IBM:LEADER'S INSIGHT【リーダーズ・インサイト】:リーダーの皆様のための新たな洞察:日経ビジネスオンラインSPECIAL

IBM LEADERS'INSIGHT:事例紹介:KDDI | 日経ビジネスオンラインSPECIAL

競争が激しく、変化のスピードが速い携帯電話の世界では、サービスを提供するための安定したシステムをいかに早く開発できるかがビジネス上の重要な鍵となる。「au」ブランドで携帯電話ビジネスを展開するKDDIでは、日本IBMをパートナーとし、開発のPDCAサイクルの実践、オフショア開発の本格的な活用など、積極的に新しい試みに挑戦し、品質の向上とコスト削減の両立に取り組んでいる。

ビジネスの急拡大に対応した処理能力の確保が課題に

コンシューマ技術統括本部 プラットフォーム開発本部 モバイルプラットフォーム開発部 部長 澤田 和良氏

同社ではau携帯電話上の決済サービス『まとめてau支払い』を提供している。これはデジタル・コンテンツの販売代金をコンテンツプロバイダーに代わって回収するサービスであり、同サービスを提供するシステムを構築・運用している。

「このシステムはビジネス上、2つの側面を支えています。1つめが、回収代行による手数料収入です。『着うたフル』などデジタルコンテンツのダウンロードが伸びたことにより、手数料収入も増えています。もう1つは、コンテンツの販売代金を通話料とともに回収することによってコンテンツプロバイダー様に対する利便性を向上させ、より多くのコンテンツプロバイダー様のauへの参加を促すことです。魅力あるコンテンツを持つプロバイダー様が増えることはauの魅力拡大にもつながります」とKDDIのモバイルプラットフォーム開発部 部長の澤田和良氏は語る。

同社のコンテンツ・ビジネスを支える同システムだが、現在のように安定稼働を実現するまでには苦難の道のりがあった。「当初は本やCDなど物販のネットショッピングにおける決済を想定していましたが、2004年の秋から“着うたフル”が始まったことによって対象が広がり、トランザクションが急激に増加しました」と、同部 開発4グループ 課長補佐の田中吾一氏は当時を振り返る。

決済のトランザクションが増加しているということは利用者数も手数料収入も増えることであり、ビジネス的には歓迎されるべきものだが、システム的には厳しい状況に直面させられる。例えば、各種サイトの会員数はサービス開始当初は数万件だったが、現在では約1700万件と5年で100倍以上も伸びている。当然、同システムが処理するトランザクションも比例して増えた。

「当時、テレビ番組で着うたランキングが発表される金曜日の夜は、アクセス数が通常の10倍以上に跳ね上がるという現象もあり、想定していなかった事態が次々と起きました」と澤田氏は語る。携帯電話という新しいビジネスだけに予想もつかない展開が起きていたのは想像に難くない。

PDCAサイクルを確立して運用ノウハウを蓄積

プラットフォーム開発本部 モバイルプラットフォーム開発部 開発4グループ 課長補佐 田中 吾一氏

同社では、当初からシステム構築を担当してきた日本IBMと常に協議してPDCAサイクルを確立し、システムの品質向上に取り組んできた。澤田氏によれば「IBMと共同でリソースマネジメントに取り組み、さまざまなノウハウを蓄積してきました。今ではピークでも耐えられるように先々を予測して運用できるようになっています」という。

中でも大きな変更は、2006年7月に行われたデータベースの分散化だ。「オンラインアクセスを処理するデータベースとバッチ処理のデータベースを分けることにより、処理の増加に対応できるスケーラビリティー(拡張性)を確保できるようになりました」と田中氏は語る。さまざまな問題点に対する対応策を検討する中で、日本IBMから提案があり、分散化に踏み切ったという。

「このシステムは、携帯電話のお客様、コンテンツプロバイダー様、社内ユーザーなどステークホルダーが多く、連動しているシステムも多いため、設計にはたいへん気を遣います。その点、IBMは技術ではなく、サービスの視点から考えてくれるので助かっています」と田中氏は日本IBMをパートナーとして高く評価している。

モバイルコンテンツの市場規模は数千億円に拡大。auのコンテンツプロバイダーは公式なものだけでも4桁を超えるまでになり、同社の手数料収入ビジネスも大きく成長した。「コンテンツプロバイダー様との間でどのようにしてWin-Winの関係を築いていけるかが鍵ですが、当社の与信設定が厳しいため、コンテンツの販売代金の回収率が高く、コンテンツプロバイダー様からは良い評価をいただいています」と田中氏は語る。

将来の発展に備えてオフショアの活用を開始

同社が将来を見据えてさらに一歩踏み出したのが、昨年から始まった中国のリソースによるオフショアの本格的な活用だ。「競争が激しく、変化のスピードが速い携帯電話ビジネスを勝ち抜くためには、今後も安定したシステムを早く開発することが求められます。そこでレベルを下げずにコストを下げる手段としてオフショアの活用を考えました」と澤田氏は、オフショア開発を取り入れた背景について説明する。

しかし、オフショアを活用するうえで不安はなかったのだろうか。田中氏は「実際に中国(大連のグローバル・デリバリー・センター)に行きました。日本語と英語が堪能だったので言葉の不安は払拭されましたね。またスキルについては、日本のITスキルのレベルが心配になるくらい高いと感じました」と視察の印象を語る。「日本人同士のような曖昧さは通じませんから、ドキュメントは整備する必要があります。ただ、これも良い点としてとらえています」(田中氏)。

同社では、最初のトライアルとしてアプリケーションの機能追加の設計、開発、単体テストをオフショアで行い、コスト削減とリソース最適化に成功した。この結果を受けて今年以降も継続して取り組み、オフショアとのつなぎについてもPDCAサイクルによってさらに改善していくという。

澤田氏は「『LISMO』のようにパソコン上での決済もこのシステムを広く活用してもらい、将来的にはauユーザーのネットワーク上の決済インフラとして育てていきたいと考えています」と目指すべき姿を語る。同社のビジネスの発展を支えるこのシステムの継続的な成長のために、PDCAサイクルの確立とオフショアの活用は大きな意味を持っている。

携帯電話のパスワード入力操作のみで、24時間いつでもどこでも安全かつ簡単に商品を購入できるようになり、
会員数は5年で100倍を超えた。しかし、その裏側では携帯電話ビジネスの「スピード」や「変化」に対応したシス
テムを構築する必要があった。

USER PROFILE

KDDI 第二電電(DDI)、国際電信電話(KDD)、日本移動通信(IDO)の3社が2000年10月に合併して誕生した総合通信事業者。国内ではNTTグループに次いで2番目の規模を誇る。直収電話(メタルプラス)、中継電話・国際電話、携帯電話(auブランド)、プロバイダー、衛星電話と幅広く事業を展開。通信業界として大きな転機となる2010年度に向け、中期目標「チャレンジ2010」を策定し、従来の延長線にとどまらない、新たな価値創造に向けた挑戦を進めている。
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