SOA Special[基調講演]SOAをツールとして活用し 既存のIT資産で新しい価値を生む
SOAの登場から数年が経過したが、日本ではその導入事例は多いとはいえない。講演では、日本における企業のITシステムの状況と特色から、直接的なITへの処方だけでなく、それを取り巻く組織、プロセスなどを含む包括的な「新しいITとのつきあい方」として、SOAをとらえ直したうえで、実践に向けた課題とポイントが説明された。

アクセンチュアの調査によると、企業の経営層がCIOやIT部門に求めるのは、コスト削減やシステムの安定稼働より、企業にとってより高い効果や新しい価値を生み出して欲しいというものだ。業務部門からも、IT部門は業務改革などの高い目線での企画提案を期待されているという。

SOAの能力に対するIT部門と経営層の温度差

立花良範氏
アクセンチュア株式会社
エグゼクティブ・パートナー
ITストラテジ グループ統括
システムインテグレーション&
テクノロジー本部

SOAはそうした期待に応えられるシステムの構築ができると考えるIT部門担当者は多い。しかし、特に日本では導入を予定している企業・組織は少ない。「導入の障壁となっているのは、SOAで得られるビジネス上のメリットについて、経営層・業務部門の理解が得られていないことです。SOA導入のメリットは、IT部門には明らかですが、経営・業務サイドからは、投資効果が理解されづらいのです」と、アクセンチュアの立花良範氏は、SOAの導入が進まない理由について指摘する。

IT部門が、コスト削減や効率化という名目でSOAを導入する提案をしても、経営陣には、初期導入コストの高さをカバーできるものには思えないという。

そこで、IT部門は企業にとって、より大きな価値を生む、戦略的なIT活用のツールとしてSOAをとらえ、ソリューションを考える必要がある。

企業に価値を生み出すシステム構築を考える場合、新しいシステムでのSOAの実現と考えがちだが、必ずしもそうではないと立花氏は指摘する。

「これまで、IT部門がお金と時間をかけて、営々と作り上げてきた現在稼働しているシステムは、企業にとって貴重な資産です。こうしたシステムをSOAで有効活用することをまず考えることが、これからのIT部門のミッションとなります」

あるいは、既存システムのリース期限が切れる場合などにSOAを経由し、同じ事ができるSaaSなどの外部サービスへの代替を行えば、大幅なコスト削減が期待できる。

「自社のITサービスにおいてどこまでを自前で持ち、どこを外部サービスに求めるか、それらを統合的に利用するにはどうすればいいかを考える際にも、ツールとしてのSOAは有効なオプションとなります」と立花氏は強調する。

要するに、IT部門にはSOAをツールとして使用し、従来の「システムを作るだけ」というスタンスではなく、構築したITシステムで、外部サービスも組み合わせて高い効果を上げていくという、「IT資産を活用する」スタンスが求められているのである。

そして、SOA導入はビジネス起点の取り組みと連動して、プラットフォームや体制などを整える、継続的で中長期の取り組みとしてとらえる必要がある。

SOAに基づく設計開発には、従来の「要求仕様ありき」ではなく、ビジネス戦略とITの双方の密接な連携が求められる。それらを踏まえて、SOA導入のロードマップは、IT部門自身の変革ロードマップに合わせて描かれなければならない。

このように、日々の運用を通じ、全社的視点で業務を俯瞰できるというアドバンテージを持つIT部門は、社内コンサルタントにも、社内SaaSプロバイダにもなり得る。こうした取り組みのなかで、SOAは必然的に大きな価値を生み出し、IT部門は企業のビジネス戦略に大きく貢献できるだろう。