ワトソンワイアット株式会社
代表取締役社長
コンサルタント
淡輪 敬三 氏
「ガラパゴス症候群」という言葉がある。外部と隔絶された環境に最適化し、固有の進化を遂げたものの、外来種などが上陸すると絶滅する可能性がある状態を指す。よく引き合いに出されるのが携帯電話だ。日本独自の製品として高度に発展はしたが、気づいてみると世界の進化からは取り残されてしまった――。ワトソンワイアット社長の淡輪敬三氏は、日本の置かれたそんな状況について、次のように意見を述べる。
「最近、日本のプレゼンスの低下が非常に気になります。欧米企業の経営者と話をすると、『日本を気にしている場合じゃない』という雰囲気を感じることも多い。もっと重要な成長市場にエネルギーを投入しなくてはいけない、というわけです」。
では、現在のような停滞をもたらした原因はどこにあるのか。淡輪氏はこう続ける。 「良くも悪くも、日本はホモジニアス(均質)な社会。その環境に適応しすぎた結果、外部変化への対応力を低下させてしまったように思います」。
皆が同じ考えを持つホモジニアスな組織は、一面では大きな強みを持っている。特に、擦り合わせ型のものづくりには適合性が高いと言われる。しかし、「勝ち組」とされる製造業にしても、今後はさらにグローバル化を進めざるを得ない。世界と互角の競争をするため、外部環境への対応力を高めるには、日本にしか通用しない組織の仕組みや人に関わる仕組みを見直す必要があると淡輪氏は言う。
「世界における日本のマーケットが相対的に縮小すると考えると、日本企業も今後は成長市場で大きな成果を上げた、多様な能力と価値観を持つ多国籍の人材を数多く登用することになるでしょう。そうしなければ、組織を維持できなくなります。しかし、多様な人材のマネジメントという能力を、これまでの日本企業は磨いてきませんでした」。
一方、中国や韓国などの先進企業は、既に多様性をコントロールする能力を持ち始めていると淡輪氏は言う。
「英語でのコミュニケーション能力1つを取っても、中国や韓国の先進企業のレベルはかなり高い。また、外国人の社員を巻き込んで、チーム全体を目標に向かわせる組織能力や人事制度という点でも、彼らは日本企業の先を走っています」。
日本の平等主義的な人事制度が、強みとなる分野もあるが、将来にわたってそれが有効と考えている経営者は少ないだろう。世界中の優秀な人材を取り込み、そのパフォーマンスを最大化するための手法を進化させ続けている欧米企業、そして中国や韓国の企業に、均質性を前提としたマネジメント手法で対抗できるとは考えにくい。
「このままでは、世界の中で日本企業が埋没してしまうかもしれません。そうなれば、大事にしてきた日本の文化を守ることも、世界に対する貢献もできなくなるでしょう」
淡輪氏が「人事開国」を訴えるのは、そんな危機感ゆえである。しかし、希望はあると淡輪氏は言う。
「世界的に見て、日本人のポテンシャルは極めて高いと思います。その能力をビジネス構造の変革や、多様な人たちをまとめる方向に生かせば十分チャンスはあります。そのための制度的な枠組みを考えるうえで、欧米企業のモデルは参考になりますが、そのまま輸入してもうまく機能しないでしょう。欧米を参考にしながら、いかに次代の日本モデルを構築するか。グローバル競争の中で日本企業が再び存在感を高めるためには、この課題を避けて通ることはできません」。
それは、一朝一夕に解決できるような課題ではない。だからこそいますぐにでも、人事開国に向けた行動を起こす必要があるのだ。
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