石黒不二代 強靱な部下を育て上げるには

石黒不二代(いしぐろふじよ)

ネットイヤーグループ代表取締役兼CEO。スタンフォード大学にてMBA取得後、シリコンバレーにてハイテク系コンサルティング会社を設立し、日米間の技術移転等に従事。2000年よりネットイヤーグループ代表取締役として、ウェブを中核に据えたマーケティングを支援し独自のブランドを確立。

前回に引き続き、日本を代表する女性起業家、石黒不二代氏に、今後求められるビジネスパーソンのあり方を尋ねる。ネットイヤーグループの指揮を執って8年間、一度も社員を叱ることなく会社を成長させ、マザーズ上場を成し遂げた。シリコンバレーで得た経験が、石黒流人材育成術のベースだという。

(2009年12月3日公開)

「グッドトライ!」部下の失敗をほめられますか?

石黒氏がシリコンバレーにいたころの話だ。息子のサッカークラブの試合を観戦していると、一人の子供がシュートを空振りし、せっかくの決定機を逃してしまった。ところが、その瞬間、周囲にいた他の親たちが口々に「グッドトライ!」と叫び始めたのだ。叱るのでなく、慰めるのでもなく、口うるさくアドバイスするわけでもない。失敗した子供を皆で一斉にほめている。

この光景が石黒氏の印象に強く刻まれたのは、シリコンバレーに来て以来、至る所で、同じような場面に遭遇していたからだ。失敗は学習の機会だということが、共通理解として完全に浸透していた。「教育からビジネスまで、徹頭徹尾、ほめる文化なんです。そうして育てられるから、常に前向きで、力強さにあふれた人材がシリコンバレーには多いのだと思い知らされました」(石黒氏)。

失敗の経験は成功へ近づく一歩だと、シリコンバレーでは考えられているのだ。したがって、失敗した人間が再び何かにトライしようとすれば、ちゃんとチャレンジの機会が与えられる。たとえば、企業を助けるベンチャーキャピタルは、投資先が倒産に追いやられても、その起業家がまた新しい会社を創業すると、再度、投資を検討するのだという。「失敗した人間は、その分だけ学んでおり、全く企業の経験がない人よりも成功の確率が高いと考えるからなのです。『失敗は成功のポートフォリオ』と言いますが、一度の失敗もなく成功し続けることなんてあり得ません」(石黒氏)。

失敗をほめれば部下は伸びる!

もちろん、これは上司と部下の間にも当てはまる。石黒氏自身、ネットイヤーグループを率いるようになってからも、それを実践してきている。「過ぎたことを叱り飛ばせば、部下は萎縮してしまいます。それよりも、失敗から学んでいることを確認し、持っている力を存分に発揮してほしいと私は考えているのです」(石黒氏)。

優秀な人は要注意!過保護マネジメント

部下を育てる際、石黒氏が特に気をつけていることがもう一つある。マイクロマネージメントだ。「優秀な人ほど、自分のやり方を部下に押しつけてしまいがちです。しかし、いったん部下に仕事を渡した以上は、口出しするのも最小限にとどめるべきです」(石黒氏)。自分のやり方を細かく伝えたとしても、その成功法則が、そのまま他人にも当てはまることはまれだ。人それぞれ個性の違いもあるし、現代では環境の変化も激しい。部下は部下で、試行錯誤をしながら、上司とは違う、自分なりの成功法則を見つけていくほかない。

自分の成功法則を部下に押しつけない!

その際、上司が肝に銘じておかなければならないのは、たとえ口出しせず部下に任せていたとしても、失敗の責任を部下だけに押しつけてはいけない、ということだ。まず、部下の能力と仕事の内容を把握した上で仕事を預けることに決めたのは、自分自身だったはずだ。部下を責めるよりも、失敗の要因を精査し、その学習効果を確認し、今後新たなチャンスを与えられるよう、ポジティブに評価すべきなのである。

部下に仕事を任せられないなら信頼不足

石黒氏は、部下には好きな仕事、得意な仕事を任せるべきだと主張する。とはいえ、組織の中で誰にでも無条件に好きな仕事を与えられるわけではない。こうしたマネージメントを成り立たせる前提のひとつに、コミットメントがある。まず、会社側で設定した目標に対し、それを全力でやり遂げる人、つまりコミットメントを果たせる人を評価する。目標設定とその遂行というプロセスを繰り返すうちに、会社と社員、上司と部下、そして部下と部下の間にも、相互理解と信頼関係が構築されていく。もし、上司が部下に対して仕事を任せるべきか判断できないとしたら、この信 頼関係がまだ十分ではないのだ。

コミットメントを積み重ね信頼を構築せよ!

一度目標を決めたら、それをやり遂げない限り、周囲の信頼は得られない。それを部下自身も意識するようになれば、組織は良い方向へ回り出す。ネットイヤーグループでは半年に1度、全社員の目標設定をしているという。会社側でガイドラインを示し、それをベースに上司と部下が相談して目標を考える。その際には、会社側が達成してほしい目標をまず提示するが、当人にしかわからない得意分野や経験、思いを生かすため、部下が自ら提示する目標も積極的に取り入れるようにしている。

「言われた仕事を淡々とこなすだけでは、その人は伸びないし、会社も活性化しません。入社して3年ほど経て、コミットメントを果たし、会社や上司と十分な信頼関係が構築できと感じたなら、社員は自分のやりたいことを積極的に会社にフィードバックすべきなのです。」(石黒氏)。自分ならではのバリューを十分に発揮しつつ、会社にも貢献する。それが、自分自身をもっとも輝かせる仕事のはずだ。「好きな仕事の方が成功しやすい。好きな仕事を自分で作り出すことは、会社にも貢献することなのです」(石黒氏)。

自社の立ち位置を見定める、既成概念にとらわれない目

レッツノートS8

レッツノートS8
2009年秋に登場した新世代のレッツノート。駆動時間は驚きの約16時間(JEITA測定法)。ほぼネットに接続をしつづけても終日使える。

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多忙な石黒氏の1日は、朝、愛用のレッツノートRシリーズをベッドの中で開き、メールチェックするところから始まる。移動中もレッツノートは手放せず、時には道ばたで立ったまま使っていることもあるという。「レッツノートを10年も使い続けている一番の理由は、バッテリーです。さすがに(JEITA測定法でのRシリーズの駆動時間である)約8時間とまではいかなくても、私の場合、通信をしながら5時間程度使えているので、十分満足しています」。

特にWebアプリケーションを使うことも多いため、ネット接続は必須だという。ワイヤレス通信はバッテリーの消耗を早めるので、駆動時間がいっそう重要になる。その点、新しいレッツノートSシリーズ・Nシリーズは駆動時間が約16時間(JEITA測定法)へ延びたほか、WiMAXとワイヤレスWAN、無線LAN、そしてBluetoothを同時に内蔵できるなど、まさにWebの時代のための新世代ビジネスモバイルとなっている。しかもCPUには高速なインテル® Core™2 Duo プロセッサー P8700(2.53GHz)を採用しており、携帯性を重視したビジネスモバイルとは思えない、従来の常識からかけ離れた圧倒的なスペックを実現している。いつでも、どこでも、サクサクとストレスなく仕事をこなせるのだ。

「平日は日常業務やミーティングに追われ、まとまった仕事はついつい週末に片付けることになります。家に一日中いるとサボってしまうこともあり、その日の気分で仕事がはかどりそうな場所へレッツノートを持って出かけます」(石黒氏)。たとえば、ある週末はコーヒーの香りを楽しみながら原稿の執筆に精を出す。心地よく仕事をするための場所を選ぶ自由が得られるのも、レッツノートならではのメリットではないだろうか。

ところで、石黒氏自身は、これからの5年間をどう過ごそうと考えているのか。経済のグローバル化でコンペティターが世界に広がり、さらには業界の垣根も曖昧になりつつある現代は、企業が自社の立ち位置を見極めにくくなっていると石黒氏はいう。「現在の業務や仕事のやり方に甘んじているのは大きなリスクです。国や業界の違いをはじめ、過去何年かの間に自分が作り出してしまったさまざまな既成概念を取り払った上で、改めて自社の事業をマッピングし、俯瞰的に考え、進むべき方向を見定める。早めにリスクをつぶしていくことこそ経営者の仕事です」(石黒氏)。日本の景気が回復するであろう今後の5年間、そのチャンスを生かして一回り成長するか、それともチャンスを不意にするのか。企業、そしてビジネスパーソン個々の心持ち次第で明暗が分かれるのかもしれない。

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