吉村作治 タフな現場を攻略するヒント(1)

吉村作治(よしむらさくじ)

サイバー大学学長。早稲田大学客員教授。工学博士(早大)。エジプト考古学者。アジア初のエジプト調査隊を組織し現地に赴いて以来、40年以上にわたって発掘調査を継続。数々の発見により国際的評価を得る。

吉村作治氏の調査隊は近年、エジプトでめざましい発掘成果を上げている。そこにはどんな秘密があるのか。吉村隊が現場に持ち込んでいるタフブックの活用法とともに聞いた。

(2008年12月5日公開)

吉村隊の発掘調査を支える「弁当箱」

インターネットで講義を行う株式会社立サイバー大学を、自ら学長となって立ち上げるなど、吉村氏はITを積極的に研究や教育に応用している。その吉村氏が、発掘現場にふさわしいパソコンとして選んだのがタフブックだ。

吉村氏とタフブック

発掘では様々なデータの記録が必要になる。現場へ安心して持って行けるタフブックは、吉村隊に欠かせない存在だ。

タフブックCF-19

タフブックCF-19
携帯しやすいコンパクトなボディでありながら、耐衝撃性能、防塵・防滴性能に優れているのが特徴。バッテリーの持ちが約8時間と長いうえ、タブレットモードにも対応しているので幅広い現場で活躍する。

製品サイトへ

「おーい、弁当箱持った?」。吉村氏率いる調査隊では、タフブックに「弁当箱」というニックネームをつけて愛用している。エジプトで遺跡を発掘する際には、作業手順の記録、測量データの取り込み、出土した遺物のデータベース入力、文献検索などあらゆる場面で、この弁当箱ことタフブックが活躍する。

2005年1月にセヌウのミイラ、2007年1月に夫婦のミイラ、同年10月には親子のミイラと、吉村隊は近年めざましい成果を上げている。そのいずれにおいても、タフブックはチームの活動を支えていた。

セヌウのミイラマスク

コバルトブルーの彩色と、造形が美しいセヌウのミイラマスク。約3800年前の中王国時代に生きた軍事司令官だったと考えられる。

夫セベクハトの木棺(左)と妻セネトイトエスの木棺(右)

夫セベクハト(写真左)と妻セネトイトエス(写真右)の木棺が、同じ墓に埋葬されていた。セベクハトは葬祭神官で、色鮮やかな装飾が施されている。

チャイのミイラマスク(左)と子供の木棺(右)

ピラミッドなどの建設技師、チャイのミイラ(写真左)。子供のミイラ(写真右)とともに埋葬されていた。非常に珍しい例。

これらの発掘成果は、3件とも世界で大きな注目を集めた。すべて「未盗掘」「未開封」のものだったからだ。「考古学では発見が一番大切」と吉村氏がいうとおり、発見は何かしら新しい情報を考古学にもたらし、その研究を何歩も前へ進める。

しかし、ミイラには宝飾品が添えられるため、埋葬直後から墓荒らしの危険にさらされる。貴重な遺物が散逸したり、壊されてしまっているケースがほとんどで、数千年にわたって盗賊の被害を全く受けず、手つかずの状態のミイラが発見されるのは、非常に珍しいことだ。それを吉村隊は立て続けに見つけたのだから、世界が驚くのも無理はない。

早い時期からハイテクを考古学研究に応用

エジプトの発掘調査に日本が参加したのは、吉村氏の調査隊がはじめて。1971年のことだ。めぼしい発掘地域は、すでにフランスやイギリス、ドイツ、アメリカといった欧米の調査隊にことごとく握られていた。最後発の日本に、入り込む余地は残されていないかに見えた。厳しい船出だった。

吉村氏とタフブック

新しい技術を積極的に取り入れたことが、多くの成果をもたらした要因の一つ。吉村隊が現在使用しているタフブック「CF-19」はタブレットモードに対応しており、立ったままでも快適に操作できる。

しかし、結果論かもしれないが、それが吉村氏に成功をもたらすことになる。「他国のチームは自分たちの発掘権を決して手放さない。けれど、他の発掘現場を調査する余裕もなかったんです」(吉村氏)。吉村隊が成功をつかんだ要因はいくつかあるが、旧来の常識にとらわれず、新しい技術や方法論を積極的に取り入れたことが上げられる。今ならタフブックの活用がまさにそうだ。

それ以前には、1980年代半ばからハイテクをいち早く応用しはじめた。当時、日本のハイテクは世界をリードする技術力を誇っていた。電磁波地中レーダー、動探査といった機器を使えば、物理的な発掘や破壊を行うことなく、効率的に遺跡を発見できる。吉村隊は日本の技術者や科学者の協力を得て、ギザの大ピラミッド前の地中に第2の太陽の船のピット(竪坑)を、そしてピラミッド内部にも未知の部屋を発見するなど、発掘を取り仕切るエジプト考古庁をも驚かせる成果を上げ、評価を得ていった。

電磁波探査レーダー(左)と電磁波探査レーダーのモニター画面(右)

電磁波地中レーダーを使うと、発掘をしなくても、地中の埋没物や空洞を高い精度で検出できる。

第一の太陽の船

電磁波地中レーダーで、その存在の有無が考古学界で議論になっていた第2の太陽の船(夜の船)も発見した(写真は第1の太陽の船(昼の船))。

そして1995年、衛星写真の解析と電磁波地中レーダーによる探索とで、ついに未発見の遺跡群を発見する。それ以降、吉村隊はこの遺跡の発掘に精力を注いできた。これが、セヌウのミイラ、夫婦のミイラ、親子のミイラが相次いで出土したダハシュール北遺跡だ。先行する他の調査隊の後を追い、競合するのではなく、新しいフィールドを自らの手で開拓したのだ。

人間とパソコンは補完し合う存在

遺跡から出土した棺や宝飾品は、「遺物リスト」というデータベースへ登録する。同時に、過去に類似のものが出土していないか、この遺物リストで検索をかける。様式が同じものが見つかれば、年代などを特定するための手がかりになる。以前は100冊を超える紙の遺物リストを1週間以上かけて探したが、IT化が進んだ今は1時間で済ませられるようになった。

考古学の研究スタイルもITの登場で大きく変わった。「IT化以前は“考える人間”がつらい思いをする時代でした」と吉村氏は語る。すばらしいアイデアを持っていても、それを裏付けるデータをそろえるのが容易ではなかった。夢想といわれ、誰にも取り合ってもらえずに終わってしまう。

吉村作治氏

研究の基礎は分類と統計にあるため、パソコンを使わないのは損だと吉村氏はいう。しかし、そこからどういう結論を導き出せるかは、人間の思考力にかかっているとも強調する。

それが今や、パソコンの前に座ったまま、短時間で膨大なデータを手にできる。“考える人間”が報われる時代になったのだ。「人間とパソコンとは補完し合う存在なんです」(吉村氏)。過酷な環境へも持って行くことができ、人間の能力を補完してくれるタフブックは、吉村氏の考古学研究にとって、なくてはならない存在だ。「タフブックは本当に頑丈で壊れないからね」と、傍らのタフブックを頼もしそうに眺めながら吉村氏は笑う。

吉村作治氏が語るサイバー大学の狙い

自らが学長となって立ち上げた株式会社立サイバー大学。吉村氏を突き動かしたのは、日本の大学教育に対する危機感だった。「今の日本には800近い大学に、約30万人もの教員がいます。能力に問題がある教員も多く、優秀な学生を集めても、社会に役立つ人材を育成できていないケースが目立つのです」(吉村氏)。サイバー大学は全学生が質の高い、均質な講義を受けられるよう、講義をインターネットで配信している。自宅で好きな時間に講義を受けられるため、学生の6割は社会人だという。希望する学生全員に学資ローンも提供しており、「お金がない、仕事で忙しいという人にも、高等教育を受ける機会を提供していきたい」と吉村氏は語る。現在はIT総合学部と世界遺産学部の2学部がある。詳しくはサイバー大学ホームページへ。

このページのトップへ

  • タフブック 資料請求へ
  • BCPブックレット 資料請求へ

このページのトップへ