日本とドイツは、資源小国という課題を抱える一方、技術革新国という強みを持つなど共通点が多い。これまで相手をともするとコンペティターと見ていた両国企業の関係は、国の課題を共有し、解決策を共創してそれぞれが利益を得るパートナーへと変わってきた。良きライバルとして、切磋琢磨することで、両国の繁栄だけでなく世界的な貢献にもつながるからだ。
ドイツは投資先として多くの魅力を持つ。欧州の中心に位置する立地やロジスティックス網の完備、整備された法制度による投資の安全性、労働力の質の高さ、そして欧州最大級の市場を持ち、EU加盟国の中でも経済大国として発言力が強いことなどが挙げられる。
ドイツ投資で現在活発なのが成長著しい太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの分野であり、この分野を得意とする日本企業の関心は高い。世界金融危機以降の投資環境は依然厳しいが、環境・エネルギー対策は将来的な必要性が見えており、決定の持ち越しや計画延期はあっても高い投資意欲は高く維持されている。
環境保全への関心の高まりで、周辺産業にも成長のチャンスが出てきた。中でも化学メーカーは、太陽光発電システムの電池パネルを保護するバックシートや、風力発電機のカーボンファイバーのプロペラ、非食物系の次世代バイオ燃料など、実に多くの環境分野で接点を持ち始めている。また自動車メーカーと電池メーカーの連携が進んでおり、フォルクスワーゲンがハイブリッド車向けのリチウムイオン電池を三洋電機と、電気自動車(EV)向けを東芝とそれぞれ共同開発を進めている。リチウムイオン電池は現在日本で製造し輸出しているが、将来的には現地生産を見据えており、LEDや有機ELも同様の動きが見られるという。
ICT(情報通信技術)を活用する「スマートグリッド」は、低炭素社会実現の要として大きな期待が寄せられている。ドイツ政府はICT 産業の支援に重点を置いており、「ICT2020」という新しい研究及び奨励金プログラムを発表、2011年までにプロジェクト助成に15億ユーロを投じる予定だ。環境プロジェクトは大規模かつ長期間であることが多いため、資金力や情報力、資源国を含むネットワーク力、企画力を兼ね備えた総合商社に対する期待は今後ますます大きくなっていくだろう。
ドイツ政府は地球温暖化対策として、2020年までに温暖化ガス排出量を1990年比40%削減の目標を掲げている。この目標達成に向けて、全電力に占める再生可能エネルギーの割合を2020年に30%(2008年時点で14.7%)に向上させるなど、「エネルギー・環境統合プログラム」の下、様々な環境対策が講じられる。今年8月には「国家e-モビリティー開発計画」を閣議決定し、20年までにEVの国内普及台数を100万台にする計画を発表した。
ドイツの実行力は、何と言っても政府が次々に具体的な政策を打ち出して強力なリーダーシップを発揮していることが大きい。例えば「フィードインタリフ(固定価格買い取り制度)」は買い取り価格と買い取り期間の設定が明確で、国民は迷うことなく行動できる。決められたことはきちんと守る真面目な国民性も目標達成の大きな推進力となっている。ドイツの世論調査機関Forsaによれば、ドイツ人の97%が再生可能エネルギーの積極利用を支持、そのうち「“大変”重要だ」との回答が実に81%を占めた。ドイツが環境立大国と言われるゆえんは、環境対策の実現性を高める政府主導の戦略と国民の環境意識の高さにあると言える。
現在、ドイツに進出している日本企業は約1100社に上る。そのうち500社以上がノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州に集中し、販売拠点目的の進出は市場に近い西部が多い。西部はドイツの立地を生かして欧州統括の機能を果たすこともできる。
一方、東部ドイツは安価な労働力と良好なクラスターの形成で、製造拠点として日本企業や海外企業から熱い視線が注がれている。壁崩壊後、明確かつ活発な政府主導のプログラムで太陽光発電クラスターが発展。ザクセン州には半導体企業が集積し、州都ドレスデンを中心に「シリコン・ザクセン」と呼ばれるクラスターが形成されている。高いブランド力を誇る「Made in GERMANY」を獲得できる点も魅力だ。
壁崩壊後のドイツは着実に国際競争力をつけている。グローバル化で必須の語学力は、20 年前に比べ若年層を中心に英語など多言語を話せる人が増えた。かつては頻繁だったストライキも、今では欧州で最も少ない国の1つに数えられ、健全な労使関係を築いている。ドイツは内向き志向から脱却し、グローバル化に向けて見事に変身したと言えよう
市場分析や自社製品のPR、現地でのパートナー企業探しに最適な機会となるのが、国際貿易見本市だ。ドイツでは約160の見本市が開催され、毎年17万社以上が出展、1000万人近い来場者が訪れる。ハノーバーで開かれる世界最大の情報・通信・デジタル機器&システムの総合見本市「セビット」は、今年4300社が出展しビジター数40万人を集めた。複合見本市の「ハノーバーメッセ」、コンシューマー・エレクトロニクス業界世界最大級の「IFA」、最新エレクトロニクス製造技術が一堂に会する「プロダクトロニカ」など、マーケットリーダーが出展する見本市が多いのが特徴だ。
11月18日には、マンダリン オリエンタル 東京で「日独産業フォーラム in Japan」(ドイツ貿易・投資振興機関主催)が開催される。「日独産業フォーラムは2005年から毎年開催しており、5回目を数える今年は昨年に続き環境問題をテーマに掲げ、エネルギー効率に焦点を当てたセミナーを行います」(ドイツ貿易・投資振興機関 日本代表 浅川 石見氏)。効率的なマーケティングツールの見本市や現地のタイムリーな情報が得られるフォーラムなどを有効活用したいものだ。
NRW州(州都デュッセルドルフ)は、人口、経済力で国内第1位を誇り、ドイツへの外国直接投資の4分の1以上が集中するドイツ経済の中心地。ドイツ屈指のエネルギー産業拠点でもあり全体の3分の1の電力を生産する。同州は内陸で世界最大規模の風力発電機の試験用地があり、太陽光、バイオマス、地熱に力を入れており、再生可能エネルギーの分野に3200社、2万2000人が従事している。日本企業がこの分野で現地の研究機関と協力できる環境は整っていると言えよう。
NRW州は2020年までに二酸化炭素排出量を2005年比で30%削減し、再生可能エネルギーの発電量を2倍にする計画だ。また、ドイツ有数の自動車産業拠点でもあるNRW州のライン・ルール地区が、「e-モビリティー」のモデル地域に指定された。2020年までに25万台のEVの普及を目指し、新たなEV用電池や車両、充電スタンドなどの研究開発を進める。同州はリチウムイオン電池を量産できる企業を中心に誘致する意向だという。










