“明日”をつむぐテクノロジー special

IoTによる製造現場の革新オムロン草津工場と共に挑む東芝の技術

※記事中の情報につきましては、すべて取材時点のものとなります。
生産現場の革新を進めるオムロンは、次世代ものづくりソリューション Meisterシリーズをベースに同社の草津工場の生産現場で発生する膨大なデータを分析。IoTによる現場革新で、さらなる品質改善に向け、基板単位での工程条件の見える化や設備状況の定量化といった成果を得ている。
本条 智仁 氏 オムロン株式会社 商品事業本部 コントローラ事業部 HMIPMG長(兼)コントローラPMG長 経営基幹職

ITの力でものづくりの革新を進めようという、いわゆる「第四次産業革命」に向けた動きが盛んだ。そのような中、東芝は、IoTやビッグデータを活用した次世代ものづくりソリューションの拡充に取り組んでおり、「Meister(マイスター)シリーズ」を提供している。

その最新ソリューションが、生産現場で生まれる膨大なデータをビッグデータ分析によって品質改善に反映する、ものづくりBigData分析・活用ソリューションである。

ものづくり現場の革新を進めるオムロンは、FA用コントローラを製造する同社草津工場(滋賀県草津市)において製造ビッグデータを活用した製造ラインの生産性向上に取り組んでいる。草津工場での生産品目は実に4千種以上あり、その表面実装プロセスと検査の1日のデータ量を2014年度の8万4千件から2015年度末には52万件にまで増加させる見通しとなっている。これを踏まえ、同社は2015年1月より、東芝とともに同工場の基板生産ラインの品質改善に向けた取り組みを開始した。

水島 謙二 氏 オムロン株式会社 商品事業本部 草津工場 製造部 実装課 主査 障子 顕駿(あきとし) 氏 オムロン株式会社 商品事業本部 草津工場 製造部 実装課

「草津工場では、自社開発のコントローラを活用して自社工場のものづくりの革新に向けた実証実験を行うことで、製品のQCD※1の向上や生産現場の課題解決事例作りを進めています。コントローラで吸い上げている生産データをどのように活用すべきかを検討する中で、東芝より歩留り向上に向けて生産現場のデータを活用して不良要因を分析する、という提案がありました。これが当社の考えと一致、実証することにしたのです」と、製品企画を担当する本条智仁氏は今回の経緯を説明する。東芝には特定の結果に至る複合的な事象の発生パターンを抽出する『事象パターン分析』という分析技術があり、不良発生原因の分析に有効と判断して導入を決めたという。

また、基板生産ラインを束ねる水島謙二氏は背景を次のように述べる。「ラインの品質はこれまで培ってきた経験や知見によってある水準を維持していましたが、不良の絶対数をさらに一桁抑えたいと以前から考えていました。生産設備などから収集したデータを分析・活用すれば、品質レベルをもう一段高められるのではないかとの期待がありました」。

1) QCD:Quality(品質)、Cost(価格)、Delivery Time(納期)の頭文字をつなげた略語。生産管理において重視すべき要素。
図1 ビッグデータを活用した生産品質改革への取り組み
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基板個々の見える化を推進。現場の肌感覚に沿った機能を実装

今回のオムロンの取り組みは図1のとおりだ。基板生産ラインを構成する各装置からさまざまなデータを収集し、社内の製造実行システムのデータと合わせてビッグデータシステムに格納。それらのデータを東芝はものづくりBigData分析・活用ソリューションを用いて分析および見える化を行っている。

「ラインを流れる過程で個々の基板に何が起きているのかを知るために、それぞれの装置に入った時間および出た時間や、部品実装の位置補正データなど、装置メーカーの協力ももらいながら、取れる限りのデータを収集するように努めました」(水島氏)。

なお今回、オムロンは、ビッグデータ分析を元に品質に関する新たな知見を求めるところまで一気に飛躍するのではなく、まずは個々の基板に何が起こったかを明確にするなど、現場に役立つ見える化をして欲しいと東芝に求めた。

東芝は、製造プロセスで発生するログやセンサーデータと基板との紐付けを行うとともに、特異な値やその発生パターンを抽出するなどの機能を実装。また、東芝グループとしての強みを生かすべく、東芝 生産技術センターの知見も反映しながら、現場の感覚に寄り添った見せ方を提案するなどの工夫を盛り込んだ。

実証で得た成果を評価。生産現場のデータ活用を本格化

オムロンは今回の取り組みを品質改善の入り口として位置づけており、これによって2つの成果が得られたと評価している。

まずひとつ目が品質情報の定量化と共有だ。改善活動を担当する障子顕駿氏は説明する。「これまでは、例えば工程内でこういった理由で問題が発生したらしい、といった定性的な表現でしか他部署と情報を共有することができませんでしたが、東芝の分析によって基板単位での見える化が実現されたことで情報を定量的に共有できるようになり、よりポイントを絞って改善に取り組めるようになりました」。

図2 収集したデータと不良の相関分析結果がわかる画面(画面提供・オムロン)
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もうひとつの効果は、収集すべきデータの明確化である。設備は正常なデータを返しているにも関わらず、基板が不良となるケースが発見されており、すなわち、不良原因を分析するには現時点で収集しているデータだけでは不十分であることが明らかとなった。今後はデータ収集の網羅性や精度を高めていく考えだ。

さて、今後の展望について本条氏は次のように述べる。「東芝の協力のおかげで、生産現場のデータ活用がいよいよスタートしました。草津工場を見学される当社のお客様も大きな関心を寄せていて、データを分析することで得られる新たな価値をお客様にも提供していければと考えています。今後、東芝のさらなる提案にも大いに期待しています」。

今回の両社の取り組みは、「機械にできることは機械にまかせ、人間はより創造的な分野での活動を楽しむべきである」というオムロンの企業哲学をまさに実現したソリューションといえる。同社のように、生産現場の改善に取り組む企業は、今後増えていくだろう。東芝はこれからもオムロンと共にIoTによる製造現場の革新に取り組み、日本の次世代のものづくりを支えていく。

企業情報

オムロン株式会社
●創業:1933年5月
●資本金:641億円
●売上高:8,473億円(2014年度)
●本社所在地:京都市下京区塩小路通堀川東入
●事業内容:制御機器・FAシステム、電子部品等の開発・販売
●URL:http://www.fa.omron.co.jp/
オムロン株式会社
昭和21年創業。社名の「オムロン」は、本社のあった京都・御室の地にちなんで名づけられた。「制御機器・FA」「電子部品」「車載電装部品」「社会システム」「健康医療機器・サービス」「環境関連機器・ソリューション」を中心に、事業をグローバルに展開。現在「OMRON」は、制御機器分野では世界有数のブランドとなっている。
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