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IT pro Special:Information On Demand Conference Japan 2009 Review Information On Demand Conference Japan 2009危機を好機に変える情報の戦略的活用 ―実践!インフォメーション・オンデマンド

【パネルディスカッション】不況をチャンスと捉え, ITの構造変革を進めて将来につながる競争力を獲得

Information On Demand Conference Japan 2009では,基調講演に続き「<先駆者に聞く> 危機の時代,企業を強くするIT戦略はいかにあるべきか」と題したパネルディスカッションが開催された。IT先進企業であるカシオ計算機 CIOの矢澤篤志氏と早稲田大学ビジネススクール教授の根来龍之氏をパネリストに迎え,ITPro発行人の林哲史がモデレーターをつとめ,今の日本企業のITインフラが抱える課題や不況期におけるIT投資の考え方などをテーマに意見が交わされた。

カシオ計算機株式会社 執行役員 業務開発部長 矢澤 篤志氏 パネスディスカッションはカシオ計算機の執行役員 業務開発部長である矢澤篤志氏の「今こそ,IT基盤と組織変革の好機!〜部分最適から全体最適へ」と題するプレゼンテーションから始まった。

 このプレゼンテーションの中で矢澤氏は,「日本の製造業は機能ごとに分業化され,企業規模の割に事業部門が多く,ITと業務の部分最適化がされてきました」と製造業におけるITと業務の課題を指摘。現場には使い勝手が良いが,全体としては欠点が多い“手作り文化”の弊害と闘ってきた同社のIT部門の取り組みを紹介した。同社ではビックバンでERPを導入し,全体最適へのパラダイムシフトを図ったという。

 「パラダイムシフトとしては大きく2つありました。機能ごと,事業ごとにバラバラなシステムインフラを標準化し,統合化してSOAでシステム間連携を強化すること。もうひとつは情報システム部門の役割と意識をシステム開発から業務開発へと変革することでした」と矢澤氏。

 同社では1999年のビックバン導入によって,ITインフラの基本的な部分の標準化を実現し,徐々にERPの機能を拡張して横展開してきた。現在ではSCMやグローバル会計のシステムを構築し,経営施策の実行を支援しているという。

全体最適のために求められる経営の方向性に対する理解

早稲田大学IT戦略研究所所長 早稲田大学ビジネススクール教授 根来 龍之氏 矢澤氏のプレゼンテーションを受け,早稲田大学IT戦略研究所所長でもある根来龍之氏は「全体最適を考えるうえで重要なポイントは2つあります。ひとつは,本質的な目的が競争力を増すことにあるということです。全体としての方向づけがないと全体最適の基準はつくれません。第2は,ITは経営の道具というより基盤だということです。ITの上でビジネスを実施する構造になっていますから簡単には取り替えられません」と全体最適に取り組むうえでの難しさを指摘する。

 矢澤氏も「これからのIT部門は経営の裏側を理解して欲しいというトップの想いから『業務開発部』という名称になったわけですが,なかなかトップとコミュニケーションがとれていませんでした。そこで責任者になった私は,総務部長が会いに行くときには一緒に行くようにしたり,とにかくトップのところに足を運ぶ機会をつくりました」と,トップの課題を認識することの重要性を説く。

 また矢澤氏は,変革に取り組むうえでのKPIを設定することの重要性を強調する。「ITの構造化を図るためにはシステムの見える化が必要です。そのためにKPIを設定することでトップと現場がつながり,目標に向かってPCDAサイクルを回すことができるのです」と矢澤氏。これに対して根来氏は「見える化は情報の活用のためにするもので,業務のやり方を変えることを前提に考えるべきです」と見える化に取り組む際のポイントを挙げた。

より目的意識が求められる不況期におけるIT投資

 パネルディスカッションでは引き続き,根来氏による「今の時代に求められるIT戦略/IT経営」と題したプレゼンテーションが行われた。
根来氏は,不況期の戦略として事業の再編にITをどう活用するかについて解説し,「会社の利益率は事業形態の違いである戦略グループの選択で決まってきます。不況期にはこれから事業形態がどう変わるかを見極めて,戦略グループを移動するためとか,新しい事業形態をつくるため,といった目的を決めて投資することが必要です」と説く。

 また,「ITそのものが競争優位をもたらすのではなく,業務の仕組みに埋め込まれて差別化につながると考えるべきです」と,業務革新とITの関係に触れた。そして,セブン-イレブンの差別化システムの変遷を例として取り上げ,「情報を早く伝えるための電子発注から,売れ筋商品の把握,そして仮説検証型へと進化してきました」と,現在では適正な需要予測に基づく独自の生産の仕組みへと発展することで差別化システムに成功していると説明した。

 さらに,ITコストの低減策としては「トータルライフサイクルコストの削減だけでなく,初期投資の低減も求められています」と語り,そのひとつの選択肢としてクラウドの世界が台頭してきていることを示唆した。

 業務革新の進め方について矢澤氏は,「ノンコア業務が構造化されていないとコア業務を強化してもノンコア業務の部分で融合できないという事態になります。その意味でIT基盤は重要です」と留意点を上げる。そのためにはIT側でノンコア業務を可視化して,業務側の組み合わせのアイデアにつなげる役割が求められるという。

 続けて矢澤氏は,クラウドの世界について,「ユーザー側のニーズから考えると“安く,簡単に”使えることが前提になります。アメリカのクラウドのプレイヤーはオープンソースの要素技術にシフトしていて,ユーザー側がそれを組み合わせて使う形になっていますが,いずれはトータル的に提供されるようになるでしょう。そうなればIT活用の形を変える可能性もあると思います」と予想を述べた。

 また根来氏はIT投資について「『投資なくして継続的な成功なし』という認識を持つことが必要です。コストやタイミングは考えるべきですが,苦しくても投資は続けるしかないのです」と,より大きな投資が,より大きな収穫につながるという独自の『迂回生産の理論』を披露した。

 最後に矢澤氏は,ERP導入を経験したメンバーが今の同社のITを支えている状況を踏まえ,「構造を変える機会はなかなかありませんが,今のタイミングはそのチャンスです。苦労は伴いますが,それを経験したIT人材はこれから先の貴重な戦力になるはずです」と語り,新たな変革への意気込みを語った。

bunner

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