福岡 伸一 Shin-Ichi Fukuoka
青山学院大学理工学部 化学・生命科学科教授。分子生物学専攻。研究テーマは、狂牛病感染機構、細胞膜タンパク質解析など。著書に『生物と無生物のあいだ』『世界は分けてもわからない』(ともに講談社現代新書)、『動的平衡』(木楽舎)など。
福岡伸一情報ブログ:
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| 島村 |
福岡さんのご著書を読みました。生物の世界に限らず、地球をとりまく自然のすべてが「動的平衡」の概念で表現できるということに感銘を受けました。そこで、思ったんです。人間がつくった経済も、企業も、そして私たちの生業である化学事業も、「動的平衡」の考え方を取り入れなければいけないんじゃないか、と。 |
| 福岡 |
ありがとうございます。「動的平衡」というのは、システムを形成する要素がダイナミックに循環しながら、それでいて全体のバランスがとれている状態を指す言葉です。そのものズバリをタイトルにした本を書いたのですが、先日、書店で鳩山由紀夫総理が“大人買い”をされた中にも、その『動的平衡』が含まれていたそうです。読んでいただけたのか、ちょっと気になりますね。 |
| 島村 |
興味深いお話です。「動的平衡」というのは、福岡さんが見つけた概念なのでしょうか? |
| 福岡 |
いえいえ、動的平衡というのは、科学の世界では昔から使われる言葉です。自然を見ていた人間は、昔から気づいていたことです。私は生物学者なので、主に生物の分野でこの言葉を使っていますけれども、いろいろな方が「動的平衡」のコンセプトをご自分の問題に引き寄せて解釈していただけると、非常に有意義じゃないかなと思っています。 |
| 島村 |
経済や経営にも、「動的平衡」の発想は当てはまる、と思いました。お金が局所的に足りなくなったり、余ったり、そして滞ったり、膨張したりするとバブルや不況が起きるわけですね。 |
| 福岡 |
キーワードは「循環」です。循環が滞ると、さまざまな問題が起こります。例えば、地球上で二酸化炭素の排出量が増えているという話にしても、二酸化炭素そのものが悪いわけではなく、二酸化炭素を構成する炭素と酸素が、二酸化炭素という一形態に滞っているのが問題なんですね。ですから、「低炭素社会」という言い方も首をかしげたくなります。地球上の炭素そのものの量は、昔から今にいたるまで増えも減りもしていません。現代においては、炭素という元素が二酸化炭素のかたちで偏在しているだけなのです。 |
| 島村 |
その偏りは、石油を大量に消費する産業にも責任の一端があります。私たちは、できるだけ二酸化炭素を排出しないように、化学品製造のプロセスを改め続けてきました。 |
| 福岡 |
AGC旭硝子では塩水の電気分解を工場でされていますが、あれはたくさん電力を使いますね。 |
| 島村 |
その通りです。ですから、電力消費については常に省エネルギーに努めています。電気分解に使う電力の一部は、天然ガスでまかなっています。地元千葉で産出される天然ガスを利用しています。石油に比べて二酸化炭素排出量の少ないエネルギー源です。また、製造プロセスでも、電極やイオン交換膜の改良を重ね、省電力を進めてきました。そして生産する商品も、大量生産・大量消費の商品ではなく、長く使っていただけるものへシフトしてきています。 |