meister Visualizer™は各種のデザインテンプレートやAPIを搭載し、職制や評価指標に応じたリアルタイムの見える化を実現する。Meister Analysis™は複数因子の関連性から、不良要因や異常を明らかにする分析ツールである。

以上のソリューションは、トータルな導入だけではなく、ニーズに応じた部分導入ももちろん可能だ。

図2 次世代ものづくりの実現に向けて提供するMeisterソリューションの位置付け
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製品をデジタル空間に写像するデジタルツイン

次世代ものづくりにおいて重要な役割を占めるのが、製造時や使用時に起きたこと、および、今起こっていることを把握して、デジタル空間上での再現を目指す「デジタルツイン」である。東芝はIoT全体のコンセプトを「SPINEX」(スパインエックス)と名付けているが、このデジタルツインはSPINEXを特徴付けるテクノロジーの1つにあたる。

「デジタルツインとは、ある1つの製品が作られてきた過程すべてと、その製品が使われてきた過程すべてを、デジタル上に精緻に写像し再現する仕組みです」と甲斐氏は説明する。

商品企画、開発、部品調達、関わった設計者や製造担当者、製造設備の状態や使用工具、周囲の温度湿度、工程や日時、検査内容や検査結果、出荷や据え付け、稼働状況や保守点検履歴など、個別製品にまつわるさまざまなデータを高精度にひも付けすることで、その製品が製造されてきた過程を遡ったり、あるいは今後起こり得るであろう故障を予知し、バリューチェーンや製品ライフサイクルの最適化と、モノとコトの両面での品質管理の実現を図る。

製品を構成する原材料や部品のロットなどを記録しておき、必要に応じて遡る従来の製造トレーサビリティの考え方を究極まで推し進めた概念ともいえる。

個別の製品につながっているひもを引っ張ると、あらゆるデータが一意に抜き出されて出てくるイメージだが、幅広いデータの収集、例えばデータ取得時の時刻の補正などデータの整合、データモデルの定義とデータ間のひも付け、データマート(データベースから特定目的に合わせてデータを抜き出したもの)の構築、必要に応じたそれらのビジュアライズなど、実現には多くのハードルがあるのも事実である。

東芝は、多種・多様なデータをリアルタイムにひも付けできるスケールアウト型データベースGridDBを基盤とし、データモデルの定義や、用途別データマートの生成機能を備えるMeister DigitalTwin™(図3)を通じて、デジタルツインの実現に取り組んでいく。

図3 デジタルツインを実現する「Meister DigitalTwin™」
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次世代ものづくりの実現に向けた導入が進む

「東芝が考える次世代ものづくりは、実証を重ねながら実践フェーズへと進んでいます」と甲斐氏は述べ、次のような事例を挙げた。

あるFA用制御機器の製造工場では、プリント基板の面実装ラインでMeister Analysis™を活用し、各工程から集めた複数データの相関を探って品質向上に向けた検証を行った。品質部門のベテランスタッフにとっては当たり前の分析結果であっても、Meister Analysis™で形式知化が図られたことで、若い担当者の理解が進んだという。

業界団体のIVI(インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ)で行われ、東芝も参加した実証プロジェクトでは、自動車工場において車体を持ち上げるリフターの故障予知に、Meister IoT™Meister DigitalTwin™、およびMeister Visualizer™が用いられた。評価用のリフターに振動センサーなどを後付けしてデータを収集し、正常時のデータ分布と異常時のデータ分布から故障の予兆を検知しようという試みで、およそ2カ月という短期間で検知の実現を得た。

また、ある工作機械メーカーは、自社装置の突発的な故障の予兆を見つけるために、Meister IoT™とMeister DigitalTwin™を用いて分析を進めているという。

ものづくりの新たな変革にIoTとICTで取り組む

ものづくりにおいて創業以来140年を超える実績と経験を持つ東芝。ものづくりの上流から下流までを知っていることを強みとし、また、生産技術に関する専門部署である東芝 生産技術センター(横浜市磯子区)との連携のもと、次世代ものづくりの実現に向けた取り組みを進めていく考えだ。

「東芝IoTアーキテクチャーSPINEXに基づく次世代ものづくりはまだまだ進化を続けています。デジタルツインの概念を通じて未来を予測することを含めて、さらなる進化を目指していきたいと思っています。ただし、こうした取り組みはあくまでも手段です。最終的には日本の製造業の競争力向上に貢献できればうれしく思います」と甲斐氏は将来の展望を述べる。

東芝は、いずれはデジタルツインが企業間を超えて広がる社会の到来を想定し(図4)、IoTとICTを活用しながら、ものづくりの継続的な革新に取り組んでいく。

図4 将来のデジタルツイン社会の一例
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【参考資料】
デジタル化時代のビジネスに "いのちを吹き込むIoT"/東芝の〈SPINEX〉
お知らせ
東芝は2017年11月9日(木)から10日(金)、グランドニッコー東京 台場にて開催する「TOSHIBA OPEN INNOVATION FAIR 2017」において、"現場からはじまるデジタルトランスフォーメーション"をテーマに、東芝のIoTやAIに関する展示とセミナーを予定しています。詳しくはイベントのウェブサイトをご参照ください。
お知らせ
東芝は2017年11月29日(水)から12月1日(金)にかけて東京ビッグサイトで開催される「システムコントロールフェア2017/計測展2017 TOKYO」において、東芝が考えるIoTや次世代ものづくりに関するセミナーセッションを予定しています。詳しくはイベントのウェブサイトをご参照ください。
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