海外展開の強化が迫られる日本企業に求められる“グローバルシステム”とは
  • 第1回 製造業の海外展開で求められる “グローバルシステム”の実現
  • 第2回 “グローバルシステム”を成功に導く 経営者とIT部門の役割とは

海外展開の強化が迫られる日本企業に求められる“グローバルシステム”とは

ビジネスのグローバル化が加速するなかで、製造業を中心とした日本企業には、真のグローバル経営の確立が迫られている。 また、IFRS(国際財務報告基準:International Financial Reporting Standards)への対応も重要な経営課題の一つとして挙げられている。これからの日本企業に必要とされる“グローバルシステム”とはどのようなものなのだろうか。またどのようなアプローチが成功への道を切り開くのだろうか。全2回の連載でそのポイントを探る。

第1回 製造業の海外展開で求められる “グローバルシステム”の実現

迅速かつ確実な市場ニーズへ対応する“メイド・イン・マーケット”を実現し、グローバル市場における競争力を強化するため、日本の製造業は海外展開の必要に迫られている。また、新たに海外進出する企業だけでなく、すでに海外へ進出している企業も含めて、システムの見直しが進んでいる。その目的は、グローバル経営を実現するための“グローバルシステム”の構築だ。独立系IT調査会社アイ・ティ・アールでプリンシパル・アナリストを務める浅利浩一氏に話を聞いた。

加速する海外展開をきっかけにシステムの全面見直しが始まる

株式会社アイ・ティ・アール プリンシパル・アナリスト 浅利 浩一 氏 写真

株式会社アイ・ティ・アール
プリンシパル・アナリスト
浅利 浩一

グローバルシステムの動向に詳しく、豊富なコンサルティングの実績を持つ浅利氏。同氏のクライアントでも、システム見直しの動きは多いという。その背景にあるのは、日本の製造業が待ったなしで海外展開の必要に迫られていることと、すでに導入されているERP(Enterprise Resource Planning)などがリプレースの時期を迎えていることだ。「多くの大企業では2000年ごろにERPが導入されていますが、それが入れ替えのタイミングに来ています。また日本企業にも求められるようになるIFRSへの対応も、一つの契機になっています」と浅利氏は分析する。

システム刷新を検討する際の重要なポイントとして浅利氏は、「ここ10年の技術革新の変化を見逃さないことです」と指摘する。「以前は、言語やタイムゾーン、インフラそのもののパフォーマンスに問題もあって、各地でそれぞれシステムを導入するしか選択肢がありませんでした。今はこうした制約はありません。グローバルな設計と運用を考えるうえでは“良い時代”になったと言えます」と浅利氏。仮想化技術の進化もインフラの柔軟性を加速させているという。

将来の統合を睨みつつスピーディーにシステムを導入

海外展開はビジネスそのもののタイミングも重要なだけに、システム側の都合に合わせた展開ができるわけではない。そのため、グローバルなシステム構築をすべて計画的に行うことは難しく、急遽進出した海外拠点に導入したシステムが、グローバルなシステムの中で取り残されてしまっているケースは多いという。

「対応にあたっての考え方は二つあります。ロケーションやリージョンなどの単位でシステムを導入してつなげていく方法と、グローバルな“コアシステム”を作って各拠点の差分を吸収していく方法です」(浅利氏)。ただし、国内で使っているシステムを無条件でコアシステムにしようとすると、プロジェクトは失敗することが多いため、注意が必要だ。「コアシステムは、グローバルに適用することを前提にデザインされているかどうかが重要であり、あとから容易に機能やスコープを拡張できない場合もありますから、その見極めが大事なポイントになりなす」と浅利氏は指摘する。

グローバルなコアシステムが必要になる目処として、浅利氏は3割という数字を挙げる。「中長期的な計画も含めて、海外でのビジネスの割合が売上全体の3割に達するようであれば、コアシステムをデザインして、グローバルに適用していくことをお勧めします。それが結果的にスピーディーな統合を実現することにもつながります」と語る。国内のERPがリプレースのタイミングを迎える今は、グローバルなコアシステムの導入に取り組むチャンスでもある。

ガバナンススタイルに応じた“コアシステム”の選択を

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浅利氏は、グローバルシステムの前提条件を次のように説く。「グローバルにビジネスを展開するうえで重要になるのが、どんな体制で、どこまで現地に任せるのかという組織や体制、つまりガバナンスの問題です。当然、どこまでを国内と同じように進めるかを、標準化すべきかの見極めが必要になりますが、その線引きを決めるのはトップのリーダーシップであり、運営にあたってはプリンシプル、つまり原則を確立して貫く姿勢が求められます。この二つがグローバルシステムに反映されなければなりません」。

実際には、どのように取り組めば良いのだろうか。「スタディのための材料はたくさんある」と浅利氏は指摘する。「グローバルシステムやガバナンスのスタイルには一定のモデルがあります。それを学んだうえで、自社の文化と照らし合わせて設計を進めていきますが、必ずあちら立てればこちら立たずのトレードオフに遭遇しますので、取捨選択を適切に行いながら、どんなシステムを導入するのかを決めていくことになります」と語る。

ERPパッケージにも、単一システムですべて実現する指向の強いもの、データベースを共通化しようとするもの、システムごとの連動を前提とするものなどのタイプがある。「どれが自社のグローバルなコアシステムとして最適なのか、先入観を捨て検討すべきでしょう」と浅利氏。自社のガバナンススタイルを決めることで、それにふさわしいERPの姿も見えてくるはずだ。