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東芝のメディアインテリジェンス技術を統合 スマホ充電機能を備えた東芝のサイネージ充電中に広告などを効率的に配信

※記事中の情報につきましては、すべて取材時点のものとなります。
もはや生活のライフラインの1つにもなったスマートフォンだが、外出先でのバッテリー切れに不安を感じるユーザーも多く、コンセントが使える電源カフェなどの人気が高まっている。東芝はデジタルサイネージを組み込んだ充電スタンドを提案。充電中に広告やキャンペーンを見てもらうという狙いで、ショッピングセンターでの実証実験も進めている。インバウンド(訪日外国人旅行者)も対象にした集客モデルとして提案する。
三上 茂 氏 株式会社 東芝 インダストリアルICTソリューション社 IoT&メディアインテリジェンス事業開発室 メディアインテリジェンス事業開発部 事業開発第一担当 主務

若者を中心に普及が進むスマートフォン。総務省発表の「情報通信端末の世帯保有率の推移」や「平成27年版 情報通信白書」によれば、2014年(平成26年)の世帯普及率は対前年比1.6%増の64.2%、個人ベースでの普及率は52.1%となっており、数字の上では乳幼児から高齢者まで含めた国民の2人に人1人が利用していることになる。

天気予報、乗り換え案内、地図、ナビゲーションや交通情報、ニュース、電子メール、SNS、ゲームなど、アプリによってさまざまな情報が得られるスマートフォンはもはや人々の生活に欠かせないものとなっていて、電気や水道に準じるライフライン的な存在ともいえるだろう。

利便性の高いスマートフォンでネックとなるのが充電だ。外出中にバッテリー残量が低下していくにつれて不安を覚えるユーザーも少なくない。ある調査によれば、バッテリーの残量が55%を下回ったあたりから不安を感じ始める人が増え、20%を下回ると半数以上が大きな不安を感じるといわれている(図1)。

図1 不安を感じるスマートフォンのバッテリー残量
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そのため、外出先での充電ニーズを集客につなげようと、コンセントの利用を積極的に開放する飲食店も増えてきた。

東芝が提案するのが、スマートフォンの充電中「ついサイネージを見てしまう」状況をつくる新しい集客モデルである。

「充電サービスを無料で提供すると同時に、デジタルサイネージを通じて広告やキャンペーンを展開することで、集客効果と広告効果の両方を高めようという狙いで発想しました」と、東芝 インダストリアルICTソリューション社の三上 茂氏は説明する。

利用者の属性を識別して広告配信を効率化

「給電サイネージ」と呼んでいる東芝の次世代デジタルサイネージは、ホテル、鉄道駅、コンビニ、ショッピングセンター(モールやコンプレックス)、観光スポット、公共施設などに設置するシステムだ(図2)。利用者は充電ケーブルをつないで自由に充電することができる(給電サイネージ本体からスマートフォン各機種の充電ケーブルを直接出す形態と、USBポートを提供する形態のいずれにも対応可能)。

図2 東芝が集客モデルとして開発した「給電サイネージ」の外観例
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スマートフォンを預け置く仕組みではないため、利用者は充電中に給電サイネージから離れることは基本的にないと考えられる。その待ち時間にサイネージ画面に表示される広告や、タッチパネル画面の操作でキャンペーンなどの情報を見てもらおうという狙いだ。将来は、必要に応じてレシート型プリンタでクーポン券などを発行することも可能となる。

「一般的なデジタルサイネージより給電サイネージは充電待ちの間に見てもらえる可能性が高く、広告やキャンペーンの効果を出しやすいのではないかと見込んでいます」(三上氏)

広告の配信効果を高めるために、東芝が独自に開発した音声・映像活用クラウドサービス「RECAIUS(リカイアス)」(図3)のエンジンを使って人を認識する人物ファインダを給電サイネージに搭載し、広告視聴調査が可能となっている。

図3 東芝のメディアインテリジェンス技術を結集して音声や映像から人の意図や状況を
        理解する「Recaius」
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RECAIUSは、東芝が1960年より長年にわたり研究してきた音声・画像認識の技術とノウハウが集大成されたクラウドサービス。RECAIUSの他社に秀でた特徴は、音声と画像認識技術を融合したクラウドサービスが提供できることだ。公共施設での画像認識による人物認識(人物ファインダ)など、人の状況認識だけでなく人の意図まで理解することができ、さまざまなシーンで新たな価値を創出するサービスを提供している。

給電サイネージにおいてはこのうちの人物ファインダ機能が用いられる。すなわち、ディスプレイ上部に組み込まれたカメラを用いて、給電サイネージの前にいる利用者の人数や性別、年齢層、表情を認識し、利用状況の把握や広告配信の効率化に生かそうという狙いだ。もちろん個人を特定する情報は保持しない。

RECAIUSを使えば利用者の属性を認識して表示コンテンツを自動的に切り替えることもできますが、給電サイネージは複数の充電ケーブルまたはコネクタを備えているため、同時に複数の利用者がサイネージの前に立つ可能性が高いと考えられます。そのため、どういった属性の人が利用するか、どういう広告に好反応を示すか、といったことを知るためにRECAIUSを活用し、広告枠の価値を高めようという狙いです」(同氏)

このほか、最高375Mbpsのデータレートによって動画などさまざまなコンテンツを高速に配信できる近接無線の「TransferJet」のトランシーバを組み込んでおけば、その施設限定のプレミアムコンテンツを配信することも可能だ。また、Wi-Fiルーターを組み込めばフリーWi-Fiスポットとしてサービスを提供することもできる。災害時には緊急情報の表示にも役立つだろう。

ショッピングセンターなどで実証実験

東芝は、給電サイネージが実現する集客モデルを検証するために、ショッピングセンターなどに給電サイネージの試作システムを設置し、利用者の反応や意見をモニタリングする予定だ。

「訪日外国人旅行者も多く来場する施設ということもあり、スマートフォンの充電に対するニーズやサイネージでどのようなコンテンツを見たいかなど、旅行者も対象にさまざまなアンケートを取って、今後の実用化に生かしていく予定です」と三上氏は述べる。

また、アジアを中心とした訪日外国人旅行者向けのバスツアーコースにも入っている都内の大型ショッピングセンターに給電サイネージを4日間にわたって設置し、誘客効果の検証を実施した。また、公共施設でも同様のモニタリングを計画中だという。

三上氏は給電サイネージの価値を次のように説明する。「スマートフォンは、私たちの生活だけではなく、訪日外国人旅行者が日本での旅を楽しむ際にも不可欠なツールといえます。当社の給電サイネージによって施設やショップの利用者が増え、また効果的な広告をサイネージ画面に表示できれば広告枠の価値も上げられるでしょう。システム自体はほぼ完成していますので、そうしたサービスモデルをさまざまな施設に提案していきたいと考えています」。

2020年に向けてインバウンドのさらなる増加が見込まれており、街中での充電ニーズはさらに高まっていくだろう。東芝は給電サイネージを通じて充電インフラの拡充に努めていきたい考えだ。

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