
顧客を中心とした経営やサプライチェーンにおける企業間コラボレーションの効率化を実現するため,MDMの導入に取り組む企業が増えている。そうしたプロジェクトを成功に導くには,どの技術が優れているかといったテクノロジーからの視点ではなく,MDMが企業の経営にいかに貢献するかといった大局的な視点が重要だ。
セッションの冒頭,日本IBMの森英人氏は「MDMに関する議論は,とかくデータ管理に関するテクノロジーの話に終始しがちです。しかし大切なのは,マスターデータのマネジメントによって企業の経営にいかに貢献するかという視点を持つことです」と強調する。
システムやチャネルごとに分散しているデータの不整合を,データの同期やクレンジングなどの技術で解消するといった手法は,MDMの出発点に過ぎない。重要なのは,いかに根本的な原因を解決して統合・管理されたデータを保持・管理し,戦略的な資産として活用していくかという観点だ。
セッションでは,こうした観点からIBMが取り組んだ2つの事例が紹介された。
1つ目は,ある保険会社の顧客マスターの統合事例。この保険会社では,わかりやすい商品やサービスの説明,顧客情報に基づく的確な対応,請求に対する迅速な対応といった,顧客にとっては当たり前のサービス品質を超えた,“小さなサプライズ”(感動)を提供することを目的にMDMに取り組んだ。具体的には,契約者の子供が学校に入学すると学資保険の案内が届く,契約者が入院すると入院保険の受給に関する案内が届くといった“一歩進んだ”顧客対応だ。
「こうしたサービスは,顧客情報を契約書ベースでかき集めて名寄せしただけでは実現できません。それぞれの顧客を1人の“人”として捉えた情報統合が必須です」と森氏は説明する。
例えば,ある顧客は契約書ベースで見れば保険の契約者かつ被保険者だ。しかし,“人”を基点に考えると,その顧客は保険金の受取人,世帯の世帯主,企業の従業員など様々な“ロール”(役割)を担っている。こうしたロールと,その人物を取り巻く“パーティ”(関係者)の視点に立ったデータ統合こそが,この保険会社の目的には必要になる。
IBMは,こうした保険業の顧客管理に最適なデータモデルとして「パーティ中心型データモデル」を提案。契約単位ではなく統合化された顧客単位の情報管理を可能にすることで,“一歩進んだ”顧客サービスを実現している。

セッションで紹介された2つ目の事例は,Panasonic Europeのグローバル規模の商品マスター統合に関するもの。同社のサプライチェーンでは,複数の社内の部門や外部のパートナー企業が複雑に関与している。そのため,こうした各部門や各企業をまたがる情報の共有と“可視化”をいかに実現するかが重要なテーマとなる。
「このお客様の事例では,商品自体のカテゴリ,目的,ライフサイクルといった管理すべき情報の属性が,部門,パートナーごとに異なるという問題がありました。こうした問題の解決には,商品情報が持つ属性の差異を柔軟に吸収できる商品マスターが必要になります」と森氏は指摘する。
Panasonic Europeでは,商品ライフサイクルの各フェーズを“横軸”,Webやカタログなど消費者に向けた情報提供や販売の各チャネルを“縦軸”に据え,商品カテゴリ固有の属性を柔軟に保持できる商品マスターに統合。このデータ基盤によって,グローバルな各市場の顧客やパートナーに向け,一貫した商品情報とブランドイメージの提供を実現している。
最後に森氏は「MDMは,企業の多様なビジネスプロセスを一貫して支えるものです。特定のアプリケーションに依存した情報環境ではなく,必要なアプリケーションが必要に応じて必要なデータにアクセスできる独立した環境。そんなマスターデータの構築が不可欠なのです」と,経営に貢献するMDM実現に向けたポイントを強調。セッションを締めくくった。

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インフォメーション・マネジメント事業部 InfoSphere営業部
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