

今回のセミナーでは、「会計基準面での留意事項」として、トーマツの各専門家から「会計基準差異分析と会計処理の統一」「アカウンティング・ポリシー・マニュアルの作成上のポイント」「IFRS導入に伴う決算日(報告日)統一実現のポイント」の3点が紹介された。まず、企業は従来の会計基準とIFRSの差異を把握し、その影響を明確にして、グループ企業内で統一された会計方針を立案・実施する必要がある。この点について、「会計基準差異分析」として説明があった。「企業規模や業務の複雑性によっては、そうした差異が数百に上ることもありますが、ここでのポイントは、“重要な差異”にフォーカスすることです」と言及する。「時間的なスピードやコストを優先する」、あるいは「担当者のナレッジや経験値向上を目指す」など、各企業の戦略的なスタンスに応じて重要項目を抽出するのが有効なアプローチとなる。
「最初にそうした方向性を明らかにすれば、その作業が必要な理由とリソースなども含めて、適切なプロジェクトの形が見えてくるはずです」と説明する。
さらに、その後のグループ企業内での会計方針の統一に際しては、「アカウンティング・ポリシー・マニュアル」(会計方針書)の作成が重要な前提となる。IFRSは原則主義を採用しており、ガイダンスといえるものが数多くは存在しない。そのため、各企業はグループで遵守すべき会計方針を明示し、正しい理解を促すことが肝要だ。「このとき重要なのは、『原則編』『実践編』と分け、それぞれにフローチャートやイメージ図、チェックリストなどを加えたり、取引事例を挙げるなど、可能な限り分かりやすい表現を心がけることです」と述べる。加えて、ビジネスの拡大や環境変化に合わせ常に改訂を行い、進化させていけるよう、その体系を考慮することも重要だという。
また、IFRS導入企業では実務上不可能でない限り、親会社、子会社・関連会社の決算日(報告日)の統一が求められている点にも注意が必要だ。仮に決算日(報告日)の相違がある場合には、その統一に関する計画を早期に策定・実行すべきである。
これについては「先行企業の例を見ると、初期段階で、決算日(報告日)統一に関するタスクを1.5〜3年程度のスパンで組み込んで実施するケースが見られます」と述べる。
そのほか、IFRSは一般に「ムービング・ターゲット」と言われるように、継続的に実施されているIASB(国際会計基準審議会)による基準改訂への対応が求められる。だが、最終確定後に準備を進めるアプローチでは、プロジェクト遅延のリスクは避けられない。そこで、最新動向を常に意識しながら、順次対応を進めていくことが重要なポイントとなる。
一方、「連結経営、連結会計システム面での留意事項」として、「業務システム面でのIFRS対応」「IFRSに対応するための経理組織のあり方」「IFRS対応における内部統制上の留意点」についても、トーマツの各専門家から解説があった。ここでは、経営者の意識の持ち方が強調された。「というのも、経営者の意識で、アプローチの仕方が、ふたつに大別されるからです」と述べる。ひとつは、IFRS導入後の影響範囲をできるだけ限定的に捉え、現在の業務・システムを活かすことを前提とし、プロジェクトを進めるという「改善型アプローチ」。これに対し、IFRS導入を経営改革のチャンスとして捉え、業務・システムの標準化、統一化を進め、経営効率の向上を目指す「標準化型アプローチ」だ。


「先行企業は、総じて自社の抱えている課題を十分に見直し、その対応範囲を吟味することで、IFRS対応のアプローチを選んでいます」と語る。
特に「標準化型アプローチ」を採用しようとする企業で、今、取り組まれているのがシェアード・サービス・センター(SSC)の構築である。「SSCの構築により、グループ内の経理業務を集約することで、業務効率性が向上し、業務品質を担保できるというメリットがあります。さらに、IFRS導入により、グループガバナンスの強化や、人材の確保・育成といった局面でも大きなメリットが得られるはずです」と説明する。具体的には、IFRSに則った会計処理のルールや勘定科目などを統一化し、徹底を図ることが容易になるほか、制度変更が及ぼす影響範囲も把握でき、対処に必要な作業負荷も軽減される。また、業務の一貫性と透明性が確保できるといった点もメリットとして挙げられている。


そのほかの留意事項として、J-SOXに対応した内部統制に関わる問題である。というのは、IFRS対応を親会社で行うにせよ、子会社で行うにせよ、決算・財務報告プロセスの変更が必ず発生するからだ。「そうした変更は、決算処理のミスなど内部統制上の『重要な欠陥』を発生させるリスクを内包していることを、経営者は十分に意識する必要があるでしょう」と示唆する。また、現在は全社的な内部統制について、売上高の95%が評価範囲とされ、業務プロセスについては、売上高の3分の2が評価範囲とされているが、これがIFRS対応によって収益の表示が総額から純額に変更されると、売上高の構成割合が変わり、これまで全社的な内部統制の対象とされていなかった子会社などが対象に含まれるケースも出てくる。「特にこうしたことに気付かない企業が意外に多いので、早々に売上高の変化を把握・分析し、対処していく必要があります」と強調する。
このように、IFRSを適用するためには、業務プロセスやシステム面等、広範囲にわたる様々な留意点が存在する。これに対処するための重要なポイントは、トップマネジメントがリードしてプロジェクトを推進すること。「IFRSの適用は、企業の長年の業務・システム面での課題を改善する好機」として捉え、グループ企業も巻き込んだ取り組みを行うことが、IFRS対応の成功のカギと言えよう。
有限責任監査法人 トーマツ IFRSサービスセンター
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