“明日”をつむぐテクノロジー special

従来産業にも新しいテクノロジーの波を。エッジリッチなIoTを実現。統合型の産業用コントローラが新たな可能性を切り開く

※記事中の情報につきましては、すべて取材時点のものとなります。
東芝は、高信頼かつ高堅牢(けんろう)な産業用コンピュータに産業用コントローラ機能を統合した、ユニファイドコントローラ nv-packシリーズ「typeFR」を開発した。鉄鋼に代表される重厚長大産業や、運輸・交通や上下水道などの社会インフラシステムにもIoTのような新しいテクノロジーの風を呼び込みたいとの考えのもと、エッジコンピューティングを通じて新たな可能性を提案する。
岡庭 文彦 氏 東芝インフラシステムズ 株式会社 産業システム統括部 計装機器事業統括

鉄鋼や大規模プラントなど重厚長大産業や、運輸・交通や上下水道などの社会インフラシステムにも、IoTやビッグデータ活用などの最新テクノロジーを導入しようという機運が高まってきた。

現場のムダの見える化や効率化、品質の向上、設備や機器の状態把握や予兆保全、従業員の動線把握や安全確認など、IoTを導入することでさまざまな効果を得ようという狙いである。

ただし、製鉄所や化学プラントのように、24時間365日の連続稼働が当たり前の現場や、設備やシステムを20年以上の長期にわたって使い続けている現場もあるため、一般の製造業向けに開発されたIoTソリューションをそのまま適用するのが難しい場合も多い。

そうした課題に対して東芝が提案するのが、産業用コントローラと産業用コンピュータとを一体化したユニファイドコントローラ nv-packシリーズ「typeFR」(写真)である。

「あらゆる産業分野にIoTやビッグデータなどの新しい波が押し寄せている今、こういうことはできないだろうか、ああいうことができないだろうか、といったお客様の課題や要望を一緒になって解決していくための手段の1つとして開発した製品です」と、東芝インフラシステムズの岡庭文彦氏は開発の狙いを説明する。

写真 ユニファイドコントローラ nv-packシリーズ「typeFR」

LinuxベースのリアルタイムOS上でコントローラ機能とWindowsを同時実行

2017年11月28日に発表されたtypeFRは、大規模な工場やプラントなどを対象にした東芝のユニファイドコントローラnv-packシリーズの最新製品だ。産業用コントローラ(PLC)の機能と産業用コンピュータの機能とを一体にしたシステムである。

OSには東芝が開発したリアルタイムLinuxを採用。リアルタイム性を高めたカーネルやCPU割り当て時間の高精度化といった技術的な工夫に加えて、顧客の長期運用をバックアップする保守サポート体制の確立など、信頼性や堅牢性が求められる産業用途においても安心して使えるプラットフォームを実現した。

リアルタイムLinux上のネイティブ環境(コントローラ機能)では、従来のnvシリーズと同様に、ラダー、シーケンシャル・ファンクション・チャート(SFC)、ファンクション・ブロック・ダイアグラム(FBD)、ストラクチャード・テキスト(ST)の各言語を使用可能な東芝のエンジニアリングツール「nV-Tool」が利用可能で、既存の制御プログラム資産をそのまま活用できる。

さらにコンピュータ機能として、ゲストOSのMicrosoft Windows 10 IoT Enterprise上でWindowsベースのアプリケーションを並行して実行できる点がtypeFRならではの特徴だ(図1)。IoTのデータ収集や分析、クラウドとのやりとり、機械学習エンジンなど、さまざまなアプリケーションが考えられる。

なお、仮にゲストOS側でクラッシュなどが発生したとしてもコントローラアプリケーションに影響が及ぶことがないように、メモリ空間の独立性を高めるとともに、プロセッサコアの固定割り当てなどの工夫を行っている。さらに、マザーボードやRAIDコントローラを含むハードウェア、SSDと内部のフラッシュメモリ、リアルタイムLinuxなどはすべて東芝グループ製であり、品質の作り込みが担保されているだけではなく、万が一トラブルが発生した場合のブラックボックス化を回避できる。

図1 typeFRのソフトウェア構造
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現場で収集・分析するエッジコンピューティングを実現

では、なぜ産業用コントローラに産業用コンピュータ機能を統合したのだろうか。岡庭氏はその理由を次のように説明する。

「IoTでは、現場のデータを集め、分析し、その結果を制御にフィードバックしたり見える化を行いますが、制御にフィードバックするにはリアルタイム性が必要で、データをクラウドに上げて分析していたのでは間に合いません。そのような課題に対して東芝は、現場のごく近くで処理をする『エッジコンピューティング』あるいは『エッジリッチコンピューティング』をかねて提唱しており、typeFRはまさにエッジコンピューティングを実現する産業用コントローラといえます」(図2)

もちろん、産業用コントローラと産業用コンピュータをそれぞれ用意すれば同等の環境を実現できるが、typeFRを使えば1台で済み、しかも制御系と収集・分析系との間のレイテンシ(遅延)を抑えられるため、系全体としてリアルタイム性を高められるというメリットが得られる。

「ゲストOSであるWindows上にどのようなアプリケーションを載せるかによって、IoTに限らずさまざまな応用が可能です。typeFRは、重厚長大な現場や社会インフラシステムに新たな可能性を開く、いわばプラットフォームのような存在としてご提案していきたいと考えています」と岡庭氏は述べる。

ちなみに東芝では、コンピュータ、計装、電機制御を一体化した「CIE(Computer、Instrumentation、Electric Control)統合制御システム」を業界に先駆けて1989年に製品化するなど制御システムの統合化に古くから取り組んできた歴史を持っており、今回のtypeFRはいわばその最終形に近い姿ともいえるだろう。

図2 工場のシステム階層においてエッジコンピューティングを実現するtypeFR
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豊富な産業用コンポーネントと総合力が強み

東芝では「SPINEX(スパインエックス)」と名付けた包括的なIoTアーキテクチャーを提供中であり、前述の通り、データをクラウドに上げずに現場に近いところで収集し分析する「エッジコンピューティング」のほか、コンピュータ上のサイバー空間でモノの生産過程や使用過程のコピーを作る「デジタルツイン」、機械学習を分析に活用したアナリティクスAI「SATLYS(サトリス)」、音声認識などを活用したコミュニケーションAI「RECAIUS(リカイアス)」、および「セキュリティ」といった柱となる技術を組み合わせながら、さまざまな業種のさまざまな課題に取り組んでいる。

このうち、産業分野におけるセキュリティに関しては、東芝は2012年に宮城県多賀城市に開設された「技術研究組合 制御システムセキュリティセンター(Control System Security Center)」に創設メンバーの一員として参画。また、計装用のユニファイドコントローラ nvシリーズ "type2" において、ISA Security Compliance Institute(ISASecure)が定めるEDSA(Embedded Device Security Assurance)認証を取得するなど、取り組みを深めている。

また、エネルギー分野、ファシリティ分野、製造分野のそれぞれに対して、「産業の種」として、産業用モータ、蓄電モジュール、計装機器および制御機器、検査装置、ロボットなど、幅広いシステムコンポーネントを提供中だ(図3)。

「typeFRをはじめとするさまざまな産業用コンポーネントだけではなく、東芝の他のカンパニーが提供しているソリューションや、エンジニアリング会社のTMEIC(東芝三菱電機産業システム)の実績と経験も含めた総合力で、お客様にリアルなIoTと価値を提案・提供していきます」と岡庭氏は展望する。

東芝はコントローラとコンピュータとを統合したtypeFRによって、既存の産業やシステムにも新たな可能性を提案する。

図3 付加価値の高い産業用コンポーネントを中心に
        さまざまな分野に対応したソリューションを提供
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