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藤田今、私たちがカンボジアで注力しているのは、行政など中央政府の人間と、現場の医者やヘルスセンターの看護師などを同じテーブルに着かせ、話をさせることです。
これはカンボジアの話ですが、他の国の関係者も身につまされることが多いようです。それを考えると、途上国支援のやり方として、「ある地域でこういうことをしたらこうなった」といった事例を集め、紹介していくのも有効かもしれません。池上そういうことならば、お金をかけずに実行できますね。
藤田お金をかけずにどうすればうまく改善できるのかを一番真剣に考えているのは、ドナーではなく現地の人々なのです。数年先までは資金がもらえるけど、それ以降はどうなるかわからない、とみんなドキドキしていますから。
池上カンボジアの例は、みんなで一緒になって話し合えば気づくことができる、気づくことができれば変えることができる、ということなのだと思いますが、それは援助機関が働きかけて仕組みを変えていくべきなのか、仕組みを変えるほうがよいことを現地の人に自ら気づかせるべきなのか、どちらなのでしょうか?

アフガニスタン:保健センターに住む母と子
彼女はここで出産したが、肝心の出産時にスタッフが
不在だったため、家族が立ち会ったという。
写真提供(国立国際医療センター)藤田両方のケースがあると思います。ヘルスセンターの中で変えることができるもの、州の保健局で変えることができるもの、中央政府に行かなければどうにもならないことなどいろいろありますが、どういうことなら自分たちの責任で変えることができるか、彼らが一番よくわかっています。
池上援助機関が主導したほうがよいこととしては、どのようなものがありますか?
藤田アフガニスタンの場合ですが、長く紛争が続いていたので、新しい情報が入りにくいという状況がありました。20年前は積極的に使われていたが、その後に副作用が判明して今はほとんど世の中で使われていない薬を、アフガニスタンではそのまま使っていたりするケースがあったのです。薬や医療機器の利用法といった最新の技術情報は、私たちのような外部の人間がレクチャーしたほうがよいでしょう。
ただ、私たちが提供した情報も5年後10年後にはどうなるかわかりません。これらの情報は常に変わっていくものなので、それを自分たちでフォローしていってもらうために、随時チェックすべきホームページなどを紹介することもあります。池上どんどん変わるものについては、最新情報を与えたほうがいいということですね。
藤田ちなみに母子保健は最新医療とはあまりリンクしないので、与えるべき先端情報というのはそれほど多くありません。その点は、一般的な病気の治療とは問題の取り組み方が異なるかもしれません。

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池上母子保健の基本的な問題として、子供の健康は母親の健康とセットで考えるべきだという意見がありますが、これらについてはどうお考えですか?
藤田母と子の健康改善が一体として見られなかった時代もあります。その時代の状況により、母親側に重点が置かれたり、子供寄りに揺れたりすることもあります。しかし、母親が健康でなければ、健康な子供を妊娠・出産することは難しいですし、さらに健康的に育てることも困難です。子供の健康を守るにはまず母親の健康から考えていく必要があるのです。その観点からすると、妊娠する前の女性の健康を考えなければ、母子保健は成り立たないことになります。
池上国連がとりまとめた「ミレニアム開発目標」でも、乳幼児死亡率の低減や、妊産婦の健康の改善など、母子保健の問題が取り上げられていますね。
藤田「ミレニアム開発目標」に関して私が気になるのは、目標達成期間としている2015年以降の視点が欠けていることです。先進国の援助機関はその目標に向けてさまざまな援助プロジェクトを推進しているわけですが、2015年がゴールになってしまっているのです。
でも、現地の人たちにとっては、そこで終わる問題ではありません。しかも先進国は、自分たちが50年かけてやってきたことをいわば10年でやれ、と言っているわけです。「お金を出しているんだから、ここまでは達成しないと次の資金は出さないぞ」というように無理を強いているケースもあります。こうした考え方は根本的に変えるべきではないかと思います。池上ただ、現地の人にしてみれば、早く乳幼児死亡率を下げてほしいという思いもありますよね。それを「50年かけてやれ」と言われたら、逆に「冗談じゃない」となるのでは?
藤田のんびり時間をかけてやりなさい、と言っているわけではありません。最初に期限があり、それが目標となってしまっているようなやり方に疑問がある、ということです。まず考えるべきは、先進国並みの水準を実現するためにこの10年で自分たちは何をすべきか、そこから出発しなければならないと思うのですが、そのようなディスカッションがあまりなされていないのが残念です。
池上なるほど。観点が違うわけですね。まさにその部分は日本の国際協力が欧米の援助機関と一線を画すところではないでしょうか。先進国の援助機関が自分たちの理屈で考えた援助をトップダウンで行使しようとしても、実情に合わないことが多くあります。日本の国際協力は、途上国をパートナーとして一緒に改善策を組み立てていきますよね。

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藤田日本の国際協力は、現地の人のかたわらに寄り添って活動するというようなスタイルです。そのような手法はまさに日本人が得意とするところだと思います。もちろん欧米のドナーの中にもそういうスタンスの人はいますし、日本人だからといって全員が「現場主義」を貫いているわけではありません。

スーダン・センナール州で
マザー・ナイル・プロジェクトを担う、日本人専門家。
この分野では女性の現場力が欠かせない!池上実際にスーダンやウガンダの現地に行って日本のやり方を見ると、「これが本当の援助だ」と感心します。しかも、去年から、JICAは技術協力だけでなく、有償や無償での大規模な資金協力も実施できるようになりました。こんなに多くの援助ツールを持つ援助機関は他にありませんよね。今後さらに、援助の幅や柔軟性が広がっていくことが楽しみです。
その一方で、日本の援助の良さが詰まった、現場に根ざした地道な協力は成果が見えにくいので歯がゆい思いもあります。諸外国のように資金のボリュームで大々的にアピールするほうが分かりやすいですからね。藤田どういうやり方が最適なのかは簡単には割り切れませんが、日本が得意とする現場主義の優位性は世界的にも認められてはいます。ただし、おっしゃるようにアピールが不十分だとは思います。
池上それを打開する方法はあるのでしょうか?
藤田国際機関のトップや中間管理職に日本人がとても少ないのも、アピール不足の一因ではないでしょうか。現場で一生懸命働くのもいいが、もうひとつ上のポジションを目指してもよいのではないかと思います。
重要なポストに日本人がもっと進出していければ、現場で働くよさと、欧米方式のよさの両方をつなげていくことができるはずです。日本人でも優秀な人材は育ってきており、人材を輩出できるだけの層の厚さはあると思います。池上日本人を積極的に国際貢献の表舞台に送り出せば、「命の原点」に改めて気づく日本人医療従事者が増え、それがやがては日本の医療現場の改善にもつながる。日本の利益として返ってくるということですね。
藤田また、日本が拠出した資金がどう使われているのか、日本人自身が現地に見に行くことがもっと必要だと思います。それが日本のプレゼンスを示すことにもなるはずです。



(注)このMDGsのロゴは(特活)ほっとけない世界のまずしさ(http://www.hottokenai.jp)がMDGsを広めるために制作したロゴである。
資料出所:
国連開発計画(UNDP)、JICA、ユニセフなどの資料をもとに作成。より詳しい情報をご覧になりたい方はJICAのホームページへ



















