NBOnline 偉人の国づくりに学ぶ企業経営|〜先人の叡智にみる強い企業の条件とは〜 壱の巻 平清盛

現在の神戸港。清盛が大改修を行った
大輪田泊がその前身である。
清盛を語る際に、当時中国大陸との間で行われていた日宋貿易を避けて通ることはできない。もともと父・忠盛の代から始まっていた日宋貿易だが、清盛はそれをさらに発展させることを目指した。当時の武士や貴族たちは知行地や荘園などからの収入に頼っていたが、異才・清盛はグローバルな視点を持ち、海外との交易に財政基盤拡大の活路を見出していたのである。宋からは香料、染料、薬品、陶磁器、書物、宋銭(宋の銅銭)などが持ち込まれ、日本からも砂金、硫黄、真珠、木材などを輸出。日宋貿易の活発化は平氏に莫大な富をもたらし、その権力の源泉になると同時に、当時の日本の経済・文化発展にも大きく貢献する。
清盛の日宋貿易に関わる施策において、最も画期的だったのは、それまで博多までしか来ることが認められていなかった宋船を、瀬戸内海の奥深く、大輪田泊(現在の神戸港)にまで入航できるようにして京都までの距離を短縮し、人とモノの流通を一気に加速させたことである。このために清盛は、単なる砂浜の停泊地であった大輪田泊の大改修を実施した。この事業は日本で最初の人工港の建設と言われている。さらに清盛は港の沖合に「経が島」という人工島まで築いている。大輪田泊の立地は申し分ないものの、波の高さや風の強さが障害となっていたため、防波堤となる人工島を作り、港の安全を盤石のものとしたのである。
中堅・中小企業経営者は、経営戦略をいかに堅固に組み上げるかについて、日々頭を悩ませている。TCO削減にはじまり、内部統制や、安心・安全対策など全社体制で取り組むべき課題があまりにも多く、部門ごと・業務ごと・製品ごとの最適化では追いつかない状態だ。
そんな中で最も大切なことは、清盛が財政基盤拡大に向け日宋貿易に着目し、その振興のために大輪田泊というインフラを整備したように、広い視点を持ち、何が中核となる課題であり、優先的に対処しなくてはいけないのかを的確に見抜き、実益に結びつく取り組みを行うことである。
例えば、企業経営にとってITインフラは、すでに業務上必要欠くべからざるものとなっている。しかしその一方で、オープン化によりシステムは乱立し、運用管理コストの増大、機能重複など非効率が拡大している面が否めない。清盛のように、思い切った視点で企業成長の活路を見出すには、広い視点でこのITインフラを全体最適化することが必要だろう。そして、システムの現状把握、将来への明確な展望などの共通認識を持つことが、何よりも重要なのである。

清盛が整備した音戸の瀬戸は
現在でも交通の要所となっている。
清盛が瀬戸内海航路整備で行ったもうひとつの大きな事業が、現在の広島県呉市の本州側と倉橋島との間にある海峡、「音戸の瀬戸」の開削である。ここを開削することで、それまで倉橋橋南端を回らなくてはならなかった瀬戸内海航路が本州沿岸に大幅に短縮され、スピーディーな物流が可能になる。このため清盛は、大輪田泊の整備に先駆けて音戸の瀬戸開削に着手。6万人もの人員を投入し、南北に堰を作り潮の流れを止めて掘削をする難工事を10カ月に渡り行った末、水路を切り開くことに成功した。こうして瀬戸内海航路がしっかりと確立されたことにより、日宋貿易はますます盛んになっていくのである。
清盛は、貿易による経済効果を最大化するには、最適な物流経路を構築し、効率を高めることが必須との判断から、音戸の瀬戸開削に挑んだ。この海峡は、今でもわずか90メートル程度の幅ながら船舶の往来が激しく、「瀬戸内銀座」の異名を取っているほどの海上交通の要衝である。大輪田泊とともに、まさに清盛が将来を見据えて成し遂げた一大インフラ整備と言えよう。
中堅・中小企業経営者は、先述のように広い視点で自社のITインフラを全体最適化することが必要だ。これは日宋貿易をさらに活発にするために音戸の瀬戸を切り開き、瀬戸内海航路の最適化を実現した清盛の施策と共通する。
ITインフラの全体最適化を可能にするために富士通では、これまでに蓄積してきた商談事例をベースに、お客様システムのインフラ最適化のテーマ(利用シーン)を抽出し、そのシステムモデルを提案している。いま現在の姿と、あるべき姿を既存のパターンにあてはめて考え、課題を見抜き、優先的に対処すべきが何なのかを見定めるわけだ。
詳細な現状分析(AsIs)を行なうとともに、将来はどのレベルにもっていくのか(ToBe)を明確にすることで、直近に実施すべき目標(Target)を何にするかという優先順位の立案が可能になる。そして、それらの検討を通じてITシステム全体の状況や課題を俯瞰することで、従来とは比べものにならないスピードでITインフラ最適化計画が実現する。さらには、IT投資の規模や課題の重要度、緊急度を考慮した、システムの中期計画も具現化できるだろう。

世界遺産にも登録されている厳島神社
潮が満ちると社殿全体が海に浮かんで見えるという壮麗な建築美で知られ、ユネスコの世界遺産にも登録されている厳島神社。この神社はもともと航海の安全を守護する神社であり、海賊平定や日宋貿易などで海との縁が深かった清盛は、平氏の氏神として厚く信仰した。現在の威容を誇る姿に造営されたのも、清盛の資金バックアップによるものである。
この画期的かつ壮大な構想を実現するうえでは、当時の建築技術の粋が集められた。社殿の沖160メートルに立つ大鳥居の根元は、実は海底深く埋められているのではない。基礎は固定せず、箱状になった鳥居上部に数トンもの石を詰め込んで重しとし、自分の重みだけで立たせる構造としている。
海上に突き出している平舞台も、柱に固定されていない。水かさが増すと、平舞台全体が筏のように浮かび上がり、波の力を逃すことを可能にしているのだ。また平舞台は5つのユニットに分割されており、大きな力がかかった際にはあえてすぐに壊れ、被害を最小限に止められる構造とした。
こうした高度な工夫が今から800年以上前に実現されているのには、驚きと言うほかない。また、これらの新技術を積極的に取り入れることで自らの構想を実現したことからは、オープンで先取りの気性に富んだ清盛のマインドが見て取れる。
富士通が提案するシステムモデルに照らし合わせれば、自社システムのインフラ最適化のテーマが自ずと抽出されてくる。そこで次のステップは、「そのテーマ解決にフィットするツール、つまりはプラットフォーム製品をいかに選定・導入するか」だ。その製品ならではの高性能、高機能によって生み出される効果こそが、企業経営の実益に直結するのである。この点、「海上に神社を建てる」という難易度の高いテーマを、最新かつ最適な新技術を選定・導入することで実現した清盛の厳島神社造営と相通じるところがある。
清盛は晩年、福原(現在の神戸)への遷都を夢見て、一大都市の建設を構想したが、源頼朝を筆頭とする東国武士の反乱が勢いを増すなどして、平氏政権の安定が脅かされるようになったことからこれを断念。志半ばにして1181年、病没する。
しかし、清盛の国家構想は未完に終わったとはいえ、彼が実践した日宋貿易というグローバル経営と、それに伴う画期的な瀬戸内海のインフラ整備は、やはり新しい時代の発展の基盤となるものであった。企業でも、将来につながる確実な投資として、これを機にITインフラ整備を発起し、確かなプラットフォーム製品選びを検討してみてはいかがだろうか。
■書籍
・高橋昌明『平清盛 福原の夢』講談社選書メチエ
・五味文彦『人物叢書 平清盛』吉川弘文館
・本木泰雄『平清盛の闘い 幻の中世国家』角川叢書
・佐藤和彦監修『日本の歴史人物』ポプラ社
・天井勝海『図解雑学 世界遺産 建築の不思議』ナツメ社
■論文
・菊岡倶也『土木に賭けた夢 平清盛の音戸の瀬戸開削と大輪田泊(神戸港)建設』
■Webサイト
・宮島観光公式サイト http://www.miyajima-wch.jp/index.html
平清盛肖像(天子摂関御影 )提供:宮内庁 三の丸三の丸尚蔵館








