NX 6のコンセプトは柔軟性と強靭性,協調性,生産性。もたらすのは,自由かつスピーディーな設計環境である。設計者は,自分のアイデアを即座にモデルに反映させられる。設計開発に関わるデータの再利用性も格段に向上している。また,進化したGUIと様々な工夫によって実現した優れた操作性は,設計や製造以外の部門とのコラボレーションも促進させるだろう。さらに,設計と解析,製造といった一連のプロセスを密に連携させることにより,製品開発におけるイノベーションを加速させるに違いない。
従来型のCADは2つのタイプに分かれる。ヒストリベースのモデリングとノンヒストリモデリングだ。それぞれに一長一短がある。フィーチャを持つヒストリベースのモデリングにはフィーチャやパラメータという形でナレッジを盛り込みやすいが,大きなモデルになると変更対象を探すことや意図した変更を実行することも難しくなり,ほかのユーザーが再利用しづらい。また,当初予測されていなかった設計変更が発生すると,履歴をさかのぼってモデルを作り直す必要もある。その他に,操作性などの問題もあり,設計部門以外で3Dモデルを活用するにはやや難があった。
一方,フィーチャを持たないノンヒストリモデルは,状況に応じて設計を変更するスタイルで編集の自由度が高い。しかし,ナレッジの再利用や設計意図を盛り込むことが難しいというデメリットがあった。
これらの課題に対して,両者のメリットを融合して革新的な設計をサポートするのが,NX 6に搭載されたシンクロナス・テクノロジである。これは履歴にとらわれず編集することが可能である一方で,穴やフィレットなどの形状について,独立したフィーチャを局所的に保持する仕組みを持つ。
このほかにもシンクロナス・テクノロジが実現するメリットは多い。
まず,新パラメータ駆動技術により,事前に定義されたフィーチャの依存性にとらわれることなく,CAD環境のなかで設計者の意図を素早く実現できる。つまり,寸法や拘束関係などの設計要件を,自由かつ即座に付加したり除去することが可能だ。また,履歴に依存しない編集機能によって,予測されなかった設計変更があった場合にも,変更部位と周囲の関連性をシステムが自動で認識し,その変更作業を時間単位から秒単位に高速化できる。
アクティブ選択と呼ばれる形状認識機能も大きな特長の1つだ。リブやスロットなど様々な機能部位の関連性をシステム側で理解し,設計者の意図をリアルタイムで推定して選択するというもの。また,1カ所の穴に変更を加えれば,離れた場所にある同径の穴をすべて変更できる。NX以外のシステムから変換された履歴のないCADデータにおいても,この機能は有効だ。形状の一部を自由自在にコピー・ペーストも可能で,他社製CADとの連携は,大幅に強化されている。
また,設計意図を即座に形状に反映するための工夫も随所にある。例えば,3次元モデルの断面を使って,干渉チェックなどを行うことがよくある。ヒストリベースのシステムでは,干渉の問題を解決する際に,まずモデルの作り方などを慎重に見ながら編集する必要があった。この作業に時間が掛かっていたのだが,シンクロナス・テクノロジならすぐに編集ができる。例えば,回転体の1断面の厚さを変更すれば,システムが回転体であることを認識して,全体の厚さを変えることができるのである。
操作性も大きく向上した。3次元形状に対して寸法や角度などの条件を加える際のユーザー・インタフェースに優れ,2次元CADに匹敵する直観的な操作性を実現した。結果として,設計や製造部門以外の,これまではあまりCADに馴染みのなかった関係者にも扱いやすいシステムとなった。
シンクロナス・テクノロジによるCAD環境の革新によって,モデリングの時間を大幅に短縮することができる。設計者はより付加価値の高い作業に集中できるだろう。また,より多くの関係者がCADを使いこなすことで,部門間,企業間のコラボレーションは促進される。その結果,製品開発プロセスのイノベーションは一気に加速されるに違いない。
生産性の向上は,NXシリーズをはじめとするシーメンスPLMソフトウェアの製品群の一貫したテーマである。今回のバージョンアップでは,GUIの革新とデータの再利用性の向上という2つの面で,画期的な前進が見られる。
NX 6のGUIの特長の1つが,「フルスクリーン・ディスプレイ・モード」である。設計者が集中したいグラフィックを全画面に展開し,必要なときだけコマンドが表示される。また,従来は画面横でスペースを取っていたナビゲータを半透明化。こちらもカーソルを置いたときにだけ,くっきりと表示される。
次に,再利用性を高めたことによる生産性向上だが,NX 6のナビゲータには同社のTeamcenterへの“入口”が設けられており,設計をしながら即座にデータベースにアクセスすることができる。
NX 6とTeamcenterのシームレスな連携により設計が効率化し,生産性が向上する。
「標準部品ライブラリ」は,JISやANSIなどの規格ごとに階層化された標準部品群のなかから,必要な部品を素早く取り出すことができる。さらに,締め具の組み合わせをシステム側が提案する「Fastenerアセンブリ」機能も搭載。締め具が必要な個所を指定すると,例えばボルトとナット,ワッシャーの組み合わせを表示。モデルの穴の大きさ,深さなどに適応するものが何パターンか示され,設計者はそのなかから最適な組み合わせを選択すればいい。
また,ユーザーが作成したフィーチャの再利用を促進するのが,「ユーザー定義フィーチャ」である。部位やリブなど部品のなかの要素をライブラリとして登録しておけば,それを簡単に取り出すことができる。例えば成熟した製品では,次期製品の外部デザインは変わっても,中身には大きな変更がないことが多い。ライブラリのなかの実績のある形状を流用すれば,設計の生産性向上とともに,製造ラインのスムーズな立ち上がりも期待できる。
設計のローコスト化,短期化への圧力が強まるなかで,モジュラー設計は大きな課題とされている。従来,履歴ベースのパラメトリック・モデルなら再利用が進むと考えられてきたが,実際にはそれが難しい現状があった。複雑なモデルになると,それを作成した設計者にしか分からないというケースも多い。こうした課題を克服するために,パラメトリック・モデルのテンプレート化も行われてきたが,かなりの工数を要するのが難点だった。
そこで開発されたのが「プロダクト・テンプレート・スタジオ」。パラメトリック・モデルを簡単に再利用するための新機能である。再利用する可能性のあるパラメトリック・モデルを取り込み,プログラミングなしに製品テンプレートを作成する。それは再利用ライブラリに登録され,誰でも容易にアクセスできる。設計をしながら必要なデータをその場で取り出し,編集できるのである。
最後に,検索機能の充実ぶりも注目される。一般的な属性による検索だけでなく,「NX Geolus」と呼ばれる形状ベースの検索機能が加わった。検索したい形状を指定すると,似た形状の部品群が一覧できる仕組みである。これもまた,再利用性の向上に大きく寄与するものと期待される。




















