“明日”をつむぐテクノロジー special

「新生“東芝”」がIoTで総合力を発揮。現場の知見を生かした「デジタルツイン」で、人・モノが共働する世界を実現

※記事中の情報につきましては、すべて取材時点のものとなります。
「新生“東芝”」グループの総合力で実践してきたIoTを本格展開 —「人を想うIoT」を掲げてきた東芝デジタルソリューションズが動き始めた。IoTアーキテクチャー「SPINEX」(スパインエックス)は実世界を仮想空間上に再現する「デジタルツイン」を実現する。
このデジタルツインは、東芝の2つのAIである、コミュニケーションAI「RECAIUS」(リカイアス)とアナリティクスAI「SATLYS」(サトリス)によって、IoTデータから人・モノを的確に捉え、正確なシミュレーションを行って時間と空間を超えた事象の再現や予測を行う。
東芝のSPINEXは、業務プロセスの変革と新たな事業価値の創造を実現するデジタルトランスフォーメーションを進化させビジネスモデルの革新を目指す。

「新生“東芝”」として新たなスタートを切った東芝は、2017年に、従来の社内カンパニー制を廃し、より独立性を高めた4つの分社会社を中心とした事業体制に再編した。社会インフラ事業領域を担う東芝インフラシステムズ株式会社、電子デバイス事業領域を担う東芝デバイス&ストレージ株式会社、エネルギー事業領域を担う東芝エネルギーシステムズ株式会社、および、デジタルソリューション事業領域を担う東芝デジタルソリューションズ株式会社である。

東芝デジタルソリューションズは、東芝の社内カンパニーの1つであったインダストリアルICTソリューション社と、東芝ソリューション株式会社が統合して誕生した。

同社では、エネルギー、社会インフラ、物流・流通、ビル・施設、ものづくりなどの分野を対象にIoT事業を中核とした、システムインテグレーションやデジタルソリューションを提供している。

東芝が長年にわたって培ってきた業種ノウハウとIoT技術を融合した、東芝IoTアーキテクチャー「SPINEX」は、「デジタルツイン」、「アナリティクスAI」、「コミュニケーションAI」、「エッジコンピューティング」、「IoTセキュリティ」といった要素技術を組み合わせて、見える化、最適化、自動化、さらには自律化を目指すことで、業務プロセスを革新し、新たな事業価値の創造を実現していく(図1)。

図1 東芝のIoTアーキテクチャー「SPINEX」
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デジタルトランスフォーメーションをテーマに
TOSHIBA OPEN INNOVATION FAIR 2017を開催

東芝デジタルソリューションズは、同社が実践してきたIoTのユースケースとテクノロジーを分かりやすく示す場として、2017年11月9日(木)〜10日(金)にグランドニッコー東京 台場にて「TOSHIBA OPEN INNOVATION FAIR 2017」を開催した。

デジタル化により、企業活動や社会活動を大きく変革し、新たな価値を創造していく、いわゆる「デジタルトランスフォーメーションの進化」(図2)を見据え、IoTやAIなどがもたらす新しい価値を、先端事例を交えながら、講演と展示を通じて体感していただきたいとの思いが会場全体を包んでいた。

外部の講演者を含めて延べ120本の講演やセミナーが行われた中で、東芝のIoTに対する戦略的な取り組みを、東芝 執行役専務 兼 東芝デジタルソリューションズ 取締役社長の錦織(にしこり)弘信氏が「東芝が新たに目指すデジタルトランスフォーメーションの世界」と題して基調講演を行った。

錦織氏はまず社会を取り巻く状況の変化を示しながら、IoTは2015年ごろから実用段階に入り、世界的に導入が急速に進み始めている一方で、日本ではまだ「キャズム」(初期市場からメインストリーム市場の間に存在する深い溝)があり、これを超えることが大きな課題になっているとの認識を示した。

※ 関連するアプリケーション事業や制御装置なども含む
図2 新たな価値創造を目的に、東芝が目指すデジタルトランスフォーメーション
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デジタルツインエコノミーの実現を目指す

続いて、錦織氏は、東芝IoTアーキテクチャー「SPINEX」を構成する主な要素技術を紹介した。

東芝の特徴を示す技術として、実世界を仮想空間上に再現する「デジタルツイン」が紹介された。製造データや環境条件、原材料、作業者、ERPや調達計画、顧客情報、サポート履歴など、“ものづくり”や“ものづかい”にまつわるさまざまな情報を関連付けて時系列に蓄積する統合データモデルを提供することで、時間と空間を超えてコンピュータ上で複雑な事象を再現し予測まで行えるという。東芝は、モノのデジタルツインだけではなく、人のデジタルツインまで実現し、熟練者の技術や知見を継承して、人とモノが最適に共働する世界を実現するとの壮大な構想を描いている。

そこで必要な技術がAIである。音声認識や画像認識などを得意とするコミュニケーションAI「RECAIUS」と、ディープラーニングにより精度の高い推論を得るアナリティクスAI「SATLYS」の2つのAIを組み合わせることにより、高度なサービスを実現し、お客様やパートナーとのグローバルな「共創(きょうそう)モデル」を構築しながら、複雑化する社会の課題を解決していく考えを示した。

共創の事例の中では、Factory-IoTによって世界130カ国の工場で30%の生産性向上を目指す、株式会社デンソー 専務役員の下川 勝久氏から、「新生“東芝”」への期待を寄せたビデオメッセージも紹介された。

錦織氏は最後に、「IoT、AI、デジタルツインといった、デジタル産業革命により日本を元気にしていきたい」と述べるとともに、「『新生“東芝”』としての総合力により、新たな価値の創造に努めていく」と結んで講演を終えた。

写真 TOSHIBA OPEN INNOVATION FAIR 2017で基調講演を務める、
         東芝 執行役専務 兼 東芝デジタルソリューションズ取締役社長の錦織弘信 氏
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具体的な実践事例の展示に関心が集まる

TOSHIBA OPEN INNOVATION FAIR 2017の展示会場では、展示スペースのおよそ半分を「ユースケース」ゾーンとし、エネルギー、社会インフラ、物流・流通、ビル・施設、ものづくりをテーマとしたコーナーがそれぞれ設けられ、IoTソリューションの応用形態やデジタルトランスフォーメーションの具体的な実践事例が示された。

例えば、ものづくりコーナーにおいては、デジタルツインを実現するものづくり情報プラットフォーム「Meister DigitalTwin(マイスター・デジタルツイン)」や、物流・流通コーナーにおいては、作業者の腕に装着した活動量計のデータからアナリティクスAI「SATLYS」により動きを推論し、カメラを用いないで倉庫内の作業を見える化する「作業行動分析ソリューション」が展示された。

一方、残り半分を占めた「テクノロジー」ゾーンでは、テクノロジーの応用としてドローンから送られてくる映像を「SATLYS」により分析して高圧送電線の損傷を自動的に検出するアルパイン株式会社との共創活動や、同じく「SATLYS」を活用したスポーツ映像の自動分析技術を産業分野へと応用した取り組みや、「RECAIUS」を用いて複数の監視カメラ映像をまたいで人物を追跡する「人物ファインダ」など、新しいテクノロジーも展示され、多くの来場者の関心を引いていた。

IoTを活用することで、東芝の得意分野であるエネルギー、社会インフラ、ものづくり分野を皮切りに、今後の成長が期待できる展示となっていた。

写真 ものづくり、エネルギー、社会インフラ、物流・流通、ビル・施設の5コーナーに
         分けられたユースケースゾーン
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写真 SATLYSを活用して、ドローンの撮影映像から送電線の損傷を自動的に検出する
         電力インフラ向けのソリューションなどが展示されたテクノロジーゾーン
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総合力でデジタルトランスフォーメーションを進化させる

東芝デジタルソリューションズは、IoTアーキテクチャー「SPINEX」を軸に、コミュニケーションAI「RECAIUS」やアナリティクスAI「SATLYS」を活用しながら、効率化などによるコスト削減と、新サービスの創出による価値創造の両面を提案し、最終的にはビジネスモデルを革新するデジタルツインエコノミーの実現を目指していく考えだ(図3)。

図3 東芝のAIとデジタルツインで新たな価値を創出
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志田 弘一 氏 東芝デジタルソリューションズ株式会社 商品統括部 商品・技術プロモーション担当

東芝デジタルソリューションズ 商品統括部の志田弘一氏は、「錦織が講演で述べたように、日本を元気にしていくためにも、多くの課題を持つ日本の産業界に東芝IoTアーキテクチャー『SPINEX』による新たな価値の提案をしていきたいと考えています。たとえば、熟練者やベテランが持っている暗黙知をIoTとAIで形式知化し、匠の技を再現できれば、技術継承の課題解決が図られるとともに、人材不足の解消にもつながるでしょう」と語る。

中島 一雄 氏 東芝デジタルソリューションズ株式会社 プロダクト&マーケティング部 部長

また、同社プロダクト&サービスマーケティング部の中島一雄氏は、「自ら“ものづくり”を行ってきた知見を生かして、お客様と同じ目線・同じ言葉で対話できるところが東芝グループの強みです。お客様やパートナーとの共創を通じて、AIやデジタルツインなどのテクノロジーを活用しながら、お客様のデジタルトランスフォーメーションを支えていきたい」と述べる。

「人を想うIoT」を掲げる東芝は、IoTアーキテクチャー「SPINEX」により、IoT事業の成長とともにビジネスモデルの革新に向け進んで行く。

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