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大腸がんの治療の傍ら、営業職に復帰し勤務を継続

後藤道夫さん、40代、男性
職業:会社員(営業職)
勤務先:沖電気工業株式会社(従業員数3,914名(単独))
健康保険:沖電気工業健康保険組合

2011年12月に大腸(直腸)がん(ステージIV・肝転移)と診断される。腸閉塞のリスクがあり即日入院。翌年1月初めに大腸がん、2月中旬に肝転移の摘出手術を受ける。3月中旬から抗がん剤治療としてオキサリプラチン(エルプラット)+S-1(TS-1)の投与を開始。ビリルビン値上昇による投与休止を何度か経て、2013年1月に8回の投与を完了。2013年10月に再発。複数の肺転移があり手術はできないため、抗がん剤治療を開始。最初の抗がん剤はビリルビン値上昇によりすぐに中止。11月にパニツムマブ(ベクティビックス)を開始。2015年10月に効果がなくなり、レゴラフェニブ(スチバーガ)へ変更したが、副作用が強く入院し、投薬を中止する。2016年1月にTAS-102(ロンサーフ)を開始したが、5月に効果がなくなり中止。再度パニツムマブの投与を開始し、効果を得る。2017年2月にFOLFIRI療法へ変更し、現在も継続中。

・会社の配慮で内勤に異動したものの、営業職へ戻りたいと申し入れて戻してもらった。

・上長と業務に関係がある同僚にはすべての情報を開示し、業務に支障がでないようにした。

・産業医との定期面談で病状を報告し、ときには会社に意見を言ってもらった。また、精神的につらいときに話を聞いてもらった。

あまり気負わずに、普通の生活をできるだけ続けたい

 後藤さんは、2011年11月に下痢が続いて血便があり、消化器内科を受診したところ、エコー検査で腫瘍が見つかった。詳しい検査の結果、12月に大腸(直腸)がん・肝転移の診断を受け、腸閉塞のリスクがあるため即日入院。半日休暇で検査結果を聞いたら会社に戻るつもりだったが、そのまま3カ月休むことになった。

 翌2012年1月初めに大腸がん、2月中旬に肝転移の摘出手術を受けた。大腸はかなり広範囲に切除し人工肛門の可能性もあったが、それはまぬがれた。肝臓には複数の腫瘍があり、約55%を切除した。手術後は2回とも比較的順調に回復して、1週間程度で退院できた。目に見える腫瘍は摘出できたが再発の可能性が高く、抗がん剤治療を行うことになった。

 3月から、オキサリプラチン(エルプラット)+S-1(TS-1)の投与を開始。副作用は多少のしびれがでたが、それほど大きな負担は感じなかった。

 大きな手術を受けたわりには身体は動くし、抗がん剤の副作用もそれほどつらくない。早く職場復帰をしたいと考えて、1回目の抗がん剤投与が終わり退院した翌日に、産業医と面談。その数日後の3月下旬には職場に復帰した。約3カ月休んだが、年次有給休暇などを利用して欠勤はしないで済んだ。

自分の本来の仕事である営業職へ戻りたい

 後藤さんは入社以来ほぼ営業職として働いてきて、罹患時は関連会社に出向中だった。会社が定時退社など負担軽減を配慮してくれて、復帰時には内勤業務へ異動した。

 その後、沖電気本体での人員見直しと、出向先は通勤時間が長いことへの配慮もあって、7月に内勤のまま本体へ異動になった。通勤時間は1時間40分かかっていたのが約20分短縮され、少し楽になった。

 抗がん剤治療では、肝臓を大きく切除したために肝臓への負担が大きく、投与を休止することが何度かあった。そのため治療期間が延びて、2013年1月に8回の投与が終了。CT検査で腫瘍が見つからなかったため、いったん治療終了となった。

 再発の可能性が高いと言われていたが、その時点では体調はよく、身体も動く。内勤ではなく、営業職へ戻りたいという思いが募ってきた。自分は入社以来営業職で働いてきた。営業職が好きというよりも、本来自分があるべき職場に戻って普通の生活を送りたいという気持ちが強かった。直属の上司にも、その上の上司にも何度も希望を伝えていたら、直属の上司に「気持ちはわかっているから、定期異動まで待て」とたしなめられた。そして、2013年4月の定期異動で営業部門へ復帰させてもらった。

 半年ほどは何ごともなく経過し、ひょっとするとこのままなんとかなるのではないかと思っていたところ、2013年10月に再発。肺への複数転移が確認され、手術による治療は不可能になった。さすがに大きなショックを受けて、1カ月くらいは落ち込んだ。ただ、次第に事実は受け入れるしかないと考えて、平常心を取り戻すことができた。

 営業職として働きながら、抗がん剤治療を開始。最初の抗がん剤は、肝臓への負担が強く、すぐに中止した。副作用で脱毛したが、帽子やウィッグは使用しなかった。男性だから、スキンヘッドの人もいる。帽子などを利用すると、いかにもがん患者というイメージになるので、できるだけ自然でいたいと思った。

 11月にパニツムマブ(ベクティビックス)を開始。当初、皮膚障害により顔が赤くなり、出血したが、皮膚治療薬で抑えて治療を継続した。投与による入院と通院以外は、営業職として働き続けた。約2年後の2015年10月にパニツムマブの効果がなくなり、レゴラフェニブ(スチバーガ)へ変更。しかし、副作用の手足症候群がひどく、入院することになり、投与を中止した。

 2016年1月にTAS-102(ロンサーフ)を開始したが、5月に効果がなくなり中止。再度パニツムマブに戻ったところ、効果が認められたのでしばらく継続した。

特例で在宅勤務を認めてもらう

 パニツムマブの効果がなくなり、2017年2月にFOLFIRI療法を開始し、現在も継続中だ。肝機能低下による休止がなければ、2週間に一度、木曜日に通院して点滴を受ける。その後、持続点滴のボトルを携帯して、46時間点滴を継続する。

 ボトルを付けて出勤するのはやむを得ないが、さすがに通勤ラッシュは避けたい。そう考えた後藤さんが時差出勤を申し入れてみたところ、上司が「それなら在宅勤務ができないか」と総務にかけあってくれた。沖電気には在宅勤務制度があるが、本来は介護や育児が対象で、病気は適用外だ。総務からは「産業医の意見を参考にしたい」と言われたが、産業医から「本人の希望があれば、ぜひ認めてほしい」と助言してもらい、例外措置としてボトル装着時の在宅勤務が実現した。総務としては、働き方改革で在宅勤務を検討していたこともあり、柔軟な適用例になると判断したのかもしれない。

 いまはモバイルパソコンと携帯電話があれば顧客とも連絡がつくので、在宅勤務で大きな支障はない。ただ、2週間ごとに2日間は打ち合わせや会議のスケジュールを入れられないことは、少し不便だと感じている。

 また、夏になると在宅勤務はありがたいと思うようになった。持続点滴中は入浴できないため、酷暑の中を歩いて汗をかかずに済むからだ。

 FOLFIRI療法では、投与日より約1週間はだるさがあるが、投与量を調整して、日常生活には影響がないようにした。ただし、白血球数が低下するためにマスクを欠かせない。また、脱毛症状も出てきている。

働けるかどうかは、自分で判断するしかない

 副作用は、抗がん剤の種類や時期により出方が大きく異なるし、個人差もかなりある。後藤さんは、自分がいまどのような状態で、どのくらい働けるのか、何ができて何ができないかをきちんと周囲に発信していくことが重要だと思う。そうしないと、どんどん気を遣われすぎて、何もできなくなってしまう。何ができないかよりも、何ができるかを考えると前向きになれる。ただ、体調がよくないときや治療上都合が悪いこともあり、どこを甘えてどこを頑張るかは、判断が難しい。

 主治医には、「生活に関わることなので、医師から仕事を辞めなさいとは言えません。状況を考えて大人の判断をしてください。会社に使える制度があれば、遠慮なく甘えてください」と言われている。後藤さんは、制度に甘えるよりも自分はちゃんと働きたいと思ってきた。ただ、体調や治療の都合を考えると、在宅勤務のように活用できるものは活用していくしかないとも思う。主治医とは長い付き合いになったが、人間的な魅力があり尊敬できる医師と巡り会えてよかったと思う。

 いまの仕事は、取引先と提携して新しいビジネスを創り出そうという取り組みだ。いまのところ大きな売り上げにつながってはいないが、営業職としてやりがいを感じている。しかし、もう少し身体が動かなくなったら、この仕事は続けられなくなるかもしれない。周囲に迷惑をかけないためには、現場の仕事ができなくなる3カ月前には判断したい。そこで、3カ月ごとに「あと3カ月は大丈夫だろうか」と、自分なりに予測して判断している。3カ月後に続けられないと判断したら、上司に申し入れて現場の仕事を退くつもりだ。

 主治医は、けっして余命の話はしない。個人差が非常に大きいので、余命の正確な予測は不可能だという。がんは、病状と体調が単純に比例しない。病状が悪くても無理なく働けることはあるし、病状がよくても抗がん剤の副作用で働けないこともある。働けるかどうかは、自分で判断するしかない。

業務に支障がないように、上司と同僚には情報を開示

 企業ではチームワークが理想だが、診断を受けた当時は、自分にしかわからない仕事も抱えていた。急に入院することになり、入院中に連絡が来て対応せざるを得ないこともあった。いまはチームで常に情報を共有しているので、後藤さんが出勤できないときは誰かが代行してくれる。ただ、自分が時間をかけて取り組んで来た仕事は、やはり自分の手で調整して進めたい。治療のためにはやむを得ないと思うものの、スケジュールが合わないときに他人に任せることになると残念だ。

 上司と、業務に関わりがある同僚には、情報をすべて開示している。治療のスケジュールと副作用の影響をできるだけ正確に伝え、業務に支障がでないようにしている。社外の取引先や、社内でも業務上それほどつながりがない人には、必要がないため特に詳しくは伝えていない。

 産業医とは、約3カ月に1回の割合で定期的に面談をしてもらっている。面談内容は上司に報告されるので、病状を詳しく報告して産業医から説明してもらう。産業医から、会社の総務に意見を言ってもらうこともあるが、総務は産業医の意見を尊重してくれる。病状が厳しいときなどは、産業医に悩みを聞いてもらうこともある。

 通院のためには休暇が必要だ。また、5年の間に体調不良で休んだことは何度かあった。

 年次有給休暇は年間22日あり、最大44日まで積み立てられる。そのほか、病気やボランティアを目的とした休暇が毎年5日あり、50日まで積み立てられる。後藤さんは、診断時に40日弱の有給休暇と目的別の休暇が50日、それに勤続20年のリフレッシュ休暇が5日あった。そのため、手術のときは3カ月休んでも欠勤しないで済んだ。年度が切り替わる度に22日の有給休暇と5日の目的別の休暇を新たに得られるため、これまでの5年間は欠勤せずにやってこれた。ただ、今年はどうやら足りなくなりそうだ。

 必要以上に心配をかけないように、職場では普通にふるまうようにしている。事情を知っている周囲の人が、変に病人扱いせずに普通に接してくれているところはありがたい。

 会社の人たちは皆やさしい。入院したときは多くの人が見舞いに来てくれた。復職時には負担軽減を配慮され、在宅勤務は特例で認めてもらえた。仕事の厳しさは別にして、人間的にはやさしい会社だと思う。

後藤さんが大切に思うこと

 「がんに負けない」と気負ってみても病状は変わらないし、ずっと闘っていると疲れてしまうと思う。かといって、「もうすぐ死ぬんだ」と絶望しても仕方がない。自分でコントロールできないことは受け入れざるを得ないが、できるだけ自然体で普通に生き続けたい。後藤さんにとって、仕事は普通の生活の一部だ。できる限り普通の生活を続けて、普通に生きていくために仕事を続けたいと思う。

太田さんの事例から学ぶこと

・必要な配慮を求め、配慮されすぎを防ぐには、何ができて何ができないのか、自分の状況を常に周囲に発信していく必要がある。

・制度が整っていない場合でも特例で在宅勤務を認めてもらうなど、相談すれば運用でなんとかなる場合がある。

ある日突然、進行がんの診断を受けた後藤さん。大手術や抗がん剤治療を乗り越えたあとの再発は大きな衝撃だったはずです。しかしその後もさまざまな工夫を重ねて治療と仕事を両立させたプロセスでは、「自然体」「普通」という言葉がキーワードであったことに気づきます。後藤さんにとって、やりがいがある仕事を続けるのは普通のことでした。もちろん、ご自身が指摘するように、病状と体調は必ずしも平行しない場面もあるからこそ、仕事をもっとも理解するご自身による慎重な判断は重要です。しかし、過度に自己規制をするのではなく、かといって頑なに主張を繰り返すのでもなく、主治医・産業医・職場関係者と情報共有や相談を重ね、ご自身が考える「普通」を実現してこられたプロセスがとても印象的です。その自然体のイニシアチブは多くの方の参考になることでしょう。

社内への情報開示、企業風土、業務内容変更、在宅勤務、産業医、有給休暇

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